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再生の儀式

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「俺抜きで、勝手に話を進めるな」
 声に反応してレイが振り向けば、狂気を全開にさせたシラサカがこちらに向かってきた。右手に拳銃を握りしめ、ヒップホルスターにもう一丁の拳銃をぶら下げている。左足を引きずるようにして歩いているのが気になって見てみれば、左大腿部にナイフが突き刺さったままだった。
「シラサカ、おまえ!?」
「誰かさんに睡眠薬を打たれてな。こうでもしなきゃ、目を開けてられねえんだよ」
 近くで見てみれば、シラサカは息が上がって、苦しそうだった。
「俺ひとりだったら、今も眠ったままだった。マキが先生を連れて来てくれて、無理矢理起こしてもらったのさ」
 診療所にいたはずのマキが、松田と共にここに来ている。本来なら咎められる行動だが、今回は吉と出たようだ。
「ダメだよ、K、こんなに早く目を覚ましたら、体がおかしくなるよ!?」
 Zは駆け寄り、シラサカの体を支えようとしたが、その手を振り払った。
「俺を眠らせて、その隙にボスを殺すつもりだったんだろ。十五年前、アカネを殺したように!」
 シラサカはコールだけを見つめ、憎悪をむき出しにしていた。こんなに怒りを露わにするシラサカを見たのは初めてで、レイは不安になった。
「そうだ、その目だ。おまえはそうでなくてはならない」
 シラサカの姿を見て、コールは嬉しげに笑った。
「グスタフの息子、エーデルシュタインのK。おまえはこんなところにいる人間じゃない。これからはKX-9、俺達が世界を牛耳るんだ」
「そんなものに興味はねえ。それにKの名は捨てた。俺はシラサカという名で、ハナムラの人間だ。おまえだって、Xではなくコールという名前だろうが!」
「コールは通り名だ。俺がコールでなくなれば、新しいコールが出来るだけ」
 そう言うと、コールはレイを見やる。
「説明したよね、レイ。コールは世界中の暗殺者に仕事と情報を提供する仲介者。これからもコールは永遠に存在し続ける。君を新しいコールに指名してあげるよ」
 コールがレイを生かそうとするのは、自分の役割を任せるためだったようだ。
「興味ねえな」
「俺の代わりをこなせるのは、君しかいないんだよ。でなければ、生かす必要はない」
 全て言い終わらないうちにコールが引き金を弾いた。弾丸はレイの右肩を貫いた。
「レイ!?」
 衝撃と痛みで倒れそうになった体を花村に支えられる。その状態のまま、レイはコールを睨みつけた。
「考え直すなら今だよ。俺は君を気に入っているんだ。これ以上失望させないでくれ」
「俺の名前はレイ、それ以外の名前を、名乗るつもりはねえよ」
 レイが自ら頭脳を差し出した相手は、ここにいる花村だけ。どんな世界であろうとも、マキと共に生きると決めたのだから。
「そう、だったら仕方ないね」
 痛みと出血でレイの頭は朦朧としてきた。コールが笑いながら銃口を向けてきたが、その姿もどんどんぼやけていく。
「さようなら、レイ」

 こんなところで終わりか。まあ、いいや。後のことは頼んだぜ、シラサカ。

 撃たれたのか、そうでないのか、確認するまでもなく、レイの意識はぷつりと途絶えた。
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