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同居開始

パーティ【side:碧】(後半、雪都side)

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「よお、元気にしてたかー?」

 会場につくなりリーダーである佐伯さえき 朝日あさひさんが俺に近づいてきて、いつものように抱きつかれた。朝日さんに冷ややかな視線を向けて、引き離す。
 いつも、朝日さんは他人との距離が近い。

「えーつれないなぁ、碧くんは」
「朝日さんに構っている暇はないんで」
「ちぇ、つまんないの。あ、そういえば新しく出来たっていう弟さんとは上手くやってるの? そんな怖い顔をしていたら嫌われるよー?」
「雪都くんといる時には常に優しくしているので心配して頂かなくても大丈夫です」
「え、優しく⁉︎ 普段はクールなお前からは考えられないわ」

 朝日さんの言うとおり、普段の俺は王子様キャラなんかじゃない。事務所から「お前の見た目は王子様っぽいから、その路線でいけ」と言われてキャラ作りをしているだけだ。
 
「じゃあ、俺らにも優しくしてくれよー?」
「俺は大切な人にしか優しくしないんで」
 
 俺がきっぱりと言い放つと、「ふうん?」と朝日さんが意味ありげに笑った。
「なんですか、その笑みは」と不機嫌を隠すことなく鋭く言うけれど、「なんでもー?」とはぐらかされてしまった。

 ああ、なんで俺こんなところにいるんだろう。本当は雪都くんと一日過ごすはずだったのに。

「ごめんな、碧。伝える日程を間違えていたみたいで」

 気がついたら俺たちの近くにマネージャーの結城ゆうきあゆむさんが居て、俺に向って謝罪の言葉を口にした。

「なんで今日なんですか、本当。挨拶回りが終わったら帰っていいですか」
「そんなこと言うなよ、碧。確かに伝える日程を間違えていた俺がこんなことを言う資格はないが、これも仕事の一環だぞ」

 歩さんが伝える日程を間違えていたのが悪いのに、なぜか叱られてしまった。
 心の中で舌打ちをしつつ、普段仕事中と雪都くんに対してしか使わない表情筋を駆使して笑みを作る。
 あー、早く雪都くんに会いたい。そんなことを考えながら、挨拶回りに向かうのだった。

♦︎side:雪都♦︎

(まだかなぁ……)

 先ほど出て行ったばかりだというのに、碧さんがいつ帰ってくるのかが気になって仕方がない。
 今はグループのメンバーに会っているのかな。
 ぼんやりとしていると色々なことを考えてしまう。気分転換にテレビをつけてみたら、ちょうど『Shiny Boys』の特集を放映していた。画面の中では、碧さんが食レポをしている。
 今さっきまでは近くにいたのに、物凄く遠くに感じる。
 ……寂しいな。
 母さんたちはリビング楽しげに会話しているから、邪魔するわけにはいかない。ひとりぼっちになった気分だ。
 何気なく、スマホの方に視線を向ける。
(そういえば碧さんと連絡先を交換していなかったな……)

 連絡先どころか僕は碧さんのことを何も知らない。情報源は、メディアで語られたもののみだ。
 
 気持ちが沈んでいくのを感じた。こういう時は外出して発散するんだけれども、外に出るわけにはいかない。

 ベッドにダイブして、寝転がってみる。そうしているうちに気がついたら、僕は眠りについてしまっていた。
 
 
 
 


 
 
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