54 / 62
第10話『最後の選択』
(3)
しおりを挟む
「ねえ、どういう事!?あんなの…いつものリョウくんじゃないわっ!!」
亜矢は声を振り絞り、叫ぶ。
「あんた、今までリョウの羽根を見た事がねえのに、なんで奴を天使だと思い込んでいた?」
グリアから突然に切り出されたその質問。
亜矢は動揺しつつも、今までを思い返す。
「そ、それは……何となく、そうなんだと……リョウくんの言葉を信じてたから」
「それが、天使の特性なんだよ。人を無条件に信用させる、やっかいな力だ。ずっと惑わされてんだよ、てめえはリョウに」
亜矢は目の前の現実に、息が止まりそうになった。
震えが止まらない。
「どうして、どうしてこんな事に……?」
今まで亜矢に、笑顔ばかり向けてきたリョウ。
優しくて、でも強い意志を持ってて。いつでも心強い味方だった。
彼を、本気で信じていた。
『話してやるがいい、リョウ』
3人が立つこの空間に、どこからかもう1つの声が響いてくる。
その声は、グリアにも亜矢にも認識できた。
「え?なに……この声?」
亜矢が呟くと、隣のグリアが構え、声を低くして言う。
「出やがったな、天王…!!」
姿こそ見えないが、憎悪をこめてグリアはその名を吐き出す。
その中でリョウは1人、一切の感情を表さずに、ただ静かに口を開く。
「ボクの使命は、『魂の器』を完成まで導き、その魂を手に入れる事」
そこまでの言葉で、亜矢は思わず言葉を挟んだ。
「それって……それって、最初から、死神も…あたしも……見殺しにするつもりだったって………事……?」
自分で言ってて辛い。
今の亜矢には、真実をそのまま口に出すだけで精一杯だった。
理解するなんて、受け入れるなんて無理だった。
「そういう事らしいぜ。少なくとも、天界の王は、な」
グリアが、『天界』という言葉に憎しみをこめて言う。
死ぬ予定でない人間の魂を狩る、という重罪を犯す死神が増えていく中で、天界に納めるべき魂の数が著しく減少してきている。
そこで、天界は魂の数の調整を行う事にしたのだ。
『魂の器』によって膨大な力を宿した亜矢の魂には、普通の人間の魂の何百倍に相当する価値がある。
それを手に入れ、調整を図ろうとした。
それによってさらに、『魂の器』の儀式を行える程の力を持つ死神グリアを消滅させる事が出来るのなら、天界にとってこんなに都合がいい事はない。
強大な力を身に付けた死神グリアは、今では天界にとって脅威なのだ。
『お前ほどの死神だ、こちらも優秀な天使で迎え撃つしかあるまい?』
あざ笑うかのように、天王の声のみが空間に響く。
「そんなの、どうでもいいわ。リョウくん、言ったじゃない…!死神とあたしを絶対に救うって!あの日に……言ってくれたじゃない……」
亜矢の目に、涙が溢れる。
グリアは初めて知って驚いた。リョウのヤツがそんな事を言ったのか、と。
「無駄だぜ。あいつは今、完全に心を支配されてやがる。……やっかいな呪縛をかけられたな、あのバカが」
冷たい言い回しだが、グリアもどこか辛そうだった。
グリアと出会った事により、リョウは天界への反抗心を膨らませ、天界に背き、天界の王から処罰とも言える呪縛を受けた。
その結果が、目の前にいるリョウの姿。
「リョウ……。てめえ程のヤツが、天界の下僕に成り下がるとはな……!!」
グリアが小さく漏らした言葉。
この言葉で初めて、グリアはリョウを認めていたという事が分かる。
あれだけグリアが毛嫌いしていた天界の者でも、リョウは別だったのだ。
亜矢は声を振り絞り、叫ぶ。
「あんた、今までリョウの羽根を見た事がねえのに、なんで奴を天使だと思い込んでいた?」
グリアから突然に切り出されたその質問。
亜矢は動揺しつつも、今までを思い返す。
「そ、それは……何となく、そうなんだと……リョウくんの言葉を信じてたから」
「それが、天使の特性なんだよ。人を無条件に信用させる、やっかいな力だ。ずっと惑わされてんだよ、てめえはリョウに」
亜矢は目の前の現実に、息が止まりそうになった。
震えが止まらない。
「どうして、どうしてこんな事に……?」
今まで亜矢に、笑顔ばかり向けてきたリョウ。
優しくて、でも強い意志を持ってて。いつでも心強い味方だった。
彼を、本気で信じていた。
『話してやるがいい、リョウ』
3人が立つこの空間に、どこからかもう1つの声が響いてくる。
その声は、グリアにも亜矢にも認識できた。
「え?なに……この声?」
亜矢が呟くと、隣のグリアが構え、声を低くして言う。
「出やがったな、天王…!!」
姿こそ見えないが、憎悪をこめてグリアはその名を吐き出す。
その中でリョウは1人、一切の感情を表さずに、ただ静かに口を開く。
「ボクの使命は、『魂の器』を完成まで導き、その魂を手に入れる事」
そこまでの言葉で、亜矢は思わず言葉を挟んだ。
「それって……それって、最初から、死神も…あたしも……見殺しにするつもりだったって………事……?」
自分で言ってて辛い。
今の亜矢には、真実をそのまま口に出すだけで精一杯だった。
理解するなんて、受け入れるなんて無理だった。
「そういう事らしいぜ。少なくとも、天界の王は、な」
グリアが、『天界』という言葉に憎しみをこめて言う。
死ぬ予定でない人間の魂を狩る、という重罪を犯す死神が増えていく中で、天界に納めるべき魂の数が著しく減少してきている。
そこで、天界は魂の数の調整を行う事にしたのだ。
『魂の器』によって膨大な力を宿した亜矢の魂には、普通の人間の魂の何百倍に相当する価値がある。
それを手に入れ、調整を図ろうとした。
それによってさらに、『魂の器』の儀式を行える程の力を持つ死神グリアを消滅させる事が出来るのなら、天界にとってこんなに都合がいい事はない。
強大な力を身に付けた死神グリアは、今では天界にとって脅威なのだ。
『お前ほどの死神だ、こちらも優秀な天使で迎え撃つしかあるまい?』
あざ笑うかのように、天王の声のみが空間に響く。
「そんなの、どうでもいいわ。リョウくん、言ったじゃない…!死神とあたしを絶対に救うって!あの日に……言ってくれたじゃない……」
亜矢の目に、涙が溢れる。
グリアは初めて知って驚いた。リョウのヤツがそんな事を言ったのか、と。
「無駄だぜ。あいつは今、完全に心を支配されてやがる。……やっかいな呪縛をかけられたな、あのバカが」
冷たい言い回しだが、グリアもどこか辛そうだった。
グリアと出会った事により、リョウは天界への反抗心を膨らませ、天界に背き、天界の王から処罰とも言える呪縛を受けた。
その結果が、目の前にいるリョウの姿。
「リョウ……。てめえ程のヤツが、天界の下僕に成り下がるとはな……!!」
グリアが小さく漏らした言葉。
この言葉で初めて、グリアはリョウを認めていたという事が分かる。
あれだけグリアが毛嫌いしていた天界の者でも、リョウは別だったのだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
桜ヶ丘中学校恋愛研究部
夏目知佳
児童書・童話
御手洗夏帆、14才。
桜ヶ丘中学校に転入ほやほや5日目。
早く友達を作ろうと意気込む私の前に、その先輩達は現れたー……。
★
恋に悩める子羊たちを救う部活って何?
しかも私が3人目の部員!?
私の中学生活、どうなっちゃうの……。
新しい青春群像劇、ここに開幕!!
時間泥棒【完結】
虹乃ノラン
児童書・童話
平和な僕らの町で、ある日、イエローバスが衝突するという事故が起こった。ライオン公園で撮った覚えのない五人の写真を見つけた千斗たちは、意味ありげに逃げる白猫を追いかけて商店街まで行くと、不思議な空間に迷いこんでしまう。
■目次
第一章 動かない猫
第二章 ライオン公園のタイムカプセル
第三章 魚海町シーサイド商店街
第四章 黒野時計堂
第五章 短針マシュマロと消えた写真
第六章 スカーフェイスを追って
第七章 天川の行方不明事件
第八章 作戦開始!サイレンを挟み撃て!
第九章 『5…4…3…2…1…‼』
第十章 不法の器の代償
第十一章 ミチルのフラッシュ
第十二章 五人の写真
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる