122 / 128
第42話『その後、魔王とアヤメと……』
(1)
しおりを挟む
魔王とアヤメの娘、『アイリ』が生まれてからの、魔王一家の暮らしとは。
魔王とアヤメは、亜矢と同じマンションの1階の部屋に住んでいる。
そこにベビーベッドを置いて、今日もアヤメはアイリに付きっ切りだ。
そんなアヤメの背後から、魔王が近付いて抱きしめる。
「あっ…オラン?」
「アヤメ、オレ様の飯はどうした?」
「ちょっと待ってね。よしよしアイリ、お腹いっぱい?ねんねしようね~」
「……アヤメ、オレ様は腹減ったぞ。おい、アヤメ」
時刻はもう夜。夕飯の時間だ。
いくら愛娘の育児でも、アヤメに後回しにされて拗ねる魔王。
背後から強く抱きしめて耳元で訴える魔王に、ようやくアヤメは顔を合わせた。
「もう…オラン。大人なんだから、もう少し我慢しないと『めっ!』よ」
「なら、飯の前に『大人らしい事』をするか?」
「え、だ、だめ、アイリが寝てから……」
「見てねぇだろ」
魔王の辞書に『我慢』の文字はない。
少し強引にアヤメの腰を引き寄せると、頬を赤くしたアヤメを視線でも捉える。
簡単に引き寄せられたアヤメは、まんざらでもない。
「愛してるぜ、アヤメ」
「オラン、好き……」
とろけそうなほどに熱く視線を重ねて見つめ合った後、二人は唇を重ねようとしたが……
ビュンッ!!
何かが魔王めがけて、一直線に飛んできた。
ボフッ!!
「ぐおっ……!?」
それは魔王の横顔に直撃して横によろめき、キスは不発に終わった。
弾丸のように飛んできたのは、ソファに置いてあったクッションだ。
しかし、ソファには誰も座っていない。
この部屋にいるのは、魔王とアヤメとアイリの3人だけだ。
魔王とアヤメは、すぐにそれが誰の仕業であるか気付いた。
二人同時に、ベビーベッドに視線を向ける。
するとそこには、二人の方を見て手足をバタバタさせている愛娘、アイリの姿。
「アイリ、また邪魔しやがって……」
まだ赤子のアイリが、魔法でクッションを飛ばしたのだ。
強大な魔力を持つアイリは、無意識に魔法を発動してしまう。
アイリは、魔王の魔力を完璧に受け継いで生まれた。
生まれながらに弱い魔力しか持たない、兄のコランとは対照的だ。
アヤメはベビーベッドに近寄って話しかける。
「アイリ、よしよし。パパが強引で、驚いちゃったよね~?」
「……オイ」
なぜか悪者にされてしまった魔王であった。
その時。
バタンッ!!
今度は、クローゼットの扉が音を立てて勝手に開いた。
魔王とアヤメは、亜矢と同じマンションの1階の部屋に住んでいる。
そこにベビーベッドを置いて、今日もアヤメはアイリに付きっ切りだ。
そんなアヤメの背後から、魔王が近付いて抱きしめる。
「あっ…オラン?」
「アヤメ、オレ様の飯はどうした?」
「ちょっと待ってね。よしよしアイリ、お腹いっぱい?ねんねしようね~」
「……アヤメ、オレ様は腹減ったぞ。おい、アヤメ」
時刻はもう夜。夕飯の時間だ。
いくら愛娘の育児でも、アヤメに後回しにされて拗ねる魔王。
背後から強く抱きしめて耳元で訴える魔王に、ようやくアヤメは顔を合わせた。
「もう…オラン。大人なんだから、もう少し我慢しないと『めっ!』よ」
「なら、飯の前に『大人らしい事』をするか?」
「え、だ、だめ、アイリが寝てから……」
「見てねぇだろ」
魔王の辞書に『我慢』の文字はない。
少し強引にアヤメの腰を引き寄せると、頬を赤くしたアヤメを視線でも捉える。
簡単に引き寄せられたアヤメは、まんざらでもない。
「愛してるぜ、アヤメ」
「オラン、好き……」
とろけそうなほどに熱く視線を重ねて見つめ合った後、二人は唇を重ねようとしたが……
ビュンッ!!
何かが魔王めがけて、一直線に飛んできた。
ボフッ!!
「ぐおっ……!?」
それは魔王の横顔に直撃して横によろめき、キスは不発に終わった。
弾丸のように飛んできたのは、ソファに置いてあったクッションだ。
しかし、ソファには誰も座っていない。
この部屋にいるのは、魔王とアヤメとアイリの3人だけだ。
魔王とアヤメは、すぐにそれが誰の仕業であるか気付いた。
二人同時に、ベビーベッドに視線を向ける。
するとそこには、二人の方を見て手足をバタバタさせている愛娘、アイリの姿。
「アイリ、また邪魔しやがって……」
まだ赤子のアイリが、魔法でクッションを飛ばしたのだ。
強大な魔力を持つアイリは、無意識に魔法を発動してしまう。
アイリは、魔王の魔力を完璧に受け継いで生まれた。
生まれながらに弱い魔力しか持たない、兄のコランとは対照的だ。
アヤメはベビーベッドに近寄って話しかける。
「アイリ、よしよし。パパが強引で、驚いちゃったよね~?」
「……オイ」
なぜか悪者にされてしまった魔王であった。
その時。
バタンッ!!
今度は、クローゼットの扉が音を立てて勝手に開いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
バスは秘密の恋を乗せる
桐山なつめ
児童書・童話
ある事情から、有名な私立中学校に転校してきた菜月。
通学バスでいつも一緒になる美形な男の子・神山くんと急接近するけど、
彼には人に言えない、過去があって……。
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも投稿しています。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
さよならトイトイ~魔法のおもちゃ屋さん~
sohko3
児童書・童話
魔法都市フィラディノートには世界一の大賢者、ミモリ・クリングルが住んでいる。彼女は慈善活動として年に二回、世界中の子供達におもちゃを配っている。ミモリの弟子のひとりである女性、ティッサは子供達に贈る「魔法で自由に動くおもちゃ」を作る魔法使いであり、自身もおもちゃを販売する店を経営する。しかし、クリスマスに無償で配られるおもちゃは子供達に喜ばれても、お店のおもちゃはなかなか思うように売れてくれない。
「トイトイ」はティッサの作ったおもちゃの中で最高傑作であり、人生を共にする親友でもある。時に悩むティッサを見守って、支え続けている。
創作に悩む作者へ、作品の方から愛と感謝を伝えます。「あなたが作ってくれたぼくは、この世界で最高の作品なんだ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる