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第11話『魂の輪廻』
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衝撃的な真実を告げられているのに、亜矢の思考はそれから逃げるように、別の方向に流れていく。
確かに、魔王とコランは兄弟にしては容姿が似すぎているし、歳も離れすぎている。
こんなに混乱している思考の中でも、それだけは納得してしまう。
「なら…なんで、弟って偽ってたの…?」
違う。自分が本当に聞きたいのは、その事ではないのに。
意識と体が分離してしまったような感覚だった。
「王位を継がせねえ為だ。あいつは、人間の血を多く受け継いで産まれてきた。悪魔として完全な魔力を持たねえアイツが将来、魔王になるには酷だ」
その答えも、納得できるものだった。確かに、親としての優しさが感じ取れる。
「アヤメ…さんは、なんで死んでしまったの?」
亜矢の口から出るのは、自分が答えを望んでもいない質問ばかり。
これも違う。こんな事を聞かなくたって、考えれば分かる事なのに。
「寿命だ。魔法で姿だけは一生変わらねえ少女のままだったが、寿命は変えられねえ。百年足らずで死んじまったよ」
そう言う魔王のどこか悲痛な面持ちを見て、そんな事を答えさせてしまった亜矢も、心が締め付けられるようだった。
「だが、オレはアヤメの亡骸に『禁忌の儀式』を行った。それは365年後に、アヤメの魂を転生させる『魂の輪廻』の儀式だ」
禁忌の儀式。それは、
グリアが365日かけて亜矢の命を蘇らせた
『魂の器』
天王が365日かけてリョウの心を支配した
『魂の呪縛』
そして、魔王が行った、禁忌の儀式。
それは……
365年後に、アヤメの魂を現世に転生させる
『魂の輪廻』
しかし、禁忌の儀式には、必ず代償を伴う。
その真実は、今ここで魔王の口からは明かされなかった。
「いいか。オレが今から言う事、これが最後の真実だ」
前置きをする魔王に、亜矢は何も言えず、ただ魔王の瞳を見つめていた。
いや………言わないで欲しい。
それを聞いてしまったら………
「亜矢。お前は、アヤメの死から365年後に転生した、アヤメの生まれ変わりだ」
「いや……」
朦朧とし始めた亜矢の思考の中で、口から出されるのは否定とも拒否とも捉えられる言葉のみ。
「ちがう……あたしは……」
自分の前世が魔王の妃で、前世の自分と魔王の間に産まれた息子がコランだなんて……
今、ここで全てを受け止められるはずがない。
「……あたしは……亜矢よ………」
仮に、魔王の明かした『真実』が、全て本当の事であったとしても……
前世での愛情を自分に向けられても困る。自分には前世の記憶なんて無いのだから。
そんな亜矢の戸惑いを見抜いていたのだろう。
魔王は亜矢の身体を優しく包むように抱きしめた。………魔界のパーティーに招待された、あの時のように。
「ああ、分かっている。オレはアヤメを愛した。そして今は亜矢を愛している」
魔王が注ぐのは、アヤメに対しての愛情だけではない。二人分の愛情なのだ。
魔王が亜矢に自然と惹かれたのも。コランが亜矢の元へと召喚されたのも。
そして亜矢が、当たり前のように母性とも言える愛情をコランに注いでいたのも。
全てが、輪廻という運命に導かれたものだった。
だが、例え亜矢がアヤメの生まれ変わりでなくとも、魔王は亜矢に惹かれ、愛しただろう。
愛という言葉、そして魔王の何百年という深い愛情が亜矢に向けられた時。
亜矢の瞳から、無意識に涙が溢れ出てきた。
嬉しいのか?戸惑いなのか?それは自分でも解らなかった。
「アヤメの記憶は、あんたの魂の奥深くに眠っている。……これから『覚醒の儀式』を行う」
「覚醒の…儀式?」
「『魂の輪廻』は、それによって完成される。……嫌ならやめるぜ?」
最後の最後まで、亜矢に選択権を与える。
力ずくで奪う事なんて、前々から…今この場でも簡単なはずなのに。
外見に似合わず、魔王は本当に優しい人だと、亜矢は霞んで行く意識の中で思う。
これは、魔力なのだろうか。
魔王の深紅の瞳にただ見つめられるだけで、拒絶の心すら起こらない。
「信じろ。例え『儀式』だろうが『契約』だろうが……オレは本気だ」
彼の瞳が今、こんなにも近くにある。
まるで心を縛られたように、決して目を逸らす事が出来ない。
心が……潜在意識よりも深い魂の奥底で、確かに彼を求めているのを感じた。
「愛している、亜矢」
返事の代わりに、導かれるまま……彼に全てを委ねるようして、亜矢はただ静かに目を閉じた。
魂の奥深くに眠る、前世の記憶の覚醒。
それは『口付け』という名の最後の鍵によって開かれ、解放される。
『魂の輪廻』の儀式は、今ここに完成を迎えた。
確かに、魔王とコランは兄弟にしては容姿が似すぎているし、歳も離れすぎている。
こんなに混乱している思考の中でも、それだけは納得してしまう。
「なら…なんで、弟って偽ってたの…?」
違う。自分が本当に聞きたいのは、その事ではないのに。
意識と体が分離してしまったような感覚だった。
「王位を継がせねえ為だ。あいつは、人間の血を多く受け継いで産まれてきた。悪魔として完全な魔力を持たねえアイツが将来、魔王になるには酷だ」
その答えも、納得できるものだった。確かに、親としての優しさが感じ取れる。
「アヤメ…さんは、なんで死んでしまったの?」
亜矢の口から出るのは、自分が答えを望んでもいない質問ばかり。
これも違う。こんな事を聞かなくたって、考えれば分かる事なのに。
「寿命だ。魔法で姿だけは一生変わらねえ少女のままだったが、寿命は変えられねえ。百年足らずで死んじまったよ」
そう言う魔王のどこか悲痛な面持ちを見て、そんな事を答えさせてしまった亜矢も、心が締め付けられるようだった。
「だが、オレはアヤメの亡骸に『禁忌の儀式』を行った。それは365年後に、アヤメの魂を転生させる『魂の輪廻』の儀式だ」
禁忌の儀式。それは、
グリアが365日かけて亜矢の命を蘇らせた
『魂の器』
天王が365日かけてリョウの心を支配した
『魂の呪縛』
そして、魔王が行った、禁忌の儀式。
それは……
365年後に、アヤメの魂を現世に転生させる
『魂の輪廻』
しかし、禁忌の儀式には、必ず代償を伴う。
その真実は、今ここで魔王の口からは明かされなかった。
「いいか。オレが今から言う事、これが最後の真実だ」
前置きをする魔王に、亜矢は何も言えず、ただ魔王の瞳を見つめていた。
いや………言わないで欲しい。
それを聞いてしまったら………
「亜矢。お前は、アヤメの死から365年後に転生した、アヤメの生まれ変わりだ」
「いや……」
朦朧とし始めた亜矢の思考の中で、口から出されるのは否定とも拒否とも捉えられる言葉のみ。
「ちがう……あたしは……」
自分の前世が魔王の妃で、前世の自分と魔王の間に産まれた息子がコランだなんて……
今、ここで全てを受け止められるはずがない。
「……あたしは……亜矢よ………」
仮に、魔王の明かした『真実』が、全て本当の事であったとしても……
前世での愛情を自分に向けられても困る。自分には前世の記憶なんて無いのだから。
そんな亜矢の戸惑いを見抜いていたのだろう。
魔王は亜矢の身体を優しく包むように抱きしめた。………魔界のパーティーに招待された、あの時のように。
「ああ、分かっている。オレはアヤメを愛した。そして今は亜矢を愛している」
魔王が注ぐのは、アヤメに対しての愛情だけではない。二人分の愛情なのだ。
魔王が亜矢に自然と惹かれたのも。コランが亜矢の元へと召喚されたのも。
そして亜矢が、当たり前のように母性とも言える愛情をコランに注いでいたのも。
全てが、輪廻という運命に導かれたものだった。
だが、例え亜矢がアヤメの生まれ変わりでなくとも、魔王は亜矢に惹かれ、愛しただろう。
愛という言葉、そして魔王の何百年という深い愛情が亜矢に向けられた時。
亜矢の瞳から、無意識に涙が溢れ出てきた。
嬉しいのか?戸惑いなのか?それは自分でも解らなかった。
「アヤメの記憶は、あんたの魂の奥深くに眠っている。……これから『覚醒の儀式』を行う」
「覚醒の…儀式?」
「『魂の輪廻』は、それによって完成される。……嫌ならやめるぜ?」
最後の最後まで、亜矢に選択権を与える。
力ずくで奪う事なんて、前々から…今この場でも簡単なはずなのに。
外見に似合わず、魔王は本当に優しい人だと、亜矢は霞んで行く意識の中で思う。
これは、魔力なのだろうか。
魔王の深紅の瞳にただ見つめられるだけで、拒絶の心すら起こらない。
「信じろ。例え『儀式』だろうが『契約』だろうが……オレは本気だ」
彼の瞳が今、こんなにも近くにある。
まるで心を縛られたように、決して目を逸らす事が出来ない。
心が……潜在意識よりも深い魂の奥底で、確かに彼を求めているのを感じた。
「愛している、亜矢」
返事の代わりに、導かれるまま……彼に全てを委ねるようして、亜矢はただ静かに目を閉じた。
魂の奥深くに眠る、前世の記憶の覚醒。
それは『口付け』という名の最後の鍵によって開かれ、解放される。
『魂の輪廻』の儀式は、今ここに完成を迎えた。
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