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エピローグ
力也
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力也は全てを見ていた。
自分は隕石を受け止めることに成功したのだ。
そう、まさに『受け止めた』のである。
体に与えられた衝撃は凄まじい。しかし、それも筋肉痛ほどの痛みでおさまっている。
あれだけの力を受けながら怪我の一つもしていない。これが奇跡以外の何と捉える。
更に凄いのが、このバランスボール。破壊もされないどころか傷すらない。
(どうなってるんだ…。あれだけの強い威力を受けてて何もないなんて。このバランスボール、何か変だぞ…。)
確かに。そこに賭けていた。
しかし間近で隕石を見た時に、絶対に無理だと直感した。
それは今までに見たこともない脅威。この先も知ることのないであろう、絶対的な不可能の領域だったはずだ。それが、自分の命はおろか。受け止めたそのもの自体が無事?あり得ない。
要するに、説明できないものが。これまた説明できないもので相殺されたという事実。
何にせよ隕石の力の吸収には成功したのである。このバランスボールが何なのか。それはまず置いておかなくては。
力也は目を凝らす。まだ気を抜いてはならない。
もう一つの希望的観察。
これこそ予想も出来ずに見守る事しか出来ないが。それが切り抜けられてこそ、やっと本当の『成功』となる。
(俺はまだ、なし遂げてない。まだヒーローなんかじゃない。隕石は消えた訳じゃないんだ。)
そう。バランスボールは確かに隕石を受け止めた。その力の全てを吸収したのだ。
しかし、隕石本体は残っている。それはバランスボールによって跳ね返されていた。
スピードもパワーも失った隕石は、本来の形となり空に飛んでいる。一瞬でも目離したら簡単に見失ってしまう。油断してはいけない。
隕石の最大の問題は何であったか?
『極めて危険な物体構造』。それに加えて、衝撃に対しての『繊細』さ。これなのだ。
では、なぜバランスボールへの衝撃は大丈夫だったのか?もしかしたらデリケートだという予想自体が外れたのしれないが、実際は何もかもがわからない。
だからこうして未だに警戒心が溶けずにいる。
それでも一つ目の問題はクリアした。
次に大切なのは『着地地点』。
今のところ、希望通り川に向かって軌道は描かれている。果たして水面はどうなのか。
力也は汗が止まらない。周囲では徐々に状況を把握しだし緊張が解けていくのを感じる。
力也だけが先程と変わらない緊張感を抱えていた。
次第に歓声が力也を包み出す。テレビのカメラマンが自分に向けて話しかけてくる。
(違う。まだだ。まだ全部終わってない。集中しろ、俺。隕石は本当の意味で落ちてない!)
カーブを描いて空へと上がっていった隕石は、再び緩やかに下降を始める。
力也は目を離さない。
(頼む。…頼む!成功してくれ…。)
冷や汗が全身を伝う。呼吸は乱れ、脈も速くなる。
この先は神頼みしか無い。
(何とか川に向かっている。あとは着水時の反応だけ…だ…?)
力也は目を凝らす。
それは確かに川へと落ちている。全てが順調だった。
しかし幸運は続かない。
その先に見えるのは川から突き出した岩の先端。
神様の悪戯だとしか思えないほどの、小さな偶然だった。
力也の口から思わず漏れ出した言葉。
「まずい…。」
力也は全てを見ていた。
そう。
全てを。
自分は隕石を受け止めることに成功したのだ。
そう、まさに『受け止めた』のである。
体に与えられた衝撃は凄まじい。しかし、それも筋肉痛ほどの痛みでおさまっている。
あれだけの力を受けながら怪我の一つもしていない。これが奇跡以外の何と捉える。
更に凄いのが、このバランスボール。破壊もされないどころか傷すらない。
(どうなってるんだ…。あれだけの強い威力を受けてて何もないなんて。このバランスボール、何か変だぞ…。)
確かに。そこに賭けていた。
しかし間近で隕石を見た時に、絶対に無理だと直感した。
それは今までに見たこともない脅威。この先も知ることのないであろう、絶対的な不可能の領域だったはずだ。それが、自分の命はおろか。受け止めたそのもの自体が無事?あり得ない。
要するに、説明できないものが。これまた説明できないもので相殺されたという事実。
何にせよ隕石の力の吸収には成功したのである。このバランスボールが何なのか。それはまず置いておかなくては。
力也は目を凝らす。まだ気を抜いてはならない。
もう一つの希望的観察。
これこそ予想も出来ずに見守る事しか出来ないが。それが切り抜けられてこそ、やっと本当の『成功』となる。
(俺はまだ、なし遂げてない。まだヒーローなんかじゃない。隕石は消えた訳じゃないんだ。)
そう。バランスボールは確かに隕石を受け止めた。その力の全てを吸収したのだ。
しかし、隕石本体は残っている。それはバランスボールによって跳ね返されていた。
スピードもパワーも失った隕石は、本来の形となり空に飛んでいる。一瞬でも目離したら簡単に見失ってしまう。油断してはいけない。
隕石の最大の問題は何であったか?
『極めて危険な物体構造』。それに加えて、衝撃に対しての『繊細』さ。これなのだ。
では、なぜバランスボールへの衝撃は大丈夫だったのか?もしかしたらデリケートだという予想自体が外れたのしれないが、実際は何もかもがわからない。
だからこうして未だに警戒心が溶けずにいる。
それでも一つ目の問題はクリアした。
次に大切なのは『着地地点』。
今のところ、希望通り川に向かって軌道は描かれている。果たして水面はどうなのか。
力也は汗が止まらない。周囲では徐々に状況を把握しだし緊張が解けていくのを感じる。
力也だけが先程と変わらない緊張感を抱えていた。
次第に歓声が力也を包み出す。テレビのカメラマンが自分に向けて話しかけてくる。
(違う。まだだ。まだ全部終わってない。集中しろ、俺。隕石は本当の意味で落ちてない!)
カーブを描いて空へと上がっていった隕石は、再び緩やかに下降を始める。
力也は目を離さない。
(頼む。…頼む!成功してくれ…。)
冷や汗が全身を伝う。呼吸は乱れ、脈も速くなる。
この先は神頼みしか無い。
(何とか川に向かっている。あとは着水時の反応だけ…だ…?)
力也は目を凝らす。
それは確かに川へと落ちている。全てが順調だった。
しかし幸運は続かない。
その先に見えるのは川から突き出した岩の先端。
神様の悪戯だとしか思えないほどの、小さな偶然だった。
力也の口から思わず漏れ出した言葉。
「まずい…。」
力也は全てを見ていた。
そう。
全てを。
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