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恋人に悩んだら・1
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「恋人の事が、絶対に許せない!」
聡美〈サトミ〉は話し出したら止まらなかった。
愚痴を発散しに来たわけでは無かったのだが、いざ口にすると。出るわ出るわ。不満のオンパレード。
「あんなに私が好きだ。って言ってて…。自分の友達と浮気してたなんて…。親友とか言って、男女の友情なんて有り得ないと思ってた。紹介もされたけど、きっと二人で笑ってたんだ。絶対に!」
挙げ句、泣き出す。
店主は黙って聞いている。
「私だって凄く好きだったのに。こんなに傷付くなら出会わない方が良かった。」
聡美は恋人を本当に好きだった。
好きだったのだ。
「私は…。いつもこう。始まりは楽しいのに、終わる時は毎回大きな痛手を負ってる。どうして、ただ笑っていられるだけの恋愛ができないのか不思議なくらい。嫌な思いばかりしてる。だから今日は言葉を買いに来たんです。何かを変えたくて…。」
自他ともに認めるほどの『ダメンズウォーカー』というやつか。
聡美の恋愛は毎回散々なものだ。
今回は浮気。前回は暴力。前々回はヒモ…。
まともな男に出会ったことがない。
自分でも笑えるほどに。
一通り思いの丈をぶつけると聡美は少し落ち着いた。それを見計らうかのように店主がそっと言葉を放つ。
「あなたに贈る言葉です。」
=良い恋も 駄目な恋も それは今の必然=
聡美は一瞬、意味がわからずポカンとした。しかし徐々に言葉が重みを帯びていく。
(…何よ。それ。必然だっていうなら、駄目な恋愛ばかりするのは仕方ないってこと?)
絶望感から再び涙がこみあげてくる。
店主はそんな聡美に構わず話しを続ける。
「恋愛は楽しいばかりが正解ではないんですよ。苦しいから間違ってる、というわけでもないんです。むしろ、相手を思えば思うほど苦しいものかもしれない。自分にだけ都合が良いのなら、そりゃあ楽でしょうがね。」
(え?恋愛って楽しいものじゃないの?)
聡美は疑問ばかりが浮かぶ。苦しいなら恋愛なんかしない方が良いではないか。
「なのに、人は恋に落ちる。何度も何度も、例え傷を負ったとしても。なぜだと思います?
必要だからですよ。その人にとって、その時の相手がね。その理由まではわかりませんが。好きになってしまう。」
確かに。じゃあなぜ自分は駄目な男ばかりを好きになってしまうのか。
「もしも、あなたが恋人に酷い扱いを受けたとしても。それすらもちゃんと意味があるものです。良い恋をするためにどうすべきか、大切なのは己の成長ですよ。」
学ぶこと…。自分は別れた後、いつもどうだったか。
なんでロクでもない男ばかりが次から次へと…。と、相手のせいにばかりしてきた。
それは自分が呼び寄せているのではないか?
「私は。何も変わっていない。私は悪くない。いつもそうやって思ってた。次こそは良い恋をしたい。って思ってるのに、相手にだけそれを期待していた。」
聡美は思い当たる事が沢山ある。
結局は悲劇のヒロインでいたいだけ。自分の非を認めたくないのだ。
今回の彼はどうか。
浮気されたのは、やはり許せない。
だけど…。じゃあ大事にその恋を育んできたのか。と言われると胸は張れない。
(だって。私はずっと自分の事ばかりだった。)
不満しか吐き出さない。友達にも彼にも。上手くいかない理由だけを訴え続けた。
その責任は全部、相手に押し付けて。
なるほど。これでは良い恋なんて出来ない。
自分に必要なのは、もっと相手を見ること。知ること。向き合うこと。
「お買い上げ、ありがとうございました。」
聡美は店を出ると深呼吸をする。
来る前までの鬱々した気持ちや、怒りの感情は驚くほどに落ち着いていた。
もう恨み言は無しだ。
ちゃんと、前を見ること。
人に求めるんじゃなく。自分で作り上げよう。
=良い恋も 駄目な恋も それは今の必然=
酷い失恋をしたばかりだというのに。
聡美は自然と足取りが弾んでいる事に気付く。
こんな時だけど、何となく笑えてしまった。
「バイバイ。ちゃんと好きだったよ。私なりに、一応は。」
聡美〈サトミ〉は話し出したら止まらなかった。
愚痴を発散しに来たわけでは無かったのだが、いざ口にすると。出るわ出るわ。不満のオンパレード。
「あんなに私が好きだ。って言ってて…。自分の友達と浮気してたなんて…。親友とか言って、男女の友情なんて有り得ないと思ってた。紹介もされたけど、きっと二人で笑ってたんだ。絶対に!」
挙げ句、泣き出す。
店主は黙って聞いている。
「私だって凄く好きだったのに。こんなに傷付くなら出会わない方が良かった。」
聡美は恋人を本当に好きだった。
好きだったのだ。
「私は…。いつもこう。始まりは楽しいのに、終わる時は毎回大きな痛手を負ってる。どうして、ただ笑っていられるだけの恋愛ができないのか不思議なくらい。嫌な思いばかりしてる。だから今日は言葉を買いに来たんです。何かを変えたくて…。」
自他ともに認めるほどの『ダメンズウォーカー』というやつか。
聡美の恋愛は毎回散々なものだ。
今回は浮気。前回は暴力。前々回はヒモ…。
まともな男に出会ったことがない。
自分でも笑えるほどに。
一通り思いの丈をぶつけると聡美は少し落ち着いた。それを見計らうかのように店主がそっと言葉を放つ。
「あなたに贈る言葉です。」
=良い恋も 駄目な恋も それは今の必然=
聡美は一瞬、意味がわからずポカンとした。しかし徐々に言葉が重みを帯びていく。
(…何よ。それ。必然だっていうなら、駄目な恋愛ばかりするのは仕方ないってこと?)
絶望感から再び涙がこみあげてくる。
店主はそんな聡美に構わず話しを続ける。
「恋愛は楽しいばかりが正解ではないんですよ。苦しいから間違ってる、というわけでもないんです。むしろ、相手を思えば思うほど苦しいものかもしれない。自分にだけ都合が良いのなら、そりゃあ楽でしょうがね。」
(え?恋愛って楽しいものじゃないの?)
聡美は疑問ばかりが浮かぶ。苦しいなら恋愛なんかしない方が良いではないか。
「なのに、人は恋に落ちる。何度も何度も、例え傷を負ったとしても。なぜだと思います?
必要だからですよ。その人にとって、その時の相手がね。その理由まではわかりませんが。好きになってしまう。」
確かに。じゃあなぜ自分は駄目な男ばかりを好きになってしまうのか。
「もしも、あなたが恋人に酷い扱いを受けたとしても。それすらもちゃんと意味があるものです。良い恋をするためにどうすべきか、大切なのは己の成長ですよ。」
学ぶこと…。自分は別れた後、いつもどうだったか。
なんでロクでもない男ばかりが次から次へと…。と、相手のせいにばかりしてきた。
それは自分が呼び寄せているのではないか?
「私は。何も変わっていない。私は悪くない。いつもそうやって思ってた。次こそは良い恋をしたい。って思ってるのに、相手にだけそれを期待していた。」
聡美は思い当たる事が沢山ある。
結局は悲劇のヒロインでいたいだけ。自分の非を認めたくないのだ。
今回の彼はどうか。
浮気されたのは、やはり許せない。
だけど…。じゃあ大事にその恋を育んできたのか。と言われると胸は張れない。
(だって。私はずっと自分の事ばかりだった。)
不満しか吐き出さない。友達にも彼にも。上手くいかない理由だけを訴え続けた。
その責任は全部、相手に押し付けて。
なるほど。これでは良い恋なんて出来ない。
自分に必要なのは、もっと相手を見ること。知ること。向き合うこと。
「お買い上げ、ありがとうございました。」
聡美は店を出ると深呼吸をする。
来る前までの鬱々した気持ちや、怒りの感情は驚くほどに落ち着いていた。
もう恨み言は無しだ。
ちゃんと、前を見ること。
人に求めるんじゃなく。自分で作り上げよう。
=良い恋も 駄目な恋も それは今の必然=
酷い失恋をしたばかりだというのに。
聡美は自然と足取りが弾んでいる事に気付く。
こんな時だけど、何となく笑えてしまった。
「バイバイ。ちゃんと好きだったよ。私なりに、一応は。」
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