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はじめての夜会①
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「夜会ですか?」
そういえばもうすぐ王太子殿下の誕生日である。今回、成人を迎えられるので盛大なパーティとなりそうだ。
「ああ。我が家も当然招待されている。一緒に行ってくれないか」
「もちろんですわ!」
嬉しくて笑顔で返事をするとルイス様は口ごもってしまわれた。
「そのあまり笑顔を見せられると困るというか、他ではやめてほしいというか……」
「何でしょう?」
「何でもない」
おかしなルイス様。最近表情が豊かになって、顔面凶器もなりを潜めている。真剣なお顔も素敵だけど、こちらもなかなか良い。
「それでドレスを作ろうかと思うのだが、好みのものはあるかな」
「まあ! 作ってくださるのですか?」
「あ、ああ」
「ドレスのことはよく分かりませんので形などはお任せしますが、わたくしはルイス様のお色を纏いたいですわ」
「君は──」
ルイス様は顔を伏せていたので「可愛すぎるだろ」と呟いたのは聞こえなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜会当日。
私は朝から支度に追われていた。と言っても私はただなすがままですべては侍女にお任せ。もみくちゃにされながら、日も沈んだころ、すべての準備が整った。
私が着ているのは淡いブルーのプリンセスドレスで、これはルイス様の目の色でもある。スカートには白とシルバーの糸で花の刺繍が散りばめられており、揺れる度に照明でキラキラと反射するようになっている。背中がぱっくりと開いているので、髪の毛はサイドを編んでハーフアップにしてもらった。止めているリボンはもちろん青である。
イヤリングとネックレスは目立ち過ぎない上品なデザインで、希少な天然のブラックダイヤを使っている。天然でこれだけ黒く綺麗なものはそうそうないらしい。
値段は恐ろしくて聞けない。
黒はルイス様の御髪の色で、今夜の私はルイス様に染まっている。
ちなみにルイス様はグリーンのクラヴァットに、ゴールドのカフスボタン。ちなみにクラヴァットには、私が公爵家の家紋を刺繍させて頂いた。まだまだ下手なので結ぶ時に隠してもらったけど。『これを知るのは私だけでいい』って言われてもう……好き。
ルイス様は着飾った私を目の前にした時、
「……きれいだ」
と言ってくださった。「ルイス様も素敵です」と返しておいたわ。こんなに素晴らしい男性と夜会に行けるなんて私は幸せものです。
このうしろで侍女たちが、「もっと気の利いたことが言えないのか」だの「このヘタレ!」だのと言っていたことは知らなかった。
「さて。出発しようか」
「ええ」
ルイス様が手を差し出してきたので、ゆっくりとその上に手をのせた。
そういえばもうすぐ王太子殿下の誕生日である。今回、成人を迎えられるので盛大なパーティとなりそうだ。
「ああ。我が家も当然招待されている。一緒に行ってくれないか」
「もちろんですわ!」
嬉しくて笑顔で返事をするとルイス様は口ごもってしまわれた。
「そのあまり笑顔を見せられると困るというか、他ではやめてほしいというか……」
「何でしょう?」
「何でもない」
おかしなルイス様。最近表情が豊かになって、顔面凶器もなりを潜めている。真剣なお顔も素敵だけど、こちらもなかなか良い。
「それでドレスを作ろうかと思うのだが、好みのものはあるかな」
「まあ! 作ってくださるのですか?」
「あ、ああ」
「ドレスのことはよく分かりませんので形などはお任せしますが、わたくしはルイス様のお色を纏いたいですわ」
「君は──」
ルイス様は顔を伏せていたので「可愛すぎるだろ」と呟いたのは聞こえなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜会当日。
私は朝から支度に追われていた。と言っても私はただなすがままですべては侍女にお任せ。もみくちゃにされながら、日も沈んだころ、すべての準備が整った。
私が着ているのは淡いブルーのプリンセスドレスで、これはルイス様の目の色でもある。スカートには白とシルバーの糸で花の刺繍が散りばめられており、揺れる度に照明でキラキラと反射するようになっている。背中がぱっくりと開いているので、髪の毛はサイドを編んでハーフアップにしてもらった。止めているリボンはもちろん青である。
イヤリングとネックレスは目立ち過ぎない上品なデザインで、希少な天然のブラックダイヤを使っている。天然でこれだけ黒く綺麗なものはそうそうないらしい。
値段は恐ろしくて聞けない。
黒はルイス様の御髪の色で、今夜の私はルイス様に染まっている。
ちなみにルイス様はグリーンのクラヴァットに、ゴールドのカフスボタン。ちなみにクラヴァットには、私が公爵家の家紋を刺繍させて頂いた。まだまだ下手なので結ぶ時に隠してもらったけど。『これを知るのは私だけでいい』って言われてもう……好き。
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「……きれいだ」
と言ってくださった。「ルイス様も素敵です」と返しておいたわ。こんなに素晴らしい男性と夜会に行けるなんて私は幸せものです。
このうしろで侍女たちが、「もっと気の利いたことが言えないのか」だの「このヘタレ!」だのと言っていたことは知らなかった。
「さて。出発しようか」
「ええ」
ルイス様が手を差し出してきたので、ゆっくりとその上に手をのせた。
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