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ルイス・リックメラー公爵のつぶやき
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「アメリア! アメリアっ!」
抱き起こしてもくたりとなる肢体。白く滑らかな首筋を見た瞬間気まずくなり、ゆっくりとベッドに横たえた。
私の顔を見た瞬間に気絶してしまったアメリアは、静かな寝息をたてている。やはり彼女はこの顔が怖いらしい。分かっていても傷ついてしまう。
アメリアと結婚したのは一年前。彼女は若く美しく、婚姻の申し込みは大変多かったと聞く。私も彼女の美しさに魅せられた一人で、結婚をもぎ取ったのは爵位が高かったからに過ぎない。誰がこの顔を好んで嫁いできてくれるというのか。
私は公爵ではあるが、この国にある騎士団の副団長も務めている。私の属している騎士団の仕事は主に王族・貴人・賓客の警備である。比較的安全なこの国で、物騒なことなどほとんどない。しかし三年ほど前、小規模ではあったが王制反対の過激派が王太子殿下を狙ったのだ。警備していた私は顔に傷を負ってしまい、今でも痕が残っている。
もともと三白眼で目つきも悪い上、頬に醜い傷跡。公爵家であるが故、求婚が減ることは無かったが、私の心は動かなかった。
私は両親の元、遅くにできた子供だ。政略結婚あったにもかかわらず、お互い信頼し愛し合い、なかなか子ができなくても父はよそに女を作らなかった。私が結婚したと同時に引退し、領地で二人仲良く暮らしている。両親のような関係を夢見て一目惚れしたアメリア嬢に結婚を申し込んだ。
アメリアの生家である子爵家は野心家で、数多くある釣書の中から爵位だけで決めたと思われる。そうでなければ私など選ばれる筈がないからだ。それでも少しずつ歩み寄っていければいいと思った。内心浮かれ切っていた私は、顔合わせの時気落ちしてしまった。顔に出さないのはさすがの貴族令嬢である。しかしながら目が怯えきっていたのだ。それは一年経った今でもそれほど変わってはいない。
そんな時、アメリアが階段から落ちたと連絡を受けた。
血相を変えて城から屋敷に戻り、すぐにアメリアの様子を見た。静かに横たわり、起きている時より安らかな顔をしていて、愛しているのに憎らしく思った。医者の話によると、外傷は無いので直に目を覚ますだろうとのことだった。
ひとまず安心し、しばらく彼女の寝顔を見ていた。
「あとはわたくし達が見ておりますので、旦那様は仕事にお戻りください」
侍女長であり私の乳母でもあったヘレナに急かされ、後ろ髪を引かれながら城へ戻った。
アメリアが目覚めない。三日たった今でも目を覚ます様子がない。仕事場で気もそぞろになってしまい、呆れた団長から休みを取れと言われ、屋敷で事務処理などをしていた。
その日はまだ休暇中であったが、団長に呼ばれ、城に行っていた時だった。
執事自らの足でアメリアが気が付いたと伝えに来たのだ。私は自分の馬に乗り、馬車で来ていた執事を置いて屋敷に戻った。気が急いていたことは認める。大股で近づいてくる私は、アメリアにとって恐怖でしかなかったのだろう。それでも気を失うとは思わなかった。私はどうしたらいいのだろう。重いため息が二人きりの部屋に沈んで消えた。
抱き起こしてもくたりとなる肢体。白く滑らかな首筋を見た瞬間気まずくなり、ゆっくりとベッドに横たえた。
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そんな時、アメリアが階段から落ちたと連絡を受けた。
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