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第零章  リビングドール

埋葬―とある夜―

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 葬儀から、一週間ほどが経って。


 とある三日月が輝く夜――。


  

 墓場に。



 奇妙な音が鳴る。


 
 誰も居ない、墓地に。



 なにかをひっかくような音。

 何かを削り取るような音。

 何かを掻きむしるような音。

 
 繰り返し繰り返し。

 
 休むことなくその音は続く。

 何時間も何時間も。

 
 その音はしばらく続いたが。


 
 やがて。



 ある時。


 音が。
 

 ピタリと、止まる。


 何もない静かな夜が戻る。



 時は、日付が変わり。
 深夜に差し掛かったころだ。 




 何事も無かったかのような。
 平穏な空気。 


 


 それは次の瞬間。


 破られた。



 ドスッ、っと一際重々しい音が木霊して。



 それは現れた。


 地面の土を突き破った。



 真っ白な『手』が。

 墓地の地面から現れた。

 
 まるで月を掴むかのように。
 のばされた腕が、墓地の一画から。


 まるで新芽のように生えた。



 
 誰も居ない墓地で。


 それを見ていたのは。


 煌々と輝く三日月、ただ一人だけだった。



 
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