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第九話 『闇の領域』
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現在、最新のアップデートが行われた状態の第二世界で。
キャラクターを作成する時。
プレイヤーは、『光の領域の住人』か、『闇の領域の住人』かそれとも『無所属』かを選択する。
光の領域を選べば。
ヒュム、エルフ、ドワーフ、人工精霊、天使などに加えて、中立に属する種族でプレイすることが可能で。
これらは一般的で、プレイ人口の7割以上を占める種族達だ。
一方。
闇の領域を選べば。
後から追加された新種族である、魔族、悪魔、悪霊、鬼、ダークエルフ、ダークドワーフなどに加えて、中立に属する種族でプレイが可能で。
これらは、光の領域に敵対するための特殊仕様を持った、いわゆる悪の種族となる。
また、無所属を選べばどちらにも属さない種族。
つまり、中立に属する種族――。
獣人、アンデッド、吸血鬼、精霊、妖精、甲殻人などを選択可能で。
これらが多くを占める中立の領地に所属することになる。
例えば、妖精郷や、孤島の大地、冥界など。
そしてどちらにせよ、一度所属領域を決めたら変更は容易ではなく。
これらの仕様によって、他社製MMOにあるGvGの要素に加えて。
正VS悪の領域戦の側面を持つことになる。
―――。
そんな現在の第二世界の。
闇の領域に。
アンデッド種族を統べる領地、ギルド名『ギムダル』が存在する。
古戦場と鉱山、そして鍛冶に秀でた一つの街。
それを主な領域とする、まだ出来立ての弱小ギルドなのだが。
唐突に。
ある日、そのギルドマスターの元に隣の領地から訪問があった。
まだ城を立てるお金もギルドレベルも無い『ギムダル』に謁見の間など無く。
鍛冶師の街の中に立つ、一番大きいの邸宅。
そのエントランスで、ギルドマスター、ギムダはその者たちを出迎える。
ギルドメンバーもマスター含め二人で、一人は領地戦に興味もなく自由に行動しているため。
当然ながら、出迎えるのはギムダひとりだけだ。
そしてまず。
ギムダの前に並ぶ三人のうち、まず口を開いたのは。
右側に立つ一人。
畳んだ大きな蝶羽をマントのように垂らし、煌びやかな見た目の妖精のような女性。
だが、その者は『甲殻人種』の中の蝶型の昆虫をモチーフとした姿であり。
蝶を擬人化しました、みたいな見た目をしている。
なので、顔は普通に可愛らしい女性であり。
所々は外骨格の装甲で覆ってあるモノの、太腿は眩しいわ、ヘソは見えているわ、南半球は爆乳モロだしだわで。
目のやり場に困るエロさで。
「初めまして。『ギムダル』の王ギムダ様、わたくしは隣の領地『ミウラケ』からの使者、アゲハと申します」
――なんて挨拶は、ギムダの心に入ってこない。
チラチラとその肢体に視線をやりながら、目を泳がせながら。
ギムダは、適当に返事をする。
「あ、ええ……は、はじめまして? ……シシャ、ですか?」
左側に立つもう一人が答える。
「ああ。そちら、以前から山向こうの領地に度々攻め込んでいるだろう?」
そう低い声で話すのは、全身を真っ白なフルプレートで覆い、頭に一本角を付けたようなヘルムで。
赤いマントを羽織る、伝説の騎士みたいな見た目のヤツで。
色は白いが。
カブトムシをモチーフにした甲殻人種だ。
名はヴィルトールと言う。
こちらは顔もヒトのそれではなく。
イケメンロボ面のフルフェイスであって。
どちらかといえば、戦隊ヒーロー、仮免ライダー、巨大リアル系ロボット大戦的なイメージが強い。
もっというならば、〇ーバイン、のような外見だ。
そして、ギムダは思い当たる。
「ええ、確かに、私は一番近い光の領地を攻めておりますが?」
なぜなら。
闇の種族は、光の種族を攻めるように設計されているから。
これは、ゲームシステムに定められたことで。
闇の住人は、魔物を狩っても、最大で0.5ポイントしかスキルポイントが得られない。
代わりに、光の種族(プレイヤー、NPC問わず)を狩れば最大1.5ポイントとなっており。
Pvしなさい、Gvしなさい、という圧がかけられた状態だ。
無論、PVモードをオンにするまでもなく、光の領域所属のプレイヤーを攻撃可能な仕様なのだ。
それはギルドにおいても顕著で。
闇の領域に所属するギルドが、ギルド経験値や資金を稼ぐのに一番効率が良いのは、光の領域を攻めることだ。
けれど別に、相手のギルドの核となるアーティファクトを破壊して、領地を奪うとか、そこまでする必要はなく。
相手のギルドスキルで作られたギルド兵やNPCを殺害すれば、それなりの報酬を得ることができる。
だからギムダはそうしていた。
「なにか、おかしいでしょうか?」
そこそこ高級なローブを着て、錫杖を手にするスケルトンメイジ――ギムダは、首をかしげる。
「いや、何もおかしなことではないのだが……」
カブトムシ型甲殻人種のヴィルトールから、そんな話を引き継いで。
真ん中に立つ、小柄でお胸もペラペラで、黄色と黒のカラーリングな甲殻人種。
スズメバチ少女が答える。
「効率が悪いって話です。いちいち、山向こうまで部隊を送り込んでいるんでしょ? あんな大部隊を何度も用意してたんじゃ、時間もかかるし、ギルド資金もバカにならないと思いますけど? カツカツでしょうに中級レベルの魔物とか作ってるみたいですし」
「た、確かに」
生産性に優れているアンデッド種であり。
古戦場という不死の生産力に優れた立地をもってしても。
デュラハンロードや、ジャイアントゾンビ等、高コストな兵士の生産には時間とお金がかかる。
それを、山向こうに配備して攻撃を実行する。
効率が悪いと言われてもしょうがない。
でも……。
「……他に手立てが」
「だから、私達が道を作ってあげるわ」
「へ?」
「あなたのところ、山に鉱山があるでしょ?」
「はい」
「そこから、山向こうまで、私の昆虫部隊で通路を掘る。そうしたら部隊の配備も楽になる」
「確かにそれはそうですけど? そんなことをしてあなた達に何の得が?」
「別に得とかじゃないですよ。あまりに下手くそだったから見てられなかっただけ」
「へ、へたくそ……!?」
ショックでスケルトンメイジの顎が、外れそうになる。
「ま、そうですね。例えば、この領地の鍛冶能力を活かして、我々の部隊に武器とかたまに作ってくれたら、嬉しいかな?」
これはつまり取引であり。
簡単に言うならば――。
「つまり、同盟を組む、と言う話ですか、コレ?」
「そうですけど?」
「しかし、それならば、一度そちらのギルドマスターとも話をですね……」
「今話してますって」
「え?」
スケルトンメイジは、目の前に立つ小さい少女を見やる。
パパとママとお嬢さん。そんな雰囲気を醸し出す三人のうち、もっともソレらしくない見た目の少女だから。
そして、少女は紙を取り出して掲げるのだ。
「ほら、ちゃんと同盟契約書も持ってきましたよ」
イキナリな話で驚くばかりのギムダだが。
まじまじと見つめる書類も、目の前に立つ3人の顔も。
それはどう見てもまじな話で。
そんなアンデッドの領地『ギムダル』が攻め込んでいる相手。
それは、山一つを隔てた所にある光の領域『ブラッドフォート』と言うギルドなのである。
キャラクターを作成する時。
プレイヤーは、『光の領域の住人』か、『闇の領域の住人』かそれとも『無所属』かを選択する。
光の領域を選べば。
ヒュム、エルフ、ドワーフ、人工精霊、天使などに加えて、中立に属する種族でプレイすることが可能で。
これらは一般的で、プレイ人口の7割以上を占める種族達だ。
一方。
闇の領域を選べば。
後から追加された新種族である、魔族、悪魔、悪霊、鬼、ダークエルフ、ダークドワーフなどに加えて、中立に属する種族でプレイが可能で。
これらは、光の領域に敵対するための特殊仕様を持った、いわゆる悪の種族となる。
また、無所属を選べばどちらにも属さない種族。
つまり、中立に属する種族――。
獣人、アンデッド、吸血鬼、精霊、妖精、甲殻人などを選択可能で。
これらが多くを占める中立の領地に所属することになる。
例えば、妖精郷や、孤島の大地、冥界など。
そしてどちらにせよ、一度所属領域を決めたら変更は容易ではなく。
これらの仕様によって、他社製MMOにあるGvGの要素に加えて。
正VS悪の領域戦の側面を持つことになる。
―――。
そんな現在の第二世界の。
闇の領域に。
アンデッド種族を統べる領地、ギルド名『ギムダル』が存在する。
古戦場と鉱山、そして鍛冶に秀でた一つの街。
それを主な領域とする、まだ出来立ての弱小ギルドなのだが。
唐突に。
ある日、そのギルドマスターの元に隣の領地から訪問があった。
まだ城を立てるお金もギルドレベルも無い『ギムダル』に謁見の間など無く。
鍛冶師の街の中に立つ、一番大きいの邸宅。
そのエントランスで、ギルドマスター、ギムダはその者たちを出迎える。
ギルドメンバーもマスター含め二人で、一人は領地戦に興味もなく自由に行動しているため。
当然ながら、出迎えるのはギムダひとりだけだ。
そしてまず。
ギムダの前に並ぶ三人のうち、まず口を開いたのは。
右側に立つ一人。
畳んだ大きな蝶羽をマントのように垂らし、煌びやかな見た目の妖精のような女性。
だが、その者は『甲殻人種』の中の蝶型の昆虫をモチーフとした姿であり。
蝶を擬人化しました、みたいな見た目をしている。
なので、顔は普通に可愛らしい女性であり。
所々は外骨格の装甲で覆ってあるモノの、太腿は眩しいわ、ヘソは見えているわ、南半球は爆乳モロだしだわで。
目のやり場に困るエロさで。
「初めまして。『ギムダル』の王ギムダ様、わたくしは隣の領地『ミウラケ』からの使者、アゲハと申します」
――なんて挨拶は、ギムダの心に入ってこない。
チラチラとその肢体に視線をやりながら、目を泳がせながら。
ギムダは、適当に返事をする。
「あ、ええ……は、はじめまして? ……シシャ、ですか?」
左側に立つもう一人が答える。
「ああ。そちら、以前から山向こうの領地に度々攻め込んでいるだろう?」
そう低い声で話すのは、全身を真っ白なフルプレートで覆い、頭に一本角を付けたようなヘルムで。
赤いマントを羽織る、伝説の騎士みたいな見た目のヤツで。
色は白いが。
カブトムシをモチーフにした甲殻人種だ。
名はヴィルトールと言う。
こちらは顔もヒトのそれではなく。
イケメンロボ面のフルフェイスであって。
どちらかといえば、戦隊ヒーロー、仮免ライダー、巨大リアル系ロボット大戦的なイメージが強い。
もっというならば、〇ーバイン、のような外見だ。
そして、ギムダは思い当たる。
「ええ、確かに、私は一番近い光の領地を攻めておりますが?」
なぜなら。
闇の種族は、光の種族を攻めるように設計されているから。
これは、ゲームシステムに定められたことで。
闇の住人は、魔物を狩っても、最大で0.5ポイントしかスキルポイントが得られない。
代わりに、光の種族(プレイヤー、NPC問わず)を狩れば最大1.5ポイントとなっており。
Pvしなさい、Gvしなさい、という圧がかけられた状態だ。
無論、PVモードをオンにするまでもなく、光の領域所属のプレイヤーを攻撃可能な仕様なのだ。
それはギルドにおいても顕著で。
闇の領域に所属するギルドが、ギルド経験値や資金を稼ぐのに一番効率が良いのは、光の領域を攻めることだ。
けれど別に、相手のギルドの核となるアーティファクトを破壊して、領地を奪うとか、そこまでする必要はなく。
相手のギルドスキルで作られたギルド兵やNPCを殺害すれば、それなりの報酬を得ることができる。
だからギムダはそうしていた。
「なにか、おかしいでしょうか?」
そこそこ高級なローブを着て、錫杖を手にするスケルトンメイジ――ギムダは、首をかしげる。
「いや、何もおかしなことではないのだが……」
カブトムシ型甲殻人種のヴィルトールから、そんな話を引き継いで。
真ん中に立つ、小柄でお胸もペラペラで、黄色と黒のカラーリングな甲殻人種。
スズメバチ少女が答える。
「効率が悪いって話です。いちいち、山向こうまで部隊を送り込んでいるんでしょ? あんな大部隊を何度も用意してたんじゃ、時間もかかるし、ギルド資金もバカにならないと思いますけど? カツカツでしょうに中級レベルの魔物とか作ってるみたいですし」
「た、確かに」
生産性に優れているアンデッド種であり。
古戦場という不死の生産力に優れた立地をもってしても。
デュラハンロードや、ジャイアントゾンビ等、高コストな兵士の生産には時間とお金がかかる。
それを、山向こうに配備して攻撃を実行する。
効率が悪いと言われてもしょうがない。
でも……。
「……他に手立てが」
「だから、私達が道を作ってあげるわ」
「へ?」
「あなたのところ、山に鉱山があるでしょ?」
「はい」
「そこから、山向こうまで、私の昆虫部隊で通路を掘る。そうしたら部隊の配備も楽になる」
「確かにそれはそうですけど? そんなことをしてあなた達に何の得が?」
「別に得とかじゃないですよ。あまりに下手くそだったから見てられなかっただけ」
「へ、へたくそ……!?」
ショックでスケルトンメイジの顎が、外れそうになる。
「ま、そうですね。例えば、この領地の鍛冶能力を活かして、我々の部隊に武器とかたまに作ってくれたら、嬉しいかな?」
これはつまり取引であり。
簡単に言うならば――。
「つまり、同盟を組む、と言う話ですか、コレ?」
「そうですけど?」
「しかし、それならば、一度そちらのギルドマスターとも話をですね……」
「今話してますって」
「え?」
スケルトンメイジは、目の前に立つ小さい少女を見やる。
パパとママとお嬢さん。そんな雰囲気を醸し出す三人のうち、もっともソレらしくない見た目の少女だから。
そして、少女は紙を取り出して掲げるのだ。
「ほら、ちゃんと同盟契約書も持ってきましたよ」
イキナリな話で驚くばかりのギムダだが。
まじまじと見つめる書類も、目の前に立つ3人の顔も。
それはどう見てもまじな話で。
そんなアンデッドの領地『ギムダル』が攻め込んでいる相手。
それは、山一つを隔てた所にある光の領域『ブラッドフォート』と言うギルドなのである。
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