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第七話 『コロッセウム』
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「あら……。キミ、ネームドオプション何個もあるんですね、すごい。この中で宝具に悪さをしてるのはこれかな?」
そんな係員が公開したのが、『世界樹の加護』という装備オプションだった。
それにより消費SPが削減されているため。
取得した総SP量より、本来使用しているべきSP合計量が上回っているのだ。
早い話。
ローリエの総SP量は、感覚としては12万ちかいということになる。
「ごめんなさい、レギュレーションに関わりますので、ちょっと本部に確認を取ります。少々お待ちくださいね」
そうして、スタッフが【風の囁き《ウィスパー》】のスクロールを使って連絡を取る間。
ローリエとその後ろに並ぶ者達は待たされることになった。
不意に暇な時間が出来あがる。
人々は自然と会話でその暇をつぶし始め。
周囲は、一つをテーマとする話題で騒めき出す。
ドラゴンゾンビの件。
着ぐるみのクマの件。
さらに、ジルシスというどこかの領地のマスターとして聞いたことのある名前。
99Kという、高レベルキャラクターの存在。
そいつが身に着けているオプションの凄まじさ。
その全てが、同じ一つのパーティーに所属していること。
なんて名前のパーティだっけ?
ミミズクと、猫……?
そんな声も聞こえてくる。
ざわ、ざわ、と見物客や参加者が口々に、今傍にある興味を言葉にする中。
「まさかの99K……!? すごいわ!!」
「能力的にはそれ以上、ということかしら?」
フェルマータとマナも、ローリエが予想以上だったことに驚いていて。
「さすが先輩! 出会った時から只者じゃないと思ってました」
「見た目は全然たよりなさそうなのに……?」
ユナとウィスタリアもそれぞれ称賛を口にし。
それを期に、二人はローリエというキャラクターの話題を暇つぶしの種にし始める。
「他ニモ、ネェムドオプションツイトルテ、今、ユウテナカッタ?」
もちろん、ジルシスも、興味津々だ。
そして。
当の本人。
スタッフの傍で佇んで待つ、小柄エルフ。
ローリエは、胸元で、服を抓むようにこぶしを握り締め。
不安で仕方が無かった。
レギュレーションがどうとか言っていたし。
参加できない可能性もあるかもしれない。
そうなると、フェルマータ達に迷惑がかかるかもしれない。
それに、たくさんの他人に注目されているような雰囲気もあるし。
すごい、とか褒められるのは嫌いじゃないけれど。
持てはやされる、という状態は好きではない。
ただの被害妄想かもしれないけど。
馬鹿にされているように思うことがあるから。
ローリエの心は、ざわついていた。
この場から逃げ出したい衝動に駆られてくる。
それに、装備にしても。
すごいと、他人は思うかもしれないが――。
「……そんなに、良いものじゃないのに」
ローリエ自身はそう思わない。
そんなローリエが身に着けている装備は、頭防具も身体防具も、ゲームを始めて間もないころに作成したモノだ。
むしろ、初めて作った防具であり。
森で採取したモノや、魔物のドロップ品など。
植物系の素材を組み合わせて作った、自作の防具になる。
総SP7,000あるかどうかという、初期の頃である故。
決して、高級な素材で出来ているわけではない。
めいいっぱい強化はされているが。
それでも、元々の性能が良くないため、物理防御力も魔法防御力も心もとないままだ。
単に等級が伝説級であるというだけが特徴の。
ただの低レベル用の防具なのだ。
その身体防具の名は、
『千年妖精のおめかしドレス』
という。
見た目も、生きた巨大な葉っぱなど。
様々な植物を元にして作られたドレスで。
スカートは大きな白色の花弁で構成され、座ると本当の花のように広がる仕組みになっている。
名の通り。
妖精が森を散歩する時用のドレス。
そんな感じの。
どちらかといえば、見た目重視の装備なのだ。
それなのに。
色々な意味で、ちょっと大変な能力のオプションがついてしまった。
しかも。
閃いたネームドオプションは。
それだけじゃない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『お助けアルラウネ』レベル1:
道具、武器、防具、消耗品、素材、調度品アイテムを製造する時。
5%の確率で1~3個追加で同じものを生成する。
魔法で作成する武具はこれに含まれない。
効果発生時に、可愛いアルラウネがこっそりお手伝いに現れる。
『緑の精霊』レベル5:
周辺の草木の量に比例して、移動速度と発見されにくさ(視覚/聴覚/嗅覚/魔法感知)が大きく上昇。
『世界樹の加護』レベル5:
スキル習得に必要なSPを20%削減する。
ただし、モンスター討伐時に獲得するSPの量が40%減少する。
この装備は自動的に【破壊不可】【耐久無限】【着脱不能】を得る。
『封印の紋章』--------:
SP量が最大値(100,000)に達した時。
このオプションと、『世界樹の加護』オプションは、別のオプションに変化する。
また、この装備は自動的に【看破阻害】レベル10を得る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……まだ、かな」
ローリエが待っていると。
スタッフのやり取りが終わったようで。
「ローリエ様。本部の判断をお伝えいたします」
ごくり、とローリエは生唾を飲む。
「イベントへの参加は可能ですが、同時に組むキャラクターのSP量は50,000が上限とし、人数はひとりに限定する、とのことです」
つまり、ローリエ一人で110,000という裁定になったわけだ。
でもひとまず、参加はできるようだ。
「よかった……」
ローリエはほっとする。
そして、もう、今日やることは終わったよね?
もう、今すぐ宿に帰っていいかな……?
「よし、ロリちゃんでチェックは最後ね。それじゃ、折角だから他の参加者がどんな感じか、偵察していきましょ? 組み合わせも考えないといけないしね」
うっ。
「……は、はい」
帰りたい。
この人混みはもう嫌だ。
そう思っても、ローリエはやはり言い出せないのでした。
そんな係員が公開したのが、『世界樹の加護』という装備オプションだった。
それにより消費SPが削減されているため。
取得した総SP量より、本来使用しているべきSP合計量が上回っているのだ。
早い話。
ローリエの総SP量は、感覚としては12万ちかいということになる。
「ごめんなさい、レギュレーションに関わりますので、ちょっと本部に確認を取ります。少々お待ちくださいね」
そうして、スタッフが【風の囁き《ウィスパー》】のスクロールを使って連絡を取る間。
ローリエとその後ろに並ぶ者達は待たされることになった。
不意に暇な時間が出来あがる。
人々は自然と会話でその暇をつぶし始め。
周囲は、一つをテーマとする話題で騒めき出す。
ドラゴンゾンビの件。
着ぐるみのクマの件。
さらに、ジルシスというどこかの領地のマスターとして聞いたことのある名前。
99Kという、高レベルキャラクターの存在。
そいつが身に着けているオプションの凄まじさ。
その全てが、同じ一つのパーティーに所属していること。
なんて名前のパーティだっけ?
ミミズクと、猫……?
そんな声も聞こえてくる。
ざわ、ざわ、と見物客や参加者が口々に、今傍にある興味を言葉にする中。
「まさかの99K……!? すごいわ!!」
「能力的にはそれ以上、ということかしら?」
フェルマータとマナも、ローリエが予想以上だったことに驚いていて。
「さすが先輩! 出会った時から只者じゃないと思ってました」
「見た目は全然たよりなさそうなのに……?」
ユナとウィスタリアもそれぞれ称賛を口にし。
それを期に、二人はローリエというキャラクターの話題を暇つぶしの種にし始める。
「他ニモ、ネェムドオプションツイトルテ、今、ユウテナカッタ?」
もちろん、ジルシスも、興味津々だ。
そして。
当の本人。
スタッフの傍で佇んで待つ、小柄エルフ。
ローリエは、胸元で、服を抓むようにこぶしを握り締め。
不安で仕方が無かった。
レギュレーションがどうとか言っていたし。
参加できない可能性もあるかもしれない。
そうなると、フェルマータ達に迷惑がかかるかもしれない。
それに、たくさんの他人に注目されているような雰囲気もあるし。
すごい、とか褒められるのは嫌いじゃないけれど。
持てはやされる、という状態は好きではない。
ただの被害妄想かもしれないけど。
馬鹿にされているように思うことがあるから。
ローリエの心は、ざわついていた。
この場から逃げ出したい衝動に駆られてくる。
それに、装備にしても。
すごいと、他人は思うかもしれないが――。
「……そんなに、良いものじゃないのに」
ローリエ自身はそう思わない。
そんなローリエが身に着けている装備は、頭防具も身体防具も、ゲームを始めて間もないころに作成したモノだ。
むしろ、初めて作った防具であり。
森で採取したモノや、魔物のドロップ品など。
植物系の素材を組み合わせて作った、自作の防具になる。
総SP7,000あるかどうかという、初期の頃である故。
決して、高級な素材で出来ているわけではない。
めいいっぱい強化はされているが。
それでも、元々の性能が良くないため、物理防御力も魔法防御力も心もとないままだ。
単に等級が伝説級であるというだけが特徴の。
ただの低レベル用の防具なのだ。
その身体防具の名は、
『千年妖精のおめかしドレス』
という。
見た目も、生きた巨大な葉っぱなど。
様々な植物を元にして作られたドレスで。
スカートは大きな白色の花弁で構成され、座ると本当の花のように広がる仕組みになっている。
名の通り。
妖精が森を散歩する時用のドレス。
そんな感じの。
どちらかといえば、見た目重視の装備なのだ。
それなのに。
色々な意味で、ちょっと大変な能力のオプションがついてしまった。
しかも。
閃いたネームドオプションは。
それだけじゃない。
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『お助けアルラウネ』レベル1:
道具、武器、防具、消耗品、素材、調度品アイテムを製造する時。
5%の確率で1~3個追加で同じものを生成する。
魔法で作成する武具はこれに含まれない。
効果発生時に、可愛いアルラウネがこっそりお手伝いに現れる。
『緑の精霊』レベル5:
周辺の草木の量に比例して、移動速度と発見されにくさ(視覚/聴覚/嗅覚/魔法感知)が大きく上昇。
『世界樹の加護』レベル5:
スキル習得に必要なSPを20%削減する。
ただし、モンスター討伐時に獲得するSPの量が40%減少する。
この装備は自動的に【破壊不可】【耐久無限】【着脱不能】を得る。
『封印の紋章』--------:
SP量が最大値(100,000)に達した時。
このオプションと、『世界樹の加護』オプションは、別のオプションに変化する。
また、この装備は自動的に【看破阻害】レベル10を得る。
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「……まだ、かな」
ローリエが待っていると。
スタッフのやり取りが終わったようで。
「ローリエ様。本部の判断をお伝えいたします」
ごくり、とローリエは生唾を飲む。
「イベントへの参加は可能ですが、同時に組むキャラクターのSP量は50,000が上限とし、人数はひとりに限定する、とのことです」
つまり、ローリエ一人で110,000という裁定になったわけだ。
でもひとまず、参加はできるようだ。
「よかった……」
ローリエはほっとする。
そして、もう、今日やることは終わったよね?
もう、今すぐ宿に帰っていいかな……?
「よし、ロリちゃんでチェックは最後ね。それじゃ、折角だから他の参加者がどんな感じか、偵察していきましょ? 組み合わせも考えないといけないしね」
うっ。
「……は、はい」
帰りたい。
この人混みはもう嫌だ。
そう思っても、ローリエはやはり言い出せないのでした。
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