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第四話 『暗闇の底で』
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しおりを挟むパーティはしたい。
でも、やっぱり一人は落ち着くなぁ、とローリエは思いながら。
なんなら、この真っ暗な闇も、おあつらえ向きで、嫌いじゃなくて。
ひとりが板につきすぎちゃったかな。なんて。
良い事なのか悪い事なのか。
そんなちょっとした解放感を覚えながら。
ダンジョンを行くローリエは。
ついに、その感覚の中に動く物を発見する。
大きさや動きから考えれば、確実にモンスターだ。
進むためには排除が必要だろう。
もしかしたら、めっちゃ強いやつかもしれない。
索敵能力だけでは、相手の強さは判断できないから。
ローリエは、日傘を倉庫に仕舞い、『本気』の戦闘態勢に切り替える。
ローリエは、3年の間、ずっとソロで戦ってきた。
どこかのパーティに誘われないかなと思いつつも。
不人気なスキルの満漢全席である自分に、自信が持てず。
結局、そのままSPは、99012まで溜まってしまった。
他のゲームでいうところのLV99(最大100)って感じだ。
その中で、勝手に出来上がった戦術がある。
まず、ローリエは、武器を何種類か齧っているのだが。
魔物を発見した時に、最初に使う武器やスキルは定まっている。
ローリエは、エルフ種族だから、遠距離攻撃の威力、射程、精度に補正が加わる上、風と重力の各種パッシブスキルの効果で、風の影響も重力の影響も受けない矢を撃つことができる。
それらを最大限活かしつつ、ファーストアタック大正義の遠距離攻撃を仕掛ける。
始めるのは、そのための準備だ。
ローリエはまず、
【大自然の弓】で長弓を作り、【木製矢製造】で矢を作り、【猛毒付与】で毒を塗る。
それに、さらに。
今回は、遠距離武器マスタリから。
【狙撃姿勢】を使用して、射程距離と精度を向上させた。
木属性魔法で作り出した長弓は、木を組み合わせてできた競技の弓のような形で、弦も蔓で形成される。
矢に、塗られる毒は別の【毒草生成】のスキルで生成されるモノであり。
他のRPGよりもその種類は多岐にわたる。
その内訳は――。
『血液毒』
――ダメージオンタイム。つまりよくある時間でHPが減るやつ。ローリエの毒はMPとSPも減る。
『腐食毒』
――『負傷』の状態異常+即時の追加ダメージ。
『神経毒』
――状態異常マヒの効果。ただし使い手の毒レベルと相手の耐性によっては、即死。
『実質毒』
――各種基礎ステータスダウンのデバフ
以上の4種類。
ちなみに毒での攻撃は、全て『木属性』の『物理でも魔法でもない』扱いになっていて、防御力では減らせず、特殊な耐性スキルや、アイテムを使って防御する設計だ。
ローリエの筋力値は補正込みで35しかなく、ユナよりも低いため、正直物理攻撃の一発だけでいうなら、火力は無い。
そこを、これらの毒スキルで補っている。
だが、今は、暗殺者の落とした指輪の効果で筋力値+25されて60になっている。この基本ステータスが25もアップするアクセサリーは珍く、とても高価なアイテムで間違いない。
ローリエは、真っ暗な暗闇の中。
各種の索敵情報を頼りに、作り出した弓の射程ぎりぎりから、発見したモンスターに狙いをつける。
付与する毒は、効果時間が短くなるが、瞬間的な効果が高くなることを考えて。
4種全部乗せだ。
ローリエが。
弓を引き絞り。
まだ見ぬ敵に狙いを定め。
矢を解き放つ。
ヤジリも軸も木で、矢羽根は木の葉。
それは瞬く間に暗闇の中に吸い込まれる。
かなりの長射程から発射された矢は、減速も、減衰も、重力で落下することもなく。
一直線に魔物に向かい、突き刺さり、その身体にめり込んだ。
静かなダンジョンの空洞に。
ごく小さな歎きが、遠くから反響して。
ローリエに、魔物の苦しむ様子は伝わらない。
真っ暗だし、超音波と振動での感知だから。
ただ、魔物がこちらに向かってくる、という情報は伝わってくる――。
そうして、ほんの少しだけ、こちらに動きをみせた魔物のシグナルが、やがて消失する。
矢のダメージ、腐食毒による追加ダメージ。
そこに、麻痺か、あるいはDOTで死んだのだろう。
SPの獲得が0であることから、弱い部類だったと推察できる。
まずは1匹。
しかしながら、ここから先、たくさんの魔物が感知されている。
だが、問題はない。
この程度の強さであれば、ローリエは苦戦しない。
そんな感じで、ローリエは殆どの敵を弓で抹殺しながら、破竹の勢いでダンジョンを進んでいった。
しかし、ある時。
「……?」
ローリエは、違和感を覚えた。
矢は確かに当たったはずなのに。
ローリエの元にやってくるシグナルが速い。
移動速度が変わらないから、『実質毒』によるステータスダウンも受けておらず。
麻痺も全く効果を受けていないであろうことが解る。
麻痺の状態異常の極地は、最悪即死だが、通常は痺れによって動けなくなる。
それよりもさらに効果が微弱な場合には、動作が遅くなる、という効果に変わるのだ。
だが、そんな素振りは無い。
ローリエは、いやな予感がしつつも。
もう1発。
もう1発。
何発撃っても、そいつの動きは止められず。
目視可能な間近までやってきたそいつをみて、ローリエは理解した。
そりゃそうだ。
木属性で作った矢は、『木属性攻撃』になるのだから。
『金属性』の敵に効果が出るはずもない。
故に。
HP満タンのまま、無傷の魔物が、ローリエに襲い掛かる。
「ちょ、ちょちょ、ちょい、ちょい、ちょい、ちょっとぉ! 『リビングアームズ』さん!?」
なんでこんなところに!?
そう、そいつは全6種類の様々な近接武器、両手剣、両手槍、両手斧、両手槌、大鎌、大盾、で構成された、浮遊する武器の魔物。
ローリエの『天敵』だ。
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