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第二話 『初めてのパーティ』
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しおりを挟む全身に傷を負い、満身創痍の魔物達。
ローリエの魔法と落下ダメージに耐えたタフな連中が。
ターゲットを変え、フェルマータに殺到する。
そんな何種類もの魔物達に混じり、7体のオーグジェリーは健在で、エルダートレントと言う超大物も混じっている。
そのすべてが、一人のドワーフを殴りつけ、魔法を浴びせ、デバフを仕掛けてくる。
「ご、ごめんなさい、私……」
今にも、もう辞めろと。
もうパーティに必要ないと、言われるのではないかと。
戦々恐々であり。
自分のしでかしたことを悔い、謝罪するローリエだが。
それよりも。
目に映るのは、魔物たちにもみくちゃにされているフェルマータの小さな背中だ。
自分の心配よりも。
今は、フェルマータを助けなければいけない。
特に、強酸攻撃をしてくるオーグジェリーは、武器や防具を溶かし、防御力に凄まじいデバフをかけてくる難敵だ。防御力が命のフェルマータにとっては天敵の筈だった。
風の魔法使いの真似事をしている場合ではない。
全力で、魔物を叩きのめさねば――。
今にも、敵陣に飛び込もうかと思ったローリエ。
けれど、よく見るとフェルマータのHPにはまだ余裕が感じられる。
数多の魔物に殺到され、様々な攻撃を浴びているというのに。
オーグジェリーのアシッドブレスを何度も浴びているのに。
フェルマータに慌てる様子はない。
それというのも。
ここを普段の狩場にしていると言っていたフェルマータの対策が、完璧だからだ。
武具破壊不可の効果を持つ魔銀は、酸で溶けたりせず、甲冑もハンマーも健在だし、
自動回復のパッシブスキルを積んでいるからか、ダメージと回復が拮抗して結果的にHPも減っていかない。
さらにフェルマータは「『武具効力保護』」のスキルを使って、防御力減少のデバフも即座に無効化する。
そうして、ローリエの背後から。
「『炸裂魔弾』!!」
純粋な魔力のみで編まれた、炸裂弾が、弧を描いて飛来する。
無属性の中級攻撃魔法だ。
それが、敵陣の中央に着弾すると、ずどん、と大音量の重低音が響き。
魔力の塊が爆散して、周囲一帯に破壊力を振りまいた。
その威力は、サイクロンの比ではなく。
生き残っていた魔物の大半を消し飛ばした。
「すごい……」
なんて威力なんだ、と、今度は、ローリエが驚く。
パーティプレイは初で、純魔法使いの魔法を間近で見るのも、初めてだ。
しかし、今しがた『炸裂魔弾』を行使した自称魔法使いは、FAI極だという。
そのことを思い出せば、合点はいく。
目算では、おそらくローリエの3倍ほどの魔法攻撃力を有しているだろう。
さらに、打ち漏らした残党を、マナは初級無属性魔法の『魔弾』で、順番に殲滅しはじめる。DEXが低いからか、一発を準備するのに時間を要する分、間隔には開きがあるが、その大威力は、戦車の砲弾のように強力無比だった。
ローリエは、それに倣い。
失態のリカバリーも兼ねて、残党狩りに参加する。
「『空圧弾』!!」
風属性の初級魔法――。
音速で撃ち出された超圧縮空気の弾丸が、近くの魔物に命中して、ドォン、と周囲に小規模な衝撃波を発生させ、その威力で、撃滅する。
当然、一発の威力は、マナに遠く及ばない。
だから、ローリエは装填速度の速さを活かして、連射する。
そうして、ついに、魔物の群れは、居なくなった。
今更に、フェルマータが応える。
「ロリちゃんなんで謝ってるの?」
「え……?」
「すごいのはそっちよ? こんなに広範囲の魔法持ってるなんて。先生じゃ、せいぜいさっきヤツが一番広い魔法なのに」
「詠唱も早くて羨ましいわね。――あと、フェルは私の事、先生って言わないで!」
失望されたかと思っていたら、思いのほか高評価だったことに、ローリエは驚く。
しかしながら――。
マナは言う。
「さて、あとは、あのでか物ね」
そう。
群れは居なくなったのだが。
実は、大物が1匹健在なのだ。
遠くから魔法でフェルマータを狙い続けている魔物。
巨大な樹木型モンスターの、エルダートレントだ。
しかも植物系だけあって、木属性の魔物であり、風耐性も持っているので、木属性魔法も風属性魔法も被害が半減してしまう、ローリエにとっては、めんどくさい相手だ。
ソロで森にこもっていた時は、こういう植物系は大人しく物理攻撃で対応していたが。
風の魔法使いを名乗っている今、その選択肢は躊躇われる。
ローリエが木属性の敵と相性が良くないことは、ベテランであるフェルマータもマナも理解しているようで。
「ロリちゃん、こいつは私たちに任せて」
……ちょっと悔しいけれど。
ローリエは、素直に頷いた。
本当は、『私も一緒に戦います』と言いたいところなのだが。
ローリエには一つ、やらなければならないことが出来たから。
仕方が無かったのだ――。
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