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第二百九十九話 ボエ~
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解散した後、私はクラフとフランと共にオダリムの街を練り歩いていた。
「それで、なんでわしらがお主の洋服を選ばねばならん?」
「私は服のセンスが無いからな。2人に選んで貰いたいのだ」
「そうなの?意外ね?」
「わしからしたら意外ではないがな」
そう、この2人と街を歩いている理由は、ロワとのお祭りのために洋服を選んで貰うためだ。
「それにしても、やっぱりミエルはロワ君のことが好きなのね」
「そんなに分かりやすいか?」
「そうね。分からないのなんてロワ君ぐらいなんじゃない?」
「その言葉も何回も聞いた」
こんなに分かりやすいと、自分自身で秘密をバラまいている気分だ。
「どうすれば顔に出ないように出来るだろうか」
「ホウリに教えて貰えればよいのではないか?」
「それも考えておくか」
何を対価に要求されるのか分かったものではないから、最終手段だな。
「そういえば、ホウリを含めた男どもはどこに行ったんだ?」
料亭から出発するころにはいなくなっていた。いったい何処に行ったんだろうか?
「ロワとジルとロットは冒険者ギルドで戦っておる。ホウリはやる事があると言って何処かに消えた」
「あの可愛い子は?」
「ノエルなら王都に戻った。お祭りに友達を誘いたいんじゃと」
「ノエルらしいな」
雑談しながら街を歩いていると、空の屋台が目につく。空の屋台ではお祭りで売るものを店員が準備していた。全員顔が晴れ晴れとしていて、お祭りに対するワクワク感が伝わってくる。
お祭りの準備は着々と進んでいるみたいだ。
「お祭りはどんな屋台が出るのかしら?」
「色々じゃよ。食い物も美容品も工芸品も、無いものを探すほうが難しいくらいじゃ」
「フランちゃんはオダリムのお祭りに来たことがあるの?」
「1年前にホウリと一緒にな」
「その時は何したの?」
「絶対に勝てんイカサマゲームをホウリが打倒したり、高級スイーツ店でクレーマーを半殺しにしたり、不正をしていたスイーツ店をぶっ潰したりとかじゃな」
「……なんだって?」
「詳しく話すとじゃな──」
フランから1年前のお祭りのことを聞きつつ、店に向かう。
「───そんな感じじゃな」
「あいつはオダリムに来て2週間で、そんなことまでやっていたのか」
「ホウリじゃしな」
正確にはこの世界に来て2週間だった筈だし、更に非常識さが増したな。
「私はホウリって人をあまり知らないんだけど、今の話でなんとなく分かったわ」
「ホウリの頭おかしいエピソードはまだまだあるぞ。聞きたいなら暇な時に話してやる」
「もうお腹いっぱいだから遠慮しておくわ」
油ものを大量に食べたような顔で、クラフは首を横に振る。
「気持ちは分かるがな」
「たまには普通の手段を取って貰いたいものだ……なんだあれは?」
私は遠くの噴水のある広場で女性が何かを調整していた。よく見ると、それはスタンドマイクだった。
「なんで道にスタンドマイクが?」
「去年はあんなもの無かったぞ?」
「少し見てみましょうか」
漫才でもやるのだろうか?そう思いつつ、スタンドマイクを見ていると女性が私達に気が付いて近づいてきた。
「あの、何か御用でしょうか?」
「何か用がある訳では無い。ただ、なぜスタンドマイクがこんな所にあるのか気になってのう」
「これは、お祭りに開催するのど自慢大会のマイクなんですよ」
「のど自慢?」
お祭りにのど自慢?聞いたことが無いな?
フランも同じ気持ちなのか首を傾げている。
「のど自慢なんて去年はあったか?」
「今年から開催することになったんですよ。優勝賞品も豪華なんですよ」
そう言って、女性は優勝賞品が書かれたパネルを見せて来た。
1位 ペアクルーズチケット
2位 最新ロボット掃除機
3位 ディフェンドのスペシャルチケット
参加賞 多機能ボールペン
「ディフェンドって、さっき話してたケーキ屋さんよね?」
「うむ。手に入れるのが難しい筈じゃが良く手に入ったのう?」
「それはもう頑張りました」
女性が今まで遠い目をする。今までの苦労を思い出しているのだろうか。
「他の景品も豪華じゃな。これは参加費も高いのではないか?」
「1人5000Gです」
「思ったよりは高くないわね」
「ですよね?ほんっとうに頑張りましたよ!」
「お主の熱意は分かった。じゃから、顔を近づけるでない」
「あ、失礼いたしました」
女性は恥ずかしそうに私達から離れる。
「それにしてもディフェンドか。……もしかして、キムラ・ホウリという奴が参加者におらんか?」
「ホウリさんですか?勿論、参加者ですよ」
「やはりか」
「だが、ディフェンドのチケットは3位の商品だぞ?」
「あやつなら狙って3位を取る事もできそうじゃな」
「参加者は何人だ?」
「今は30人ですね」
「ふむ、それならチャンスはありそうだな」
クルーズのペアチケットか。真夏の海でロワと2人でクルージング。ロマンチックで距離も縮まりそうだ。
「私も出てみようかな?」
「歌は得意なの?」
「得意と言うほどでもないが、チャンスがあるなら出てみたいと思ってな」
「良いのではないか?」
「当日の参加も可能ですからね。ただし、歌のディスクだけは用意してください」
女性が蓄音機に視線を送りつつ注意してくれる。あれに曲が入ったディスクをセットし、それを流しながらマイクで歌うのか。
「ディスクか。今から用意できるだろうか?」
「ディスクならいくつか持っておるぞ。貸してやろうか?」
「なぜディスクを携帯しているのよ」
「わしのアイテムボックスは無制限みたいなものじゃからな。大抵のものなら持っておる」
無制限のアイテムボックスか。いつも思うが喉から手が出るほどに羨ましい。無制限のアイテムボックスがあれば遠征の時にどれだけ役に立つことか。
「ならばあとで借りるとしよう」
「そうだ。ディスクがあるなら今歌ってみない?」
「今?ここで歌ってもいいのか?」
「はい。丁度調整していたマイクの調子を確かめたかったので」
急な提案に私たちは顔を見合わせる。人通りが少ないとは、いきなり人前で恥ずかしい。
「その、私は遠慮しておくかな」
「だらしないわね。本番はこれ以上の人の中で歌うのよ?」
「そうじゃな。今歌えないのら本番で歌うなんて無理じゃな」
「む、ならお前たちは歌えるのか?」
「わしを誰だと思っておる?ヒートホープの主役じゃぞ?観客の前で歌うなどいつもやっておる」
そういえば劇では歌唱パートもあったな。フランにとっては緊張感なんてないのか。
「クラフは?」
「やると決めたならやるわよ。ミエルも恥ずかしがってばかりだから、ロワ君との関係が変わらないんじゃない?」
「うぐっ、痛い所を突いてくるな……」
それを言われてしまっては、私から言い返すことなんて出来ない。
「……分かった。歌えば良いんだろう?」
「そうこなくてはな。まあ、トップバッターは難しいじゃろうし、わしから歌ってやるか」
そう言ってフランはディスクを取り出した。そのままディスクを蓄音機にセットし、マイクを握った。
「主演の生歌じゃ!ありがたく聞くがよい!」
フランが青空に向かって指を指すと同時に、気分が高揚してくるようなアップテンポの曲が流れ始めた。
「君の瞳に何が見える?私の瞳には未来が見える!」
力強く、確固たる意思が感じられるような歌声に私の身が震える。
「壁がある?ならぶち破っていく!届かない?ならば飛び上がっていく!君も一緒にtry!」
一度聞いたことがあるのに、鳥肌が止まらない。歌唱力もさることながら、表現力もずば抜けている。まるでフランでは無く、別の人間が歌っているような感覚に陥る。
さっきまでは少なかった人通りもフランの歌声に引かれて、徐々に数を増していく。
流石は主演に選ばれるだけはある。
「さあ、君の持っている希望を数えて未来へjump!」
最後のフレーズまで歌いきると同時に、観客からは万雷の拍手が巻き起こる。
そんな中で、さっきの女性はのど自慢大会の告知プレートを必死にお客さんに見せていた。熱意が凄いな。
『うおおおおおお!』
「ありがとー!」
フランは慣れた様子で手を振って観客に応え、私たちのもとへと帰って来た。
「まあ、ざっとこんなものかのう?」
「凄すぎて、この後歌おうとは思えないな」
「間違いなくハードルは上がったわね」
「恥ずかしさに慣れるためには、これくらいが丁度いいじゃろ?」
「さては分かっててやったな?」
「どうかのう?」
フランがとぼけたように肩をすくめる。なんだか、ホウリのようなやり口だ。長く一緒にいて思考回路が似て来たか?
「失礼なことを考えておらんか?」
「そんなこと無いぞ。そんなことより、フランが持っているディスクを見せてくれ」
「うむ」
フランから何枚かディスクを受け取り曲名を確認する。予想はしていたが劇中歌が多いな。私が歌えそうなものはないものか。
お、『海の底の物語』か。これなら私にも歌えるな。
「決まったか?」
「ああ。行ってくる」
ディスクを蓄音機にセットし、マイクの前に立つ。
『お?今度は姉ちゃんが歌うのか?』
『がんばれー!』
マイクの前に立つと、色んな視線が私に注がれる。私は恥ずかしいという気持ちを堪えて、大きく息を吸う。
ここで歌えないなら本番で歌える訳がない。今こそ勇気を出すんだ!
海を思わせるような爽やかなイントロの後、私は決死の覚悟で歌い出した。
☆ ☆ ☆ ☆
色んなことが起こったから結果から説明しよう。
私の歌を聞いた観客は皆一様に倒れ伏し、憲兵が出動するまでになった。憲兵にはフランやクラフが説明し、私はお咎めなしになった。
マイクや蓄音機も壊れてしまったが、フランが直して事なきを得た。
そして、私は料理に続いて歌うことも禁止されたのだった。
「それで、なんでわしらがお主の洋服を選ばねばならん?」
「私は服のセンスが無いからな。2人に選んで貰いたいのだ」
「そうなの?意外ね?」
「わしからしたら意外ではないがな」
そう、この2人と街を歩いている理由は、ロワとのお祭りのために洋服を選んで貰うためだ。
「それにしても、やっぱりミエルはロワ君のことが好きなのね」
「そんなに分かりやすいか?」
「そうね。分からないのなんてロワ君ぐらいなんじゃない?」
「その言葉も何回も聞いた」
こんなに分かりやすいと、自分自身で秘密をバラまいている気分だ。
「どうすれば顔に出ないように出来るだろうか」
「ホウリに教えて貰えればよいのではないか?」
「それも考えておくか」
何を対価に要求されるのか分かったものではないから、最終手段だな。
「そういえば、ホウリを含めた男どもはどこに行ったんだ?」
料亭から出発するころにはいなくなっていた。いったい何処に行ったんだろうか?
「ロワとジルとロットは冒険者ギルドで戦っておる。ホウリはやる事があると言って何処かに消えた」
「あの可愛い子は?」
「ノエルなら王都に戻った。お祭りに友達を誘いたいんじゃと」
「ノエルらしいな」
雑談しながら街を歩いていると、空の屋台が目につく。空の屋台ではお祭りで売るものを店員が準備していた。全員顔が晴れ晴れとしていて、お祭りに対するワクワク感が伝わってくる。
お祭りの準備は着々と進んでいるみたいだ。
「お祭りはどんな屋台が出るのかしら?」
「色々じゃよ。食い物も美容品も工芸品も、無いものを探すほうが難しいくらいじゃ」
「フランちゃんはオダリムのお祭りに来たことがあるの?」
「1年前にホウリと一緒にな」
「その時は何したの?」
「絶対に勝てんイカサマゲームをホウリが打倒したり、高級スイーツ店でクレーマーを半殺しにしたり、不正をしていたスイーツ店をぶっ潰したりとかじゃな」
「……なんだって?」
「詳しく話すとじゃな──」
フランから1年前のお祭りのことを聞きつつ、店に向かう。
「───そんな感じじゃな」
「あいつはオダリムに来て2週間で、そんなことまでやっていたのか」
「ホウリじゃしな」
正確にはこの世界に来て2週間だった筈だし、更に非常識さが増したな。
「私はホウリって人をあまり知らないんだけど、今の話でなんとなく分かったわ」
「ホウリの頭おかしいエピソードはまだまだあるぞ。聞きたいなら暇な時に話してやる」
「もうお腹いっぱいだから遠慮しておくわ」
油ものを大量に食べたような顔で、クラフは首を横に振る。
「気持ちは分かるがな」
「たまには普通の手段を取って貰いたいものだ……なんだあれは?」
私は遠くの噴水のある広場で女性が何かを調整していた。よく見ると、それはスタンドマイクだった。
「なんで道にスタンドマイクが?」
「去年はあんなもの無かったぞ?」
「少し見てみましょうか」
漫才でもやるのだろうか?そう思いつつ、スタンドマイクを見ていると女性が私達に気が付いて近づいてきた。
「あの、何か御用でしょうか?」
「何か用がある訳では無い。ただ、なぜスタンドマイクがこんな所にあるのか気になってのう」
「これは、お祭りに開催するのど自慢大会のマイクなんですよ」
「のど自慢?」
お祭りにのど自慢?聞いたことが無いな?
フランも同じ気持ちなのか首を傾げている。
「のど自慢なんて去年はあったか?」
「今年から開催することになったんですよ。優勝賞品も豪華なんですよ」
そう言って、女性は優勝賞品が書かれたパネルを見せて来た。
1位 ペアクルーズチケット
2位 最新ロボット掃除機
3位 ディフェンドのスペシャルチケット
参加賞 多機能ボールペン
「ディフェンドって、さっき話してたケーキ屋さんよね?」
「うむ。手に入れるのが難しい筈じゃが良く手に入ったのう?」
「それはもう頑張りました」
女性が今まで遠い目をする。今までの苦労を思い出しているのだろうか。
「他の景品も豪華じゃな。これは参加費も高いのではないか?」
「1人5000Gです」
「思ったよりは高くないわね」
「ですよね?ほんっとうに頑張りましたよ!」
「お主の熱意は分かった。じゃから、顔を近づけるでない」
「あ、失礼いたしました」
女性は恥ずかしそうに私達から離れる。
「それにしてもディフェンドか。……もしかして、キムラ・ホウリという奴が参加者におらんか?」
「ホウリさんですか?勿論、参加者ですよ」
「やはりか」
「だが、ディフェンドのチケットは3位の商品だぞ?」
「あやつなら狙って3位を取る事もできそうじゃな」
「参加者は何人だ?」
「今は30人ですね」
「ふむ、それならチャンスはありそうだな」
クルーズのペアチケットか。真夏の海でロワと2人でクルージング。ロマンチックで距離も縮まりそうだ。
「私も出てみようかな?」
「歌は得意なの?」
「得意と言うほどでもないが、チャンスがあるなら出てみたいと思ってな」
「良いのではないか?」
「当日の参加も可能ですからね。ただし、歌のディスクだけは用意してください」
女性が蓄音機に視線を送りつつ注意してくれる。あれに曲が入ったディスクをセットし、それを流しながらマイクで歌うのか。
「ディスクか。今から用意できるだろうか?」
「ディスクならいくつか持っておるぞ。貸してやろうか?」
「なぜディスクを携帯しているのよ」
「わしのアイテムボックスは無制限みたいなものじゃからな。大抵のものなら持っておる」
無制限のアイテムボックスか。いつも思うが喉から手が出るほどに羨ましい。無制限のアイテムボックスがあれば遠征の時にどれだけ役に立つことか。
「ならばあとで借りるとしよう」
「そうだ。ディスクがあるなら今歌ってみない?」
「今?ここで歌ってもいいのか?」
「はい。丁度調整していたマイクの調子を確かめたかったので」
急な提案に私たちは顔を見合わせる。人通りが少ないとは、いきなり人前で恥ずかしい。
「その、私は遠慮しておくかな」
「だらしないわね。本番はこれ以上の人の中で歌うのよ?」
「そうじゃな。今歌えないのら本番で歌うなんて無理じゃな」
「む、ならお前たちは歌えるのか?」
「わしを誰だと思っておる?ヒートホープの主役じゃぞ?観客の前で歌うなどいつもやっておる」
そういえば劇では歌唱パートもあったな。フランにとっては緊張感なんてないのか。
「クラフは?」
「やると決めたならやるわよ。ミエルも恥ずかしがってばかりだから、ロワ君との関係が変わらないんじゃない?」
「うぐっ、痛い所を突いてくるな……」
それを言われてしまっては、私から言い返すことなんて出来ない。
「……分かった。歌えば良いんだろう?」
「そうこなくてはな。まあ、トップバッターは難しいじゃろうし、わしから歌ってやるか」
そう言ってフランはディスクを取り出した。そのままディスクを蓄音機にセットし、マイクを握った。
「主演の生歌じゃ!ありがたく聞くがよい!」
フランが青空に向かって指を指すと同時に、気分が高揚してくるようなアップテンポの曲が流れ始めた。
「君の瞳に何が見える?私の瞳には未来が見える!」
力強く、確固たる意思が感じられるような歌声に私の身が震える。
「壁がある?ならぶち破っていく!届かない?ならば飛び上がっていく!君も一緒にtry!」
一度聞いたことがあるのに、鳥肌が止まらない。歌唱力もさることながら、表現力もずば抜けている。まるでフランでは無く、別の人間が歌っているような感覚に陥る。
さっきまでは少なかった人通りもフランの歌声に引かれて、徐々に数を増していく。
流石は主演に選ばれるだけはある。
「さあ、君の持っている希望を数えて未来へjump!」
最後のフレーズまで歌いきると同時に、観客からは万雷の拍手が巻き起こる。
そんな中で、さっきの女性はのど自慢大会の告知プレートを必死にお客さんに見せていた。熱意が凄いな。
『うおおおおおお!』
「ありがとー!」
フランは慣れた様子で手を振って観客に応え、私たちのもとへと帰って来た。
「まあ、ざっとこんなものかのう?」
「凄すぎて、この後歌おうとは思えないな」
「間違いなくハードルは上がったわね」
「恥ずかしさに慣れるためには、これくらいが丁度いいじゃろ?」
「さては分かっててやったな?」
「どうかのう?」
フランがとぼけたように肩をすくめる。なんだか、ホウリのようなやり口だ。長く一緒にいて思考回路が似て来たか?
「失礼なことを考えておらんか?」
「そんなこと無いぞ。そんなことより、フランが持っているディスクを見せてくれ」
「うむ」
フランから何枚かディスクを受け取り曲名を確認する。予想はしていたが劇中歌が多いな。私が歌えそうなものはないものか。
お、『海の底の物語』か。これなら私にも歌えるな。
「決まったか?」
「ああ。行ってくる」
ディスクを蓄音機にセットし、マイクの前に立つ。
『お?今度は姉ちゃんが歌うのか?』
『がんばれー!』
マイクの前に立つと、色んな視線が私に注がれる。私は恥ずかしいという気持ちを堪えて、大きく息を吸う。
ここで歌えないなら本番で歌える訳がない。今こそ勇気を出すんだ!
海を思わせるような爽やかなイントロの後、私は決死の覚悟で歌い出した。
☆ ☆ ☆ ☆
色んなことが起こったから結果から説明しよう。
私の歌を聞いた観客は皆一様に倒れ伏し、憲兵が出動するまでになった。憲兵にはフランやクラフが説明し、私はお咎めなしになった。
マイクや蓄音機も壊れてしまったが、フランが直して事なきを得た。
そして、私は料理に続いて歌うことも禁止されたのだった。
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