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本編
タールス侯爵家
しおりを挟む「く、くくっ……ははは……!!
あぁ、あぁやっとだ。
あの女も最後にこの私に利用されるのだ。
さぞかし嬉しいことだろうな!」
私は自らの計画の完璧さに、何度目かになる笑いをあげる。
そう、全ては私が王となるために何年も前から計画してきたのだ。
王子が廃嫡されれば次代の王となる者は公爵家から選ばれることになる。
その筆頭として名があがるのは間違えなく、あのエリス・フォーリアだと確信していた。
なにせ、あのフィーリン商会の会頭を務めあげるその手腕に加え、幼い頃から王妃教育を受けてきたのだから。
「私があの女の伴侶となれば、私が次の王となるのだ!
王の座に加え、あの女もついてくるのだから、待って良かったというものだ」
あの女、エリス・フォーリアも手に入れるために、ラミアとかいう知能の無い者まで利用したのだ。
あとは、現王を亡き者にすれば良いだけだ。
そうすれば、エリス・フォーリアに加え、私の元に王座が転がりこんでくるのだ。
「……はぁ、ここまでのクズだったとは。
エリス様に害をなす奴を我らが黙っているとでも思っているのか?」
「なっ……誰だ!
なぜここに……おい!
兵たちは何をやっている!!」
背後から声が聞こえ振り向くと、そこに黒い布で口元を隠した男が、見下した目で立っていた。
全く、使えぬ兵共め。
一体何をしているのか。
こんな奴を私の部屋まで入れるなど……。
「アンリ様、こちらは終了致しました」
「えぇ、こちらもすぐに終わらせます。
ハーネス様より、エリス様に仇なすと判断すれば始末しても良いとのことでしたから。
早々に終わらせ、エリス様の元へ向かわなければなりませんから」
「な、何を言っている!
おい、誰か!
誰かいないのか!
……なぜ誰も来ない!」
男の他にもう一人、女が増えた。
声を張り上げ、叫ぶものの誰もくる気配はしなかった。
何故だ、何故誰も来ないのだ!
此奴らを始末した後は兵共を始末しなければならないらしい。
全く使えぬ者どもめ。
「誰も来るわけないだろう。
皆、眠っているのだから。
あぁ、それと随分興味深いことを言っていたな。
お前が、エリス様の伴侶となり王となるだと?
お前のような輩が我等が主たるエリス様の伴侶となれるはずがないだろう。
エリス様の伴侶となる者はそれ相応の地位と力がなければいけないのだから」
男は女への丁寧な対応とは変わり、見下すような口調と目をして近付いてくる。
「なっ……貴様!
この私を誰と心得るか!
私は侯爵なのだぞ!
貴様のような愚民が私に近付いて良いとでも思っているのか!」
そう、そうだ。
私は侯爵なのだ。
侯爵にただの愚民が手を出せるはずがないのだから怯える必要などないのだ。
「……どうやら、状況を理解出来ていないらしい。
それと、喚き散らすな。
安心しろ、私は優しいからな。
すぐに終わらせてやる」
その瞬間、男の姿が目の前から消えた。
そして……。
「……さぁ、ハーネス様に報告をしてエリス様のもとへ向かうとしましょう。
私達のここでの仕事はもう終わりましたから。
あぁ、他の班の者も撤退させなければなりませんね」
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