王族なんてお断りです!!

紗砂

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「エリス様、あの方とレストは順調にこちらへと向かってきているそうです」


ハーネスから報告を聞き、私は少し考えた後、答えを出しました。



「分かりました。
では、人質の解放を急ぐようにお願いします。
そのために必要であるのならば、何をどれだけ使おうとも構いません。
それにより、フィーリン商会の立場が悪くなるというのであれば、それで良いでしょう。
あなた達がいれば何度でも立て直すことは可能ですから。
お願いします、ハーネス」

「はっ、エリス様のご期待に添えるよう、全力でやらせていただきます」

「えぇ。
それともう1つ。
皆に伝えてください。
この件が早く終わるようであれば、皆でどこか落ち着いた場所へ行きましょう、と」

「承知致しました。
では、すぐに終わらせ戻ってきます」


これで人質の件は問題ないでしょう。
しばらく休みもありませんでしたから休みを……と言えば早く終わらせようとするでしょうから。

残る問題は、人質となった方の心のケア、でしょうか。
ミリスさんとシャールの2人ならば大丈夫だとは思いますが、やはり心配です。
アリスがいれば確実なのでしょうが、アリスには休んで貰いたいのですから。


「エリス、いた!
もうさ、何この使用人たちの重装備。
何かあったの?」


ルアンが帰ってきたようです。
ただ、帰ってきて早々詰め寄ってくるのはやめてもらいたいものですが。

私は、帰ってきたばかりのルアンに、事の顛末を全て隠すことなく話すと、ルアンは嫌そうに顔を歪めました。


「何それ。
エリスの婚約者を奪っただけじゃ足りないってこと?
ふーん、そっか。
そういうことなら僕も参加させてもらうよ」


珍しく、ルアンが参加することにしたようです。
どういう心境の変化なのでしょうか?
こういったことには参加しないとばかりに思っていたのですが。


「さすがに、何度も僕の大切な従姉を傷付けようとされるっていうのはね。
それに、今回はエリスだけじゃないようだし。
あと、付け加えるとしたら、フォーリア家の人って、やりすぎそうだから一人くらいは歯止めになる人が必要かなって思ってね」


……何も言い返せませんね。
多分、私は今苦笑しているでしょう。
そう思う程、ルアンの言葉に納得してしまいました。
確かに、フォーリア家の人間は自重というものも知りませんし、『やるならば徹底的に』と幼い頃から教わるほどの家ですから。
まぁ、その教えがフィーリン商会をトップにまで押し上げてくれたのですが。


「じゃあ、僕は行ってくるよ。
はぁ……止められるかなぁ……」


自分で口にしておきながらもやはり、気が重いようで、溜息をついていました。
ですが、ここはルアンに頑張って貰わなければ困ります。
そうでなければ、絶対にやりすぎた結果になると断言出来ますから。
そうなると大変なのはルアン達の方ですから。


「やっぱフレイ、呼ぼうかな……」


扉を開けた際、走っていった一人の使用人の姿を見て、ルアンがそんなことを呟きました。
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