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本編
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しおりを挟むそして夜会の日、私はアルのエスコートにより登城しました。
「エリス、よく似合っている」
「ありがとうございます、アル」
私がお礼を口にして微笑むと、アルは嬉しそうに口角を上げました。
ですが、私としてはアルがエスコートを断ったという王女が気になります。
「アルは、王女殿下のことをよく知っているのですか?」
「あぁ、妹のような奴だ。
よく懐いていたよ」
それは、はたして本当にアルの思っている通りなのでしょうか。
とてもそうは思えないのは何故でしょうか。
いえ、アルがそう言うのですからその通りなのでしょう。
ですが、それでも不安にかられるのは何故なのでしょうか?
「エリス、どうした?
大丈夫か?
体調が優れないのならば休んでいるといい」
心配そうに私を見つめるアルに、申し訳なく思えました。
体調が悪いわけではなく、ただ不安だったというだけでしたから。
「いえ、問題ありません。
ただ、少し緊張してしまって」
不安と言わなかったのは、要らぬ心配をかけたくなかったからです。
きっと、アルは過剰なまでに心配するでしょうから。
それが分かっていて口にするようなことはしません。
「そうか、なら良いが。
そんなに気負う必要もない。
いうも通りのエリスでいいさ」
「はい」
不安は残りますが、私は何事もなく終わることを祈りながら、アルにエスコートされ会場入りをしました。
「あっ、エリス姉様、お久しぶりです!
そのドレス、凄く似合っています」
会場入りしてすぐ、話しかけてきたのはアルの弟である、エリック殿下でした。
眩しい程の笑顔を浮かべているエリック殿下にはまだ婚約者は居ないそうです。
ですが、なんとなくエリック殿下の婚約者となる方は苦労しそうな気がします。
「ありがとうございます、エリック殿下。
エリック殿下も大変可愛らしいと思います」
思わずそう口にしてしまいましたが、エリック殿下は不満そうです。
確かに、殿方に可愛らしいという言葉はあまり良くはありませんでした。
「可愛いよりカッコイイがいいです」
少しムッとしたように口にするエリック殿下はやはりカッコイイというよりも可愛らしいや可憐というような気がします。
「大きくなれば、カッコイイと言われるようになるさ、エリック。
だから今は諦めろ」
アルがそう慰めますが、エリック殿下は納得していない様子です。
「アルもエリック殿下と同じくらい可愛いと思いますから、気にする必要はないと思います」
アルはすぐに顔を赤くしたり、取り乱したりと可愛らしいところがあります。
エリック殿下のことを言っていますが、どちらも同じくらい可愛らしいと思いますから。
「おい、待て。
私とエリックが同じくらい可愛いとはどういうことだ。
エリックのことは認めるが、私は可愛いという柄ではないのだが」
「私から見れば、ですが。
たまに、クリームを口元に付けている時もありますし」
「それはっ、エリスのケーキが美味しすぎるんだ。
それに、一度も教えてくれなかったじゃないか」
「可愛らしかったのでつい。
次からは気をつけるように致します」
「あぁ、そうしてくれ」
少し恥ずかしそうに言うところも十分可愛らしいのですが。
それは私の胸だけに秘めておくことにしましょう。
ですが、私のケーキが美味しいと言われたのは嬉しかったです。
「兄様もエリス姉様には敵わないのですね。
いつも余裕のあるようなところしか見てこなかったので新鮮です」
「そうだったのですか?」
「エリスが可愛いのが悪いんだ。
余裕もなにもなくなる。
エリックもいつか分かるさ」
アルの耳が赤く染まっているのはご愛嬌ということでしょう。
ただ、私が可愛い、というのは理解出来かねますが。
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