王族なんてお断りです!!

紗砂

文字の大きさ
上 下
42 / 70
本編

35

しおりを挟む


城へ入ると、私とアリスはそのまま中庭へと通されました。


「紹介します。
彼女は……」


中庭に着くなり、アルは私を陛下達へと紹介しました。


「エリス・フォーリアと申します。
彼女は、フィーリン商会本店の代表を務める、アリスです。
今回は、フィーリン商会の新作である木苺のタルトをお持ちさせていただきましたのでよろしければお召し上がりください」


私は自己紹介を程々にしてフィーリン商会の宣伝に移りました。
王妃殿下はフィーリン商会のケーキを気に入られているそうなので必要あるかどうかは分かりませんが。


「まぁ、新作!
それもタルトだなんて!」


王妃殿下には喜んでいただけたようですね。


「エリスが作ったのか?」

「はい。
まだレシピを作成していませんでしたので私が作らせていただきました」


レシピを書き留めてあれば他の者に作ってもらったのですが、まだレシピを書き留めていませんでしたから私が作るしか無かったのです。
王妃殿下や陛下に私の作ったものを食べていただくのは少々思い悩みましたが。


「アリス、お願いします」

「承知致しました」


アリスは私の言葉を聞き、タルトの入った箱を開け、切り分けます。


「紹介が遅れたが、母上と父上、そして弟のエリックだ」

「ガイナス・エリンスフィールだ。
アルスの父として気楽に頼む」

「先程は申し訳ありませんでした。
私は、ソフィア・エリンスフィールです。
よろしくお願いしますね、エリスさん」

「エリック・エリンスフィールと申します。
えっと、よろしくお願いしますエリス姉様」


アルの家族は思っていたよりもラフな方々のようです。
陛下や王妃殿下は朗らかで妙な安心感を与えてくださいます。
そのおかげなのかは分かりませんが、緊張が解れました。

アルの弟のエリック殿下はアルとルアンを足して二で割ったような雰囲気がします。
ですが、私には兄妹がいなかったので姉様と呼ばれるのは新鮮で嬉しい気もします。


「それはそうと、私とエリスの婚約の件ですが認めてくれるのでしょうか?」

「あぁ、そのことならば好きにすればいい。
ただし、婚約発表の時期はエリス嬢の家族と話し合って決める。
それと、王妃教育についてだが」

「エリスさんさえ良ければすぐにでも始められます」


思っていたよりも話は進んでいたようです。
ですが、王妃教育ですか。
分かってはいましたがあまりやりたいものではありませんね。
避けることは出来ないというのは理解していますが。
それに、キース様のための勉強ではなく、アルのためだと思えば大分マシになります。


「私はいつからでも問題はありません」

「じゃあ、早速明日からやりましょうか」

「はい、お願い致します」


明日から、ですか。
問題はありませんが、まさかこんなにも早いとは思っていませんでした。
とはいえ、今までと変わりありませんし、時間が少々変わるくらいでしょう。
それに、今まで受けてきた教育も無駄にはならないでしょうから。


「母上、どのくらいの時間までやるのですか?」

「それは、エリスさん次第ですね。
エリスさんは、この国の貴族家とその領地はどの程度まで知っていますか?」


王妃殿下からそんな質問をされました。
確か、夜会の日にルアンからも似たようなことを聞かれましたね。


「お爺様から一通りのリストはいただきましたが、そちらのリストに乗っていない貴族家などは分かりかねます。
あとは、フィーリン商会を懇意にしていただいている方達であれば問題ありません」

「あの者の作ったリストであれば問題ないだろう。
ふむ、そうだな。
最北の地を治める貴族は分かるか?」


エリンスフィールの最北の地、といえばレスニール砦のあるトリスタン領ですね。
そして、その地を治める領主は昨年に変わったと聞きました。
そして今の領主の名、それは


「リザルト・エーミリオン伯爵だと記憶しています。
なんでも、珍しい鉱物が多いと聞いております」

「ほう、最近変わったばかりだが、よく知っているものだ」


陛下は感心したように、そう口にしました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

今更何の御用でしょう? ウザいので止めて下さいませんか?

ノアにゃん
恋愛
私は3年前に幼馴染の王子に告白して「馬鹿じゃないの?」と最低な一瞬で振られた侯爵令嬢 その3年前に私を振った王子がいきなりベタベタし始めた はっきり言ってウザい、しつこい、キモい、、、 王子には言いませんよ?不敬罪になりますもの。 そして私は知りませんでした。これが1,000年前の再来だという事を…………。 ※ 8/ 9 HOTランキング 2位 ありがとう御座います‼ ※ 8/ 9 HOTランキング  1位 ありがとう御座います‼ ※過去最高 154,000ポイント  ありがとう御座います‼

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄、爵位剥奪、国外追放されましたのでちょっと仕返しします

あおい
恋愛
婚約破棄からの爵位剥奪に国外追放! 初代当主は本物の天使! 天使の加護を受けてる私のおかげでこの国は安泰だったのに、その私と一族を追い出すとは何事ですか!? 身に覚えのない理由で婚約破棄に爵位剥奪に国外追放してきた第2王子に天使の加護でちょっと仕返しをしましょう!

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

小倉みち
恋愛
 7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。  前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。  唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。  そして――。  この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。  この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。  しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。  それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。  しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。  レティシアは考えた。  どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。  ――ということは。  これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。  私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。

処理中です...