34 / 70
本編
27
しおりを挟む晩餐用のドレスに着替えると、丁度外にエンドルース家の馬車が止まったのが見えました。
「お嬢様、お客様がお見えになりました」
「えぇ、今行きます」
私は下へ降りていくと、エンドルース家の者だけではなく、ルースベル家の方々もいらっしゃっていました。
「ようこそおいでくださいました。
既に準備は出来ております。
こちらへどうぞ」
「エリス嬢、ここには我らしかいないのだ。
そう固くならずとも良い」
「何れ、我等が王となるのだからな」
現公爵のお二人はまるで、私が王となることが決定しているかの様な口ぶりで言いました。
どうにも話が通じませんね。
私はお二人には毎回、王となるつもりはないと言っていたと思うのですが。
「エリス、久しぶりだな」
「ラルフ……久しぶりですね。
元気そうで何よりです」
「エリスこそ、大丈夫で良かった。
あいつ、バカだとは思ってたけどここまでだとは思ってなかったぞ。
まさか、エリスと婚約しておきながら、破棄を宣言するなんてな……。
俺があの場にいたなら絶対ぶん殴ってたのに……」
キース樣も、ラルフにバカと言われるとは……。
いえ、それよりもラルフです。
「一応、あの時点では王族だったのですから殴ってしまえば罪に問われますよ」
ラルフはそこまでしないと思いますが。
「そうだな、ラルフ。
やるならやるで社会的にやれ。
物理的にやるだけだと生温いだろう」
「あー、そっか。
それもそうだな。
んじゃ、フレイが社会的にやった後で俺が物理的にやるってのは?」
「ならいいだろう」
「全くもって良くないと思うのですが」
この幼馴染達は、私に甘いと常々思うのです。
ですが、それはどう考えてもやりすぎでしょう。
社会的にも物理的にもやっていいのは貴族のみです。
平民に落ちたキース様にそんなことをしてしまえば、奴隷落ちになる前に死んでしまう可能性だってあります。
「せめて、奴隷落ちまでです」
「えー、それ物理的に出来なくね?」
「物理的にと言いますが、ラルフがやれば殺しかねませんから」
「え、そのつもりだったんだけど」
「駄目です」
この二人を止めてくれる人は居ないのでしょうか?
……公爵方も、笑って見ていないで自分の子供を止めていただきたいのですが。
私のその想いが通じたのか、公爵方はお二人を止めました。
「エリス嬢のいないところでやりなさい、フレイ」
「ラルフもだ。
エリス嬢に仕えるのならばそれくらいやらぬか」
「はい、父上」
「分かった」
……私が止めて欲しかったのは、私の前でやることではなく、キース様を殺さないこと、なのですが。
……晩餐が始まる前にも関わらず、疲労感が溜まったきがします。
ですが、そうですね。
私の前でやらない限りは知らぬ存ぜぬで通せることですしいいとしましょうか。
これ以上やっては、私の身が持ちそうにありませんから。
0
お気に入りに追加
4,319
あなたにおすすめの小説
モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?
乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました
雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた
スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ
この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった...
その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!?
たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく
ここが...
乙女ゲームの世界だと
これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話
[復讐・ざまぁ・ラブコメ短編集]気弱な王妃の逆行転生 ~王に捨てられた王妃は10代の令嬢に戻り運命をやり直す~ 他
小豆このか@大人の女性向け連載
恋愛
女性向けの異世界・現代恋愛等の短編集です。稀に男主人公もありますし、ファンタジー・コメディ作品もあります。
妹の身代わりとされた姉は向かった先で大切にされる
桜月雪兎
恋愛
アイリスとアイリーンは人族であるナーシェル子爵家の姉妹として産まれた。
だが、妹のアイリーンは両親や屋敷の者に愛され、可愛がられて育った。
姉のアイリスは両親や屋敷の者から疎まれ、召し使いのように扱われた。
そんなある日、アイリスはアイリーンの身代わりとしてある場所に送られた。
それは獣人族であるヴァルファス公爵家で、アイリーンが令息である狼のカイルに怪我を負わせてしまったからだ。
身代わりとしてやった来たアイリスは何故か大切にされる厚待遇を受ける。
これは身代わりとしてやって来たアイリスに会ってすぐに『生涯の番』とわかったカイルを始めとしたヴァルファス家の人たちがアイリスを大切にする話。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
番と言えばなんでもかなうと思っているんですか
ぐう
恋愛
この大陸一強大なキルンベルガー王国の始祖は竜人だ。
番を求めて異世界からやって来て、番の気配を感じて戦乱の大陸に舞い降りた。
番の人間の乙女を得た始祖は、強大な魔力で魔法を操り、魔物を追払い、戦乱の世を治めて、王国を建立した。
人間と婚姻を結んで、子供を得ても、子孫達に竜人の性質は受け継がれて番を求める。
番を得れば、一生番だけ愛して、浮気もないーーーーーとてもいいことのようだがーーーー本当に?ーーーー
転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します
真理亜
恋愛
気合いを入れて臨んだ憧れの第二王子とのお茶会。婚約者に選ばれようと我先にと飛び出した私は、将棋倒しに巻き込まれて意識を失う。目が覚めた時には前世の記憶が蘇っていた。そしてこの世界が自分が好きだった小説の世界だと知る。どうやら転生したらしい。しかも死亡エンドしかない悪役令嬢に! これは是が非でも王子との婚約を回避せねば! だけどなんだか知らないけど、いくら断っても王子の方から近寄って来るわ、ヒロインはヒロインで全然攻略しないわでもう大変! 一体なにがどーなってんの!? 長くなって来たんで短編から長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる