王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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会議も無事終わり、本店の移動についての話が決まった頃、私は自分の問題を突きつけられていました。

婚約者問題です。
今の私であれば、大抵は婚約出来るでしょうし、婚約の話も来ています。
ですが、そのうちの大半がフィーリン商会と公爵という権力が目的です。
そういった人達をどう落としていくか、それが問題です。


「はぁ……気が重いですね」

「お嬢様、休憩したらどうですか?」

「えぇ、これが終わったら休憩します」

「……お嬢様、さっきもそう言っていましたよ!」


ルエルがツッコミますが、早めに絞っておかねば後々大変になるでしょうし、面倒事は早めに片付けてしまいたいですから。


「殿下も、明日には来る頃ですし……早く終わらせないといけませんからね」


殿下の対応もしなければなりませんから。
どうせ、どこかのバカ王子が呼んだのでしょうが、あの能無……バカ王子が対応などするはずがありませんから。


「お嬢様、他の公爵家の当主の方がいらっしゃっていますが……どうしますか?」

「……アポは?」

「ありません」


……公爵家の方々ならば、アポイントくらいとって欲しかったのですが。
とはいえ、公爵家の方々を放置する訳にもいきませんし……仕方ありませんね。


「皆様は?」

「客間にいらっしゃいます」

「すぐに行きます。新作のケーキとお茶をお出ししてください」

「承知致しました!」


ルエルが私の言葉に従い、部屋を出て行くと、私も客間に向かいます。


「エリス様、お一人で行くおつもりですか?」

「……ハーネス」

「私もご一緒します」


心配性のハーネスが着いてくることになりました。
特に問題はありませんし、有難いですが。


「お待たせ致しました、皆様。
本日は、どのようなご要件でしょうか?」


三公家、財政、商業を生業なりわいとする、フォーリア家、政策、政治を生業とするルースベル家、そして戦闘、軍事を生業とするエンドルース家。
その三つの公爵家がこうして集まるのは何年ぶりでしょうか?


「エリス嬢、いきなり押しかけて済まない。
だが……」

「次の王の件でしょうか?」

「……あぁ」


エンドルース家はともかく、ルースベル家はそれ以外に考えられません。
お父様に、というならまだ分かりますが、私にとなるとその件かフィーリン商会のどちらかとなりますから。


「申し訳ありませんが、私はどちらかの家を支援する、というようなことは致しません」


そのようなことをする訳にはいきませんから。
私が動かせる範囲だとフィーリン商会となりますが、あの商会は、大きくなりすぎましたし。


「それは当然だろう」

「儂としては、エリス嬢が……と思っているのでな。エンドルース家は降りる」

「ルースベル家もだ。というわけで、自然とエリス嬢がということになる」

「……はい?」


……耳がおかしくなったのでしょうか?
何故、私が?
というよりも、何故エンドルース公爵家もルースベル公爵家も降りるのですか。
私も降りるつもりなのですが?


「私は、商会等がありますのでお断りさせていただきます」

「すまんのぅ……。既に、陛下に進言済みだ」

「陛下からも、快く了承を得られたぞ」

「……お父様はなんと」

「フォーリア公爵は王宮で気絶しているよ」


……お父様は現実逃避(気絶)をしたようです。
自分一人だけ逃げるなど……。
いえ、それよりもです。
なぜ私が王と言う話に?


「……私が、となればこの国初の女王となります。
そうなれば確実にこの国は……」

「エリス嬢、あなたが思っている程、我らは落ちぶれていない。
あなたが王となるのであれば、我らは全力で支えましょう」

「ですから私は、そのような立場になるつもりはないと言っているのです。
私は支える方が向いていると自覚がありますから」


王なんてそんな面倒事はお断りです。
なんのために王族を避けてきたと思っているのですか。
私はフィーリン商会の甘味を広められたらそれでいいのですが。


「……エリス嬢、あなた以外に居ないのだ」

「なぜ、そこまでして私を王にしたいのですか?」

「私の息子は頭が固くてな……。宰相にはなれるだろうが、そこまでだ。
とてもではないが、王など勤まらんよ」

「儂の息子は脳筋だからな。
王なんぞになったらこの国が滅びる。
本人も王より騎士を希望しているしな」


……お二人の息子を知っているからこそ、何も言い返せません。
確かに、その通りになってしまうという確証がありました。
これは、どうやっても押し付けられる形では?


「……待ってください。
そうなると、私の婚約者はどうなるのですか?」

「それは別に、他国からでも侯爵家からでもいいと思うが?」


全くよくありませんね。
今まで考えていた婚約者の候補を全て考え直さなければいけなくなります。
……やはり、王は無しですね。


「そういえば、近々エリンスフィールの王子が来るそうではないか」

「……確かに、そういうお話もありますが」


何を言うつもりなのか分かってしまいました。
……決して認めたくはありませんが。


「ふむ、そうだな。
よし、今日のところは帰るとしようではないか」

「そうだな。では、また来る」


もう来なくてよろしいのですが。
というより、もう来ないでいただきたいのですが。
何より、私の精神面の安全のために。


まぁ、言っても聞かなそうな方々ですが。
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