王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

14

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暫しの休憩を終え、私が部屋を出ると、既にハーネスとルーファスの二人が揃っていました。


「エリス様、もう少しでニールが戻って来るようです」

「そうですか……。
では、それまで溜まった仕事をやります。
その後は予定通りでお願いします」

「承知致しました」


……やはり、二人は護衛というよりも従者といった方が合っている気がしますね。

というわけで、溜まっている仕事をこなしていると、ニールが戻って来ました。
意外と時間がかかったのは、他の噂も広めていたからでしょう。


「ニール、お疲れ様です」

「とりあえず、商人と噂好きの王宮の侍女を中心に広めてみました。
あっ、それと手紙を預かってます」


……王宮の侍女にどうすれば広められるのでしょうか?
まさか、忍び込んだりは……いえ、そんなはずはありませんね。
きっと、外に出てきた方に聞こえるように、といった風でしょう。

そう思いたいです。

それと、手紙は誰から……殿下でした。
エリンスフィールにいる、あの殿下です。
……見るのは後にしましょう。


「ニール、休憩を……と言いたいところですが……」

「分かってます。
どの束をやればいいですか?」


ニールには申し訳ありませんが、支店の責任者ですしこの書類の処理は問題ないでしょう。
私は、自分のところにある書類の束のうち約三分の一をニールに任せると、先程よりも急ぎ処理していきます。


予定より、一時間程早く終えた私達は次の予定までゆっくりとお茶をすることにしました。


「エリス様、殿下からのお手紙は読まなくて大丈夫なのですか?」

「……逃げてばかりいるわけには行きませんね」


渋々、私は殿下からの手紙を開けました。


『私も近々、エールへと向かうことになった。
宿を取るつもりでいるのだが、どこかいい宿を紹介してはもらえないだろうか?』


という文に、私は固まりました。
近々、ということは既に向かって来ていると言うことでしょう。
ならば、そう時間はありません。

そして、何故宿を……などとは言いません。
理由は分かっていますから。
何かあった時、他国の城だと自由に動けませんから。
自身の防衛のため、ということなのでしょう。


「ニール、今すぐにこの国の王都で貴族が泊まる宿をピックアップしてください!
爵位は出来るだけ上の者……そうですね、公爵家以上でお願いします!
ルーファスも、ニールを手伝うようにしてください!」


 不味いですね、あと数日しかありませんが、それで宿が取れるのか……。
私は便箋を取り、殿下に一筆書きます。
これで殿下が了承してくださればまだ……。


「ハーネス、これを殿下に届けてください。
お願い出来ますか?」

「はい。承知致しました」


ハーネスが出て行った後、私は次の本店移動の話合いのために、会議室へと向かいます。
護衛はいませんが、このようなところで襲われることはないでしょうし、私も多少の護身術は心得ていますので大丈夫でしょう。


「あれ、オーナー?
他の者達はどうしたのですか?」

「他の仕事を頼んだのです。
ルーファスはもうすぐ戻って来るでしょうが……」

「あっ、そういうことですか! 納得です!」


彼女はアリスの代役を務めているユーリです。
ユーリは、好奇心旺盛でそれが原因となり問題を起こすこともありますが、情報量は群を抜いており、そういった面では大変優秀と言えるでしょう。

ただ、自分の知らないことは何をしてでも……という部分があるのでその点がどうにか出来れば良いのですが。


「オーナー、そう言えば新作のケーキは本店のみですか?
それとも、支店にも?」

「本店のみにして様子を見ます、と言いたいところですが……それも、これからの会議で決めましょうか」

「はい! あのケーキ、絶対売れると思いますよ!」


この通り、大のケーキ好きでもあります。
最悪、新作のケーキを……と言えば止まるのでそれが救いどころというところですね。
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