王族なんてお断りです!!

紗砂

文字の大きさ
上 下
15 / 70
本編

12

しおりを挟む

私がこの国に戻ってから一週間経ちました。
その間、店のことは勿論、あのバカ二人に対する印象操作や、噂を流したり、今まで協力していただいていた貴族方にもう結構です、と言いに行ったりとやることが多く大変でした。

そんな中、ようやく陛下からの手紙が届きました。


「ありがとうございます。お疲れ様です、ハーネス。
ゆっくり休んでください」

「いえ、主を差し置いて私が休むなど……」

「ハーネス、命令です。休みなさい。
私が仕事を頼んだ時、体調を崩しているだなんてことがあれば困りますから」


ハーネス相手には、ハーネス自身を心配して休むように言っても絶対に聞きません。
ですが、私を主としてみているハーネスならば命令と言えば聞きますし、仕事に支障をきたすと言えば休みます。
面倒ですが、扱いやすい部類です。


「承知致しました。失礼致します」


ハーネスが退出すると、私は溜息を吐き、手紙の封を開けました。


『エリス・フォーリア殿

我ら王家はそちらの要求を受け入れよう。

追伸
全てが終わったら一度城に遊びに来るといい。
王妃も気にしていた。
姿を見せてやって欲しい』


本文よりも追伸の方が長かったのですが……いえ、陛下も王妃殿下も既にあのバカ王子を見限っていたのかもしれませんね。
そうなると、次の王は公爵家から選ばれるのでしょうか。

まぁ、フォーリア公爵家には男児はいませんから外れることになりそうですが。
私が他家に嫁ぐとすれば分家の方から養子を取るようですし。


「エリス様?」

「……なんでもありません。
お父様は今どこにいらっしゃいますか?」

「奥様と庭でお茶をしています」

「では、私もそこに」

「かしこまりました」


私は陛下たちからの手紙を持ち、庭先へと向かいます。
庭先には、お父様とお母様が仲つつまじくお茶をしていました。


「エリス、どうしたの?」

「お母様、お父様、陛下からお手紙が」

「陛下からだと……?
あぁ、エリスの言っていたあれか」

「はい」


お父様が私の渡した手紙を読み終わると、フッと笑みを浮かべました。


「さて、次の王は誰になるのやら。
うちには関係のない話だがな。
……エリスも、その気はないのだろう?」


お父様が私に確認をしてきます。
そんな心配は要らないのですが……。


「はい。私は当初の予定通り、どこかの家に嫁ぐつもりでいますから」

「別に、婿養子をもらっても……」

「いえ、流石にそれは……」


婿養子という形で来てもらうとなれば、私の方が自然とその権力は大きくなります。
相手はそれを良しとしないでしょうし、女の身で領地経営となると、他の家になんと言われるか分かったものではありません。

それに、私には商会もあるので、そちらに専念したいというのもあります。
それを考えると、やはり婿養子をもらうよりも私が他家に嫁ぐ方が良いのです。


「相手は決まったか?」

「……いえ」


お父様の言葉で、残りの期間が少ないことを今更ながらに思い出されます。
正直、全く考えていませんでした。


「エリス、無理に決める必要はない。
っくり考えなさい」

「はい、お父様」


あのバカ二人のことだけではなく、自分のことも考えなければなりませんね。
家のためになりそうなところを選ばなければなりませんね。
そうなると、商会のことも考え、やはりエリンスフィールの貴族から選ぶのが一番でしょうか?

また機会があればルアンか殿下に紹介してもらいましょう。


「あぁ、そうだエリス」


部屋へと戻ろうとすると、お父様に呼び止められました。
どうかしたのでしょうか?


「一度、王都へ行く。
準備をしておきなさい」


多分ですが、次の国王の件でしょうね。
陛下は勿論、他の公爵家の方々とも話し合わなければいけないでしょうし……。
そこに私を連れていくのは、商会の宣伝と他家の令嬢方と情報交換をするため、でしょうね。

もう1つは、王都には本店がありますからその配慮、といったところでしょうか?


「承知致しました。
出立はいつ頃でしょうか?」

「明後日には出たいと思っている」


思ったよりも早かったです。
元々準備はしていたのでしょう。
そこに私が加わるか加わらないかの違いだったのでしょうね。


「承知致しました。
すぐに準備します」

「あぁ」


 アリスの治療は予定通り、ここでお願いしましょう。
回復した頃までには戻ってこれるといいのですが……。
それが無理なようでしたらアリスには申し訳ありませんが本店まで来てもらいましょう。


「ハーネス、ルーファス、明後日に王都へ向かいます。
それまでに準備をしておいてください」

「承知致しました」

「はい」


さて、あのバカ二人はどうしましょうか?
まさか、これで終わりだとは思っていませんよね……?
アリスを傷付けたのですからこの程度で終わるつもりはありませんし。

それは、王都へ行く途中の馬車の中で考えましょうか。
王都のお茶会に参加すればいい案がいただけるかもしれませんし。


「ふふっ、楽しみですわね」


私はこれからのことを考え、思わず笑みを浮かべました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

でしたら私も愛人をつくります

杉本凪咲
恋愛
夫は愛人を作ると宣言した。 幼少期からされている、根も葉もない私の噂を信じたためであった。 噂は嘘だと否定するも、夫の意見は変わらず……

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

さっさと離婚に応じてください

杉本凪咲
恋愛
見知らぬ令嬢とパーティー会場を後にする夫。 気になった私が後をつけると、二人は人気のない場所でキスをしていた。 私は二人の前に飛び出すと、声高に離婚を宣言する。

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

真実の愛だからと平民女性を連れて堂々とパーティーに参加した元婚約者が大恥をかいたようです。

田太 優
恋愛
婚約者が平民女性と浮気していたことが明らかになった。 責めても本気だと言い謝罪もなし。 あまりにも酷い態度に制裁することを決意する。 浮気して平民女性を選んだことがどういう結果をもたらすのか、パーティーの場で明らかになる。

処理中です...