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魔神編

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結果から言うと、カリンとのデートは楽しかった。
ただ、家に帰ってきて、その浮かれた気分は一気に落とされた。


「……冬夜、お前。
イルミ、1ヶ月だ。
1ヶ月で、今の俺を超えろ。
いいな?」

「カイ様を……超える……?
そ、そんな」

「出来ねぇなら帰れ。
足でまといだ」


もう、冬夜は限界だ。
1ヶ月後には冬夜が危ない。
完全に魔神に取り込まれることになるだろう。


「……やり、ます。
カイ様を超えてみせます!」

「そうか。
1ヶ月後、やれなければお前は部隊の一員として行動してもらう。
だが、やれると判断すれば……俺についてきてもらう。
いいな?」

「っ……はい!」


イルミは何を、とは聞かなかった。
それでも信じるように頷いたのは、俺を信用しているからだろう。


「フェイルの奴は知ってんのかねぇ……?」


冬夜の限界を。
あいつは、分かっているのか。
分かってねぇんだろうな、と思いつつも俺は魔界の方角を見た。

もし、魔神を殺せたとして、俺と冬夜が生きていられるかなど分からないのだ。
魔神の加護が、俺たちを道連れにするかもしれない。
それが分かっているからこそ、恐怖もあるし不安もあった。
だが、一番はやはり……。


「……カリンだよなぁ。
こりゃ、婚約破棄も考えねぇとヤバそうなんだよなぁ……」


また、俺はカリンの家に行かなければならないようだ。
それも、カリンにバレることなく。


「……泣く、だろうな」


カリンはあぁ見えて意外と脆い。
だからこそ、そうなれば泣くこともあるだろう。
それが、一番苦しかった。
あいつの為とはいえ泣かせることがどうしようもなく、辛く思えた。


「イルミ、俺は少しあける。
今日は休んどけ」

「は、はい!」


俺は、家をイルミに任せリュークのもとへと向かった。
何事もリュークに相談しなければ始まらないのだ。





「ん、カイ?
どうかしたのか?」

「あー、ちょっと相談」


リュークは不審そうに俺を見るが仕方ないだろう。
俺もリュークの立場なら不審に思うからな。


「どうした?
カリンのことか?」

「違ぇよ。
あー、その、1ヶ月後なんだけどよ。
1回帰ることになったわ。
冬夜がもう限界なんだと。
だから、ちょっくら帰って魔神ぶっ倒してくる」


だから、カリンを頼む。
そう言うつもりだった。
なのに、言えなかった。
それは、多分リュークが相手だからだ。
本当はリュークについてきてほしい。
リュークの隣で戦いたい。
そういう思いがあったからだろう。


「……分かった。
1ヶ月後な。
それまでに準備しとかなきゃいけないものは……」


……予想の斜め上をいった。
正直、なんで行くんだ、とか行かなくても、なんて言われると思ってた。
なのに、行く気満々じゃねぇか……。


「……いや、お前は来んなよ!?」

「何言ってんだよ?
親友が危険な場所行くってのに残れるわけないだろ。
カリンだって怒るぞ?
しかも、泣きながらな」

「……それは勘弁してくれ」


リュークの言葉に、確かにやられそうだと思ってしまう。
そして、どこか嬉しいと思うのは、リュークとまた、一緒に戦えるからだろう。


「あー、やっぱ敵わねぇや。
リューク、頼む。
冬夜を助けたい。
手伝ってくれ」

「当たり前だろ。
なにせ、親友の頼みなんだからな」


そんなやり取りが酷く、懐かしく感じた。
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