上 下
21 / 87

光隆会

しおりを挟む



「天野、海野、ちょっといいかぁ?」


私と天也は朝から先生に呼び出されていた。

……何も問題は起こしていないはずだ。
兄に関する件と愛梨以外の事に関しては。

多少心当たりがあり、少し不安になりながらも職員室……ではなく会議室に連れてかれる。

するとそこには学年委員が全員集まっていた。
……と、いうことは…だ。


「全員揃ったところで委員長決めるぞ」


……はぁ、面倒くさい。
誰かしらやる人もいるだろう。
私はもう2度とやらないと決めたのだ。

……初等部からずっと何かしらの理由をつけて押し付けられてきたが今年こそはやってやるものか。


「……立候補者なしっと……。
という事で、委員長は海野にお願いする」


……はい?
えっ?
私が委員長……?


「先生、どういう事でしょうか?
何故私が委員長に……」

「学年首席で初等部から委員長をやっていたんだから問題無いだろう?」

「……それは、そうかもしれませんが……。
他に向いている方がいると思います。
…例えば、天也とか……」

「断る。
咲夜がやるべきだ。
生憎、俺には咲夜みたいに経験はないからな。
皆もそれでいいだろう?」


天也め!
敵にまわりやがったな!?
自分が委員長をやりたくないからって……!!

そして皆も天也の言葉に頷くな!!


「よし、決定だな。
副委員長の立候補はあるか?」


…反応は無い。
…そんなに嫌なのだろうか?
私とやるのはそんなに嫌なのか?


「……俺がやる」


挙手したのは天也だった。

……まぁ、どっちにしろ巻き込もうとしてたから問題ないな。
というかまたいつもと同じ形か……。
私が委員長で天也が副委員長って……。
9……10年間ずっとこうなのか……。


「なら天野に任せる。
海野と天野は残りその他は解散!」


私は面倒なことを押し付けられたとため息をつく。
そして私と天也、先生以外が全員戻ったところで話が始まった。


「光隆会との両立で大変だとは思うが……。
再来月は文化祭だ。
という事で各クラスの催しを決めてくれ。
詳しい事は光隆会の方でも話が出るだろう」


…あぁ、そんな時期かぁ。
あれ、結構仕事多くて大変なんだよなぁ。

などと今までの文化祭の準備や当日の仕事を思い浮かべる。

…親とはぐれた子供の相手や、問題の解決。
苦情などの整理や予算。
それに、その後の打ち上げパーティーの会場の準備や用意。

……はぁ…気が重い……。


「文化祭か……初等部の頃、悠人先輩と咲夜がはぐれて先輩が暴れた事があったな……」

「………お兄様が申し訳ありませんわ…」


初等部の頃、兄が仕事で離れているうちにクレープを買いに行ったのだがその間に兄が戻ってきてしまったようで、私が居なくなったと大暴れしたらしい…。
その時の怪我人は過去最多だったとか。
そのレコード更新は要らなかったね。
……本当にご迷惑をおかけしました。


「中等部の頃は、悠人先輩が俺らのクラスでやってた喫茶店に来て咲夜が厨房にいる時は咲夜の作ったものだけを大量に注文して、接客をしている時は咲夜の写真ばかりをとって、よく怒られてたよなぁ……」

「……あれは……恥ずかしかったですわ……。
今回はそのような事が無ければいいのですが……」


兄の暴動はそれだけではなく私の休憩の時間を何故か把握していてその時間にドアの前で待っていたり……。

私が厨房で頑張っている時に兄が私のためにとマカロンを差し出してきたり……。

オムライスにはケチャップで絵を書くというサービスをやっていた時には私の書いたものが勿体なくて食べられないと席で悶えていて何時間も居座ったり……。
あの時は確か、兄専用の席を用意したはず。
……裏方の方に。

いつの間にか厨房にまで入ってきて写真をとっていたり……。
準備の時に手伝いと言って教室に来て私の写真を撮ってたり……。

天也と奏橙と3人で準備をしている時に乱入して邪魔してきたり……。
1日に何回も模擬店にきたり……。

お化け屋敷だったときは一瞬で私に気づいて可愛いを連発して最終的に何故かお化け屋敷と全く関係のない天使の格好をさせられたり……。

コスプレ喫茶だった時は兄がどこからかドレスやらコスプレ服なんかを大量に持ってきたりして着せ替え人形のようにさせられたり……。

……あれ?
よく考えたら殆ど兄の記憶だ…。


「……なぁ、文化祭での思い出が殆ど悠人先輩と咲夜のやり取りなんだが……」

「……私も今そう思ったところですわ…」


……クラスの皆には悪いけど今年は喫茶店は無しにしてもらおう。
それとお化け屋敷も却下だな。
……兄が何時間も居座りそうだし。

放課後。
光隆会での集まりの時。

なんだかんだいっても高等部での光隆会の集まりはこれが初めてだった。
とはいえ初等部の頃からの顔見知りが何人かいるのだが。
知らない人もいるので……という事でまずは自己紹介からとなった。


「1年3組の海野咲夜と申します。
1年間、よろしくお願いいたします」

「同じく、1年3組の天野天也です」

「1ー3、神崎奏橙です」

「あ……えっと、3組の黒崎愛音です!
よ、よろしくお願いします…!」


1年は2位が3人いたこともあり4人が光隆会のメンバーだ。
……それが全員3組っていうのも凄いけど。


「全員3組なんだ?
分かりやすくていいなぁ……。
あ、俺は2年5組の桜丘神門かんと
そっちの3人は知ってると思うけど…。
宜しく」

「2年1組の空栗からくり煉斗れんと
よろしくね」

「7組の白凪叶矢しろなぎかなやです。
よろしくお願いしますね」


2年の先輩は中等部の頃から変わっていないようだ。
顔見知りだから少しホッとした。


「ラナン・ファミーユだ。
3年2組で咲夜の従兄だな」


……何故、これがここにいるのだろうか?
まぁ、これはウザイけど問題ない。


「あ、お兄様」

「はっ!?」


ドタドタドタ!

ラナンは急いで掃除用具入れに隠れる。

……ラナンは何故かお兄様を大の苦手としているのだ。
問題はあるけど優しいのに……。


「…に先に帰ってもらうように伝えるのを忘れていましたわ」

「……悠人はいないのかよ…。
ったく、驚かせるな……。
つうか、俺で遊ぶな、咲夜」


勝手に驚いたのはラナンの方だろうに。
私のせいにしないで欲しい。

……まぁ、わざと勘違いさせるように言ったけど。


「ラナン、席に着いたほうがいいのでは?」

「……咲夜…お前、悠人に似てきてないか?」


失礼な。
私はあんなに黒くはない。
それに、あの兄のどこに似てきたというんだ。
兄はシスコンだろうが。

私はとりあえず席についたラナンの足を思い切り踏んでおいた。


「……副会長の3年8組龍善寺凪波ななみだ。
宜しく頼む」

「会長の明来あくる智也。
1年間、宜しくね」


驚いたことに中等部まではテスト事に入れ替えがあったのに対し高等部では入れ替えがないらしい。
理由は覚えるのが面倒、だそうだ。

……中等部や初等部もそうして欲しかった。


「じゃあ、再来月にある文化祭の事だけど……。
予算に関してはまた後で渡すよ。
場所は校門の所か中庭か教室。
部活動に関してはそれぞれの教室を使ってもらおうと思う。
ここまでで質問はある?」


場所は校門か中庭か教室…か。
私はとりあえず手を上げる。


「食堂はどの部活も使っていなかったと思うのですが…。
食堂の使用は駄目でしょうか?
それと、使用していない教室に関しては休憩所といった形で解放するのはどうでしょうか?」


毎回毎回、人が多すぎて大変なんだよね。
時々人混みに酔ったっていう人もでてくるから休憩所もあればいいと思ったんだよね。

会長は少し考えていた。
メリットとデメリットについて考えているのだろう。


「休憩所の案は採用しよう。
食堂の方に関しては一部のスペースを落し物や案内所といった形にしようと思っているんだ。
そうすれば多少はこっちの負担も減るからね」


確かにそうだ。
私が質問するまでも無かったのか。


「そうでしたか…。
申し訳ありません、出すぎた真似でした」

「そんな事ないさ。
現に、休憩所なんて思いつかなかったからね」


会長は笑って慰めてくれた。
……後輩思いの優しい先輩だなぁ。


「他にはないみたいだから先に進めるよ」


その後、説明と質問で1時間くらい話した後解散となった。
それ以降は各学年での話し合いとなるらしい。
…その話し合いというのにも私と天也は参加しないといけないのだが……。
しかもその話し合いは明日らしい。
…急すぎはしないだろうか?

私は迎えを呼ぼうと電話をかけようとするが、ある声に阻まれた。


「さぁ、咲夜。
帰ろうか。

……あれ?
何でラナンがここにいるのかな?
ラナン……僕の可愛い可愛い可愛い天使に手を出してないよね?
世界一可愛い僕の天使に手を出したら………分かっているよね?
智也や凪波もだよ?」


……うわぁ……。
ラナンと先輩方……兄が申し訳ありません……。
そういえば兄は何故ここにいるのだろうか?

…時期的に分かったのかな?
卒業生だし不思議ではないか。


「お兄様、脅すのは辞めてください!
それと私は天使でも可愛くもありません!
先輩、お兄様が申し訳ありません…」

「咲夜は可愛い可愛い天使だよ。
それに脅しじゃないから大丈夫。
あと咲夜が謝る必要はないよ。
ねぇ?」


兄よ……脅しじゃないというのは本気という事だろうか?
尚更駄目だとおもうのだが。
それに、先輩を見る時の目が怖い!
殺気立ってる!!

私はもう一度先輩に謝罪し家に帰った。

……ラナン?
それは知らない。
従兄妹だし兄のことはよく分かってるだろうからどうでもいいし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...