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しおりを挟む目が覚めた時、私は要塞と思われるとこの寝台に寝かされていた。
あの後、どうなったのだろうか?
それが聞きたくて、私は寝台から立ち上がろうとする。
「主よ、動かぬ方が良い。
少々魔力を使いすぎたせいで体も上手く動かぬだろう。
あと少し経てば動けるようになる」
エデンの言う通り、上手く体が動かない。
そして、とてつもない疲労感のせいで起き上がることすらままならなかった。
「レオは、他の方々は大丈夫でしょうか?
それに……」
「落ち着け、主よ。
我としても説明したいのは山々ではあるのだが、人の世のことはよく分からぬ。
故に、分かる者を連れてくる。
その間に落ち着くと良い」
エデンは優しく微笑むと、私の頭にポンと手を置き退室していった。
あんな表情は見たことがない。
何かあったのだろうか、と逆に心配になる程に。
「リア、目覚めて良かった!
無茶はやめてくれ……。
心臓が止まるかと思っただろう……」
「申し訳ありませんわ。
ですが……」
「ですが、だと?」
「……分かりました。
善処致しますわ」
いつにも増してレオが怖かった。
レオに恐怖を感じたのはいつぶりだろうか?
なんにせよ、少なかったのは確かだ。
「はぁ……」
レオはため息をついたあと、真面目な顔で私に告げた。
「リアが倒れたのはこれで二回目だ。
前の時も今回も同じ理由でだ。
だが、次も助かるとは限らない」
「えぇ、ですがやらなければ傷付く方が増えてしまいますもの。
私一人くらいで助かるのなら、安いものでしょう?」
それが、貴族としての役目でもあるのだ。
だからこそ、やらなければいけない。
私が倒れるだけで終わったのは僥倖だっただろう。
だが、今回のようなことが続くとは限らない以上、やはりもっと強くなる必要がある。
「安いもの、だと?
そんなわけあるか!
リアがいなくなって悲しむのは私だけではないのだということを何故分からない!
エデンやリアンはどうするつもりだ!
契約者のいない竜は討伐対象となるのだぞ!」
これ程までに感情を顕にしたレオは初めて見たような気がする。
何故、レオはこんなにも私にこだわるのだろうか?
エデンやリアンのことは確かに心配ではある。
だが、エデンたちがそう簡単に負けるはずがないと思うし、お母様以外に倒せる人なんて思い浮かばない。
「大体、お前は私のことをなんだと思っている!
私はリアが好きだと言っただろう。
なのに何故、自分の命が安いものだと言える!?
ふざけるな!」
「なっ……それは、それが貴族として生まれた私の役目だからですわ!
貴族としての役目も果たさず生きているなど、そんなことできるはずがないでしょう!」
気付けば、私も言い返していて、喧嘩になっていた。
私達がする、初めての喧嘩だった。
「お前のやっていることは貴族としての範疇を超えていると言っているんだ!
それで死にでもすれば貴族としての役目どころではなくなるのだぞ!
それが何故分からない!」
「ですから、それは分かっていると言っていますわ!
ですが、だからといって他の方の命を見捨てろと言うつもりですの!?
そんなこと、許せるはずがないでしょう!」
私も、レオが言っていることは分かっているつもりだ。
だが、だからといってそれを認めてしまえば自らの役目を果たしてもいない貴族を認めることになる。
なにより、そんなことをすれば貴族と平民の間に命の差があることを認めることになるのだ。
それを、認められるはずがない。
「そうは言っても、リアが死んでしまえば助けられる命も助けられなくなるのだぞ!」
「では、なんですの!?
目の前の命を見捨てろと申しますの!?」
「そうは言っていないだろう!」
私達の喧嘩がヒートアップしてくると、ついにエデンが私達を止めた。
「主は目覚めたばかりで疲れている。
喧嘩をするのならば出て行ってもらおう。
だが、主も主だ。
そう無茶ばかりしていてはこちらも心配するだろう。
役目を果たそうとするのは正しいだろう。
だが、それで倒れてしまえばその役目も果たせなくなるのではないか?」
エデンに言われて気付く。
私は目の前のことにしか目がいかない。
だからこそ、その先のことを考えずに動いてしまうのだ。
「今の主の行動は、主の周りの者を信用していないと同義だということも理解しているのか?」
私は、エデンの言葉に今までの行動を振り返ってみた。
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