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ピーターパン協会、ただいま隊員募集中
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あの後、カオルがどういう風に事件を処理したのかは不明だが、腰元は多数のセクハラと暴力事件が発覚して懲戒解雇となった。
俺の方と言えば驚くほど何事もなく、怪我に関しても腰元にやられたということになっている。
あんな雑魚に一撃ももらってない俺からしてみれば、甚だ遺憾ではあるがまあ我慢しておくことにした。
また、ピーターパン協会内部に関しても、体制が大きく見直されることになったらしい。
「先輩。本当に脱退されるんですか?」
放課後、廊下を歩く俺の後ろをカオルがウロウロとついてくる。
「くどいぞ」
「でも、先輩の容疑は晴れましたし、新しい法案が本部で可決されて、朝霧ホノカさんとも一緒にいても問題なくなったのに……」
協会は今回の事件に関して緊急の会議を行い、そこで新たな法案が認可された。
その新たな法案を出したのは、今俺の後ろをついて回っているカオルだ。
まず、事件のレポートの中で『現状のルールのままだと、保護対象は好きな男とも一緒にいられないということになり、果たしてそれは保護対象にとって幸せなことなのだろうか』という問題を取り上げた。
そして、さらにカオルは『保護対象が望んだ相手に限り、近づくのを許可する』という内容を盛り込んだ法案を、本部議会に提出した。
結局、本部のエリートと言えども、少女を見て愛でるだけというのは物足りなかったようだ。
中には秘密裏にコンタクトを取って付き合っていたという支部長までいたという状況だった。
カオルの出した法案はすぐに大多数の賛成により可決される。
さらに、可決の三日後には支部長の半数以上が保護対象と付き合いだしたというのだから、笑えない話だ。
「そういえば、豚……いや、手塚はどうなった?」
「えっと……そろそろ粛清室から解放されるんじゃないですかね。粛清の効果で、もう三次元の女の子にはまったく興味が無くなったみたいです。せっかくモテるようになったのに、もったいないですけど、自業自得ですよね」
「ふん」
なにより驚いたのが、あの豚が粛清されることにより体重が激減し、普通の体型になったら結構な美形だったことだ。
まったく、阿呆な奴だ。
人を妬むよりダイエットでもしていれば、幸田ミヤビに振り向いてもらえたかもしれないのにな。
……まあ、今となってはどうでもいいことだが。
「あーあ。ナツ先輩が辞めるなら、僕も協会から抜けようかなぁ」
「支部長代理が言う台詞じゃないな」
いじけたような声を出すカオルに、俺は立ち止まって両肩を掴んで言う。
「お前ならきっと協会を良い方向に導ける。頼むぞ、期待してるからな」
「じゃあ、ナツ先輩も辞めないで、手伝ってくださいよー」
なにを照れているのか知らないが、カオルは頬を赤くしながら口を尖らせて視線を泳がせている。
「それとこれとは別の話だ」
「……もう! 先輩の意地悪っ!」
カオルはため息をつき、大きく深呼吸をして、今度は真正面から真剣な目で俺を見返してくる。
「じゃあ、僕から、最後のささやかな嫌がらせをします」
「へえ。面白い。やってみろ」
俺に楯突こうなんて十年早いと思ったが、純粋にどう仕掛けてくるか興味があった。
「ナツ先輩に初恋の人と会わせられるって、僕、言いましたよね」
「……ああ」
なるほど。そこか。
まあ、こいつが俺に対して有効打となるカードといえばそれくらいしかないだろう。
「もうすでにナツ先輩は、その人に会ってるんですよね。実は」
「なんだと?」
「誰だか、わかります?」
ニコニコと犬っころのような笑みを浮かべながら、俺の顔をジロジロと見てくる。
「……マチ……か?」
そう。マチとデートごっこをした日から、ずっと気になっていた。
もしかしたら、あいつが俺の初恋の……。
「ブブー。違います」
「……」
「わかりませんか? じゃあ、ヒントですっ!」
そう言って、カオルはポケットから写真の束を出した。
そこに写っているのは、間違いなく俺がずっと探していた女の子の姿が写っている。
しかも、和服の……七五三の写真のようだ。
にっこりと笑っていた。
「お前、なんで、こんなものを持っている?」
「順番に並べてあるので、ドンドンめくっていってください」
「……」
ヤバイ。やっぱり可愛いな。
朝霧さんとは違った良さがある。
まあ、こんなことは口が裂けても朝霧さんの前では言えないが。
カオルが差し出してきた写真の束をめくっていくと、写真の被写体である女の子が徐々に成長していく様が写っていた。
――違和感。
そう。違和感だ。
まず、最初に思ったのが、どうしてカオルがここまで、あの女の子の写真を持っているのか。
さらに……最大の違和感が俺の脳髄を駆け上がっていく。
ダメだ。見るのを止めるんだ!
俺の本能がそう告げている。しかし、俺の手は止まらない。
徐々に写真をめくっていくと、女の子が成長していく。
その姿がどこか、見たことがあるような――。
最後の一枚。
それは高校の入学式での一枚だった。
写っているのは、男子の制服を着た……男だ。
そして、そいつは目の前に――いる。
「お前……だったのか?」
「僕に姉がいるって、前に言いましたよね? 最初は、遊びのつもりで姉の服を着せてたらしいです。そしたら、姉よりも似合ってしまって……。そこで、両親が悪乗りしちゃったみたいなんですよね。ドンドンと可愛らしい女の子の服を買ってきては僕に着せてたみたいです。うちの親のすごいところは、小学四年生になるまで、僕に自分は女の子だと信じ込ませてたところです」
「き、貴様……」
「あの時、先輩に助けてもらって……。僕、一目惚れだったんです。将来、絶対に先輩と結婚しようって決めてたのに。ある日、自分が男だって気づいちゃって……。いやあ、ショックでしたよ」
「……」
「僕はずっと思ってたんです。ナツ先輩は僕のものになってくれないのはしょうがないですけど、他の誰かに取られるのは我慢できないって。で、どうしようって悩んでいたら、先輩がピーターパン協会に入ってて……。これだって思いました。ここなら、ナツ先輩は少女を見るだけで、しかも小さい頃の僕を探してるっていうじゃないですか。これなら、先輩は誰かに取られる心配はないって思ってたのに……」
……怒り。この怒りはどこから来るのだろうか。
全てを知っていて黙っていたカオルか?
それとも、長年男を探し続けた滑稽な自分自身にか……。
まあ、そんな些細なことはどうでもいい。
「……殺す!」
俺はカオルの頭を掴み、力を込める。
「ぎゃあああああっ!」
カオルは俺から逃れようと必死に体を動かすが、やがてそれも止まる。
ぶくぶくと泡を噴き、気絶した。
ここまでくれば後は握りつぶすだけ。赤子の手をひねるよりも簡単なことだ。
じゃあな、カオル。俺の忌々しい過去とともに消えろ。
止めに入ろうと力を込めると同時だった。
「お兄ちゃーん!」
朝霧さんが駆け寄ってくる。
「やっと見つけましたぁ! もう、今日は掃除当番だから、教室の前で待っててくださいって言ったのにぃ」
「ああ、悪いな。ちょっと用事があって」
「あれ? 如月先輩、どうかしたんですか? 白目剥いてますけど?」
「いや、なんでもない。さあ、帰ろうか」
「はい!」
朝霧さんが嬉しそうに、廊下を駆けていく。
その後ろ姿を見ながら、俺は掴んでいた手を放す。命拾いしたな、カオル。
確かに俺は、長年、女装していたカオルを追うという痛い人生を歩んできていた。
だが、そのおかげで朝霧さんに出会うことができたわけだ。
そのお礼として、命くらいは助けてやってもいいだろう。
「お兄ちゃーん、早く早くぅー」
前を歩いている朝霧さんが振り返り、手を差し伸べてくる。
「ああ、今行く」
朝霧さんの横まで駆け寄り、手を握る。
「えへへ」
照れ笑いする彼女を見て、俺は再度心の中で誓う。
もう、彼女を一人にしない。そして、この先もずっと守り続けると。
朝霧さんと並んで廊下を歩いていると、ふとあるポスターが目に付く。
前の事件以来、すっかり表舞台に立ってしまった協会のポスターだ。
そこには大きくこう書いてある。
『ピーターパン協会、ただいま隊員募集中』
俺の方と言えば驚くほど何事もなく、怪我に関しても腰元にやられたということになっている。
あんな雑魚に一撃ももらってない俺からしてみれば、甚だ遺憾ではあるがまあ我慢しておくことにした。
また、ピーターパン協会内部に関しても、体制が大きく見直されることになったらしい。
「先輩。本当に脱退されるんですか?」
放課後、廊下を歩く俺の後ろをカオルがウロウロとついてくる。
「くどいぞ」
「でも、先輩の容疑は晴れましたし、新しい法案が本部で可決されて、朝霧ホノカさんとも一緒にいても問題なくなったのに……」
協会は今回の事件に関して緊急の会議を行い、そこで新たな法案が認可された。
その新たな法案を出したのは、今俺の後ろをついて回っているカオルだ。
まず、事件のレポートの中で『現状のルールのままだと、保護対象は好きな男とも一緒にいられないということになり、果たしてそれは保護対象にとって幸せなことなのだろうか』という問題を取り上げた。
そして、さらにカオルは『保護対象が望んだ相手に限り、近づくのを許可する』という内容を盛り込んだ法案を、本部議会に提出した。
結局、本部のエリートと言えども、少女を見て愛でるだけというのは物足りなかったようだ。
中には秘密裏にコンタクトを取って付き合っていたという支部長までいたという状況だった。
カオルの出した法案はすぐに大多数の賛成により可決される。
さらに、可決の三日後には支部長の半数以上が保護対象と付き合いだしたというのだから、笑えない話だ。
「そういえば、豚……いや、手塚はどうなった?」
「えっと……そろそろ粛清室から解放されるんじゃないですかね。粛清の効果で、もう三次元の女の子にはまったく興味が無くなったみたいです。せっかくモテるようになったのに、もったいないですけど、自業自得ですよね」
「ふん」
なにより驚いたのが、あの豚が粛清されることにより体重が激減し、普通の体型になったら結構な美形だったことだ。
まったく、阿呆な奴だ。
人を妬むよりダイエットでもしていれば、幸田ミヤビに振り向いてもらえたかもしれないのにな。
……まあ、今となってはどうでもいいことだが。
「あーあ。ナツ先輩が辞めるなら、僕も協会から抜けようかなぁ」
「支部長代理が言う台詞じゃないな」
いじけたような声を出すカオルに、俺は立ち止まって両肩を掴んで言う。
「お前ならきっと協会を良い方向に導ける。頼むぞ、期待してるからな」
「じゃあ、ナツ先輩も辞めないで、手伝ってくださいよー」
なにを照れているのか知らないが、カオルは頬を赤くしながら口を尖らせて視線を泳がせている。
「それとこれとは別の話だ」
「……もう! 先輩の意地悪っ!」
カオルはため息をつき、大きく深呼吸をして、今度は真正面から真剣な目で俺を見返してくる。
「じゃあ、僕から、最後のささやかな嫌がらせをします」
「へえ。面白い。やってみろ」
俺に楯突こうなんて十年早いと思ったが、純粋にどう仕掛けてくるか興味があった。
「ナツ先輩に初恋の人と会わせられるって、僕、言いましたよね」
「……ああ」
なるほど。そこか。
まあ、こいつが俺に対して有効打となるカードといえばそれくらいしかないだろう。
「もうすでにナツ先輩は、その人に会ってるんですよね。実は」
「なんだと?」
「誰だか、わかります?」
ニコニコと犬っころのような笑みを浮かべながら、俺の顔をジロジロと見てくる。
「……マチ……か?」
そう。マチとデートごっこをした日から、ずっと気になっていた。
もしかしたら、あいつが俺の初恋の……。
「ブブー。違います」
「……」
「わかりませんか? じゃあ、ヒントですっ!」
そう言って、カオルはポケットから写真の束を出した。
そこに写っているのは、間違いなく俺がずっと探していた女の子の姿が写っている。
しかも、和服の……七五三の写真のようだ。
にっこりと笑っていた。
「お前、なんで、こんなものを持っている?」
「順番に並べてあるので、ドンドンめくっていってください」
「……」
ヤバイ。やっぱり可愛いな。
朝霧さんとは違った良さがある。
まあ、こんなことは口が裂けても朝霧さんの前では言えないが。
カオルが差し出してきた写真の束をめくっていくと、写真の被写体である女の子が徐々に成長していく様が写っていた。
――違和感。
そう。違和感だ。
まず、最初に思ったのが、どうしてカオルがここまで、あの女の子の写真を持っているのか。
さらに……最大の違和感が俺の脳髄を駆け上がっていく。
ダメだ。見るのを止めるんだ!
俺の本能がそう告げている。しかし、俺の手は止まらない。
徐々に写真をめくっていくと、女の子が成長していく。
その姿がどこか、見たことがあるような――。
最後の一枚。
それは高校の入学式での一枚だった。
写っているのは、男子の制服を着た……男だ。
そして、そいつは目の前に――いる。
「お前……だったのか?」
「僕に姉がいるって、前に言いましたよね? 最初は、遊びのつもりで姉の服を着せてたらしいです。そしたら、姉よりも似合ってしまって……。そこで、両親が悪乗りしちゃったみたいなんですよね。ドンドンと可愛らしい女の子の服を買ってきては僕に着せてたみたいです。うちの親のすごいところは、小学四年生になるまで、僕に自分は女の子だと信じ込ませてたところです」
「き、貴様……」
「あの時、先輩に助けてもらって……。僕、一目惚れだったんです。将来、絶対に先輩と結婚しようって決めてたのに。ある日、自分が男だって気づいちゃって……。いやあ、ショックでしたよ」
「……」
「僕はずっと思ってたんです。ナツ先輩は僕のものになってくれないのはしょうがないですけど、他の誰かに取られるのは我慢できないって。で、どうしようって悩んでいたら、先輩がピーターパン協会に入ってて……。これだって思いました。ここなら、ナツ先輩は少女を見るだけで、しかも小さい頃の僕を探してるっていうじゃないですか。これなら、先輩は誰かに取られる心配はないって思ってたのに……」
……怒り。この怒りはどこから来るのだろうか。
全てを知っていて黙っていたカオルか?
それとも、長年男を探し続けた滑稽な自分自身にか……。
まあ、そんな些細なことはどうでもいい。
「……殺す!」
俺はカオルの頭を掴み、力を込める。
「ぎゃあああああっ!」
カオルは俺から逃れようと必死に体を動かすが、やがてそれも止まる。
ぶくぶくと泡を噴き、気絶した。
ここまでくれば後は握りつぶすだけ。赤子の手をひねるよりも簡単なことだ。
じゃあな、カオル。俺の忌々しい過去とともに消えろ。
止めに入ろうと力を込めると同時だった。
「お兄ちゃーん!」
朝霧さんが駆け寄ってくる。
「やっと見つけましたぁ! もう、今日は掃除当番だから、教室の前で待っててくださいって言ったのにぃ」
「ああ、悪いな。ちょっと用事があって」
「あれ? 如月先輩、どうかしたんですか? 白目剥いてますけど?」
「いや、なんでもない。さあ、帰ろうか」
「はい!」
朝霧さんが嬉しそうに、廊下を駆けていく。
その後ろ姿を見ながら、俺は掴んでいた手を放す。命拾いしたな、カオル。
確かに俺は、長年、女装していたカオルを追うという痛い人生を歩んできていた。
だが、そのおかげで朝霧さんに出会うことができたわけだ。
そのお礼として、命くらいは助けてやってもいいだろう。
「お兄ちゃーん、早く早くぅー」
前を歩いている朝霧さんが振り返り、手を差し伸べてくる。
「ああ、今行く」
朝霧さんの横まで駆け寄り、手を握る。
「えへへ」
照れ笑いする彼女を見て、俺は再度心の中で誓う。
もう、彼女を一人にしない。そして、この先もずっと守り続けると。
朝霧さんと並んで廊下を歩いていると、ふとあるポスターが目に付く。
前の事件以来、すっかり表舞台に立ってしまった協会のポスターだ。
そこには大きくこう書いてある。
『ピーターパン協会、ただいま隊員募集中』
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