いろはにほへと

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そこからはなし崩しだ。
細い腰に手を回し引き寄せれば、万里の腕も雷音の首に巻き付く。解け合うくらいにドロドロに深い口付けをし、互いの咥内を余すとこなく味わった。
「ん…」
ピチャピチャと舌の絡む音と万里の甘い声。雷音の手が膨らみのない万里の胸を這い、小さく尖った胸の果実をキュッと摘んだ。
「う…あっ」
万里が息づき離れても、雷音がまたその口を塞いだ。しつこい位に胸の果実を弄び、どちらからともない涎が頬に垂れても、雷音も万里も口付けをやめることはなかった。無我夢中。まさにそれだった。
胸を弄ぶ手とは反対の手が万里の腰から外れ、細くくびれた脇腹を指を滑らしながら中心に近寄る。
期待からか万里の身体が小さく震えた。
深い口づけから浅い口づけに変えて、万里の燃える様な赤い瞳を覗き込む。熱さからか上気した顔は劣情的で、雷音は下半身が重くなるのを感じだ。
「目が、赤い」
「…もともと、や」
「何だかスゴく深い赤になってる」
小さな口づけの隙に言葉を交わして、そうしながら雷音の手は万里の張り詰めた中心の熱の塊をやわやわと掴んだ。
「う…はぁ…、あっ…」
ビクビクと震える万里の頬に口付けながら、ゆっくりと扱く。双嚢も揉みながら、先端の割れ目も親指の腹で撫で回す。
万里の腕は雷音に巻き付いたままだが、雷音は万里の額に自分の額をあわせて妖艶なその姿を盗み見た。
快感に耐えるように彫り込まれた眉間の皺と、小さく震える長いまつげ。目尻の傷が泣いているようで、雷音はゾクリとして万里の先端の割れ目に爪を入れた。
「あっ!やっ!」
「イケない?」
水の中では動きも鈍くなる。雷音の問い掛けに、万里が何度も頷いた。
鈍い快感が辛いのだろう。雷音は万里の両脇に手を入れるとそのまま持ち上げて、風呂のへりに座らせた。
熱を吐き出したいのに吐き出せない肉棒は、フルフル震えながら涙を垂らしていた。
雷音はそれにゆっくり見せつけるように舌を這わし、根元から先端にかけて、まるでキャンデーを舐めるように舐め上げる。
「うそ、あっ…はぁ…」
たまらないのか、万里が天を仰いで息を吐く。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながらしゃぶれば、白い足が雷音の首に巻き付いた。
柔らかさなんてない、それこそ筋肉と骨と少しの脂肪で締まった太腿にどうしてか雷音はひどく興奮した。
自分と同じ性器を貪るなんて死んでもすることはないと思っていたのに、何故だろう?どうやっても、この淫靡な男が快感で狂うところを見たくて仕方がなかった。
双嚢を揉みながら熱り勃つペニスを舌を絡めて吸い上げる。そして開いている手で尖った果実を転がしてやれば、締まりのなくなった口からは忙しない息遣いが聞こえた。
それを聞いて、雷音は万里のそれに食らいついた。咥内で舌を這わせながら派手な音を上げて吸い上げると、万里の高い声が浴室に響いた。
内太股が痙攣を起こす。万里の限界が近いと感じた雷音は、一層強く吸って雁高の部分に器用に舌を巻き付けた。
「あっ!イクッ!イクからっ…離して…ぇ!」
万里が必死に訴えても雷音は止めることなく、それを繰り返した。
ぐっと雷音に巻き付いた足に力が入ったと思うと、咥内に苦みを帯びた蜜の味が広がり、ぐっと体積を増したペニスの先端を舌で抉ると、万里は雷音の頭を掻き抱いて雷音の咥内に熱を吐き出した。
はあはあと肩で息をして、ずるずると落ちる様にして風呂の床に転がった万里の裸体は実に悩ましく、雷音は風呂から出るとオーガズムの余韻に浸る万里の内太股に吸い付いた。
「…やっ」
店での勢いはどこへやら。目尻を真っ赤にして雷音を見る顔は、男の欲情をそそるに何ら足りないものはなかった。
若頭だとか極道だとか、そんな事を一切忘れて雷音は近くのボディソープを数回押し出した。
そしてゆっくり柔らかな尻たぶに塗り、奥の窄まりを撫でるように行き来する。その行為の意味を理解したのか、万里が虚ろな目で雷音を見上げた。
「ここ、使ったことあります?」
少しだけ力を入れて蕾を引っ掻いてみると、万里がギュッと唇を噛んだ。潤んだ瞳は焦点が合わずに、雷音の問いにフルフル頭を振る。
「そう、何だか嬉しい」
この身体を誰かに組み敷かれ抱かれるのは、どこか腹立たしい。お門違いな嫉妬に笑いながら、雷音はゆっくりと指を窄まりに埋め込んだ。
「や…痛い」
万里がいきなり捩じ込まれた異物に驚いて、逃げをうった。雷音の太い腕を掴んで、今にもその白く細い足で蹴らんばかり。
それに気が付き、さすがに急きすぎたと雷音は指を抜いた。
「大丈夫。傷つけたりしないから。ね、力抜いてください。ほら、おいで」
心細いようにする腕を自らの首に絡ませ、また口付ける。何度か戯れ合うようなキスをすれば万里の緊張も解けてきたようで、その隙を狙って不埒な指は再度、万里の窄まりを撫でた。
小さな痛みを思い出してか万里の身体が少し固くなったが、それを解す様に万里の舌に舌を絡めて犯す。
ディープキスに夢中になる万里の蕾に雷音はゆっくりと指を埋め込んで、ぐるっと中を貪ると、万里の身体が微かに跳ね上がった。
「…痛い?」
舌を絡めながら聞けば首を振り、もっとと舌を強請る。必死に気を紛らわそうとしているようだ。
万里の咥内を犯す舌をちゅっと吸われて小さく噛まれると、仕返しとばかりに雷音はもっと奥へと指を進めた。
さすがに狭い。だが、ただ狭いだけではない。
捩じ込んだ指は、細胞の一つ一つを確認出来そうなくらいに締め付けられている。ギュッと締まったり、少し緩んだり。まるで咀嚼されているような感じだ。
「すごいな…指だけでも気持ち良い」
雷音は感嘆したが、普通であれば何かが入り込むことのないような場所に指を捩じ込まれた万里は、気持ちが良いとは縁遠いようだ。
痛みはないようだが、どうにか不快感を拭おうと雷音の舌に吸い付いていた。
このままじゃ、どうにも前に進めないなと雷音は万里の中の壁を指で少し強めに撫で出した。
夜の仕事をしていれば聞いた事のある秘宝。秘奥にあるそれが、どうしてそういう働きをするのか。
神の悪戯か気紛れか。どちらにせよ、自分がそこを探る事になるだなんて一生ないことだと思っていたのに。
「…っふ、んん!!」
「いたっ…」
万里が身体を跳ねさせて、雷音の舌を噛んだ。勢い余ってという感じだ。
「ああ、ここか」
「あ…?ら、雷音?」
口付けを離して顔を覗き込めば、万里は何がなんだか分からない顔で困惑していた。
雷音はまたボディソープを手に取ると、熱い蕾に指を飲み込ませ、先ほどの場所を指の腹で強く押した。
「はっ…イヤ!あっあっ!」
万里の身体が跳ね上がり、抑えきれない悲鳴が上がる。万里の弱々しく勃ち上がっていたそこはどんどんと頭を擡げ、先端から蜜を溢れさせた。
雷音は跳ね上がる白い脚を自らの逞しい肩に掛けると、指を飲み込むそこを視姦した。
「いや…やぁっ…!!」
万里は孔に入りこむ雷音の腕を掴んで、その淫らな動きを止めようともがいた。
「へぇ…」
驚くほどに広がるそこに、思わず関心してしまう。
遠慮なく挿入した三本の指を、万里は痛がる様子もなく飲み込む。それは溢れ出る蜜からも分かることで、雷音はゆっくり万里の中心を扱き、出入りする指のスピードをあげた。
「あ!ヤダヤダヤダ!あっ!」
酷い快感なのだろう。小さく何度も蜜を吐き出し、万里の身体の震えは止まらない。
「あー!やっ!イクっ!雷音!」
名前を呼ばれ、雷音の方がたまらなくなった。指を抜き去るとその衝撃で万里は熱を吐き出したが、変わりに燃えるように熱い肉棒が万里を一気に貫いた。
「…は」
「やっー!!」
首を仰け反らせ、震える身体。万里の中は熱く、雷音の肉棒に絡みついて蠢いている。
一瞬でも気を抜けば持っていかれそうで、雷音は歯を食いしばってやり過ごした。
男の中がかなり善いとは聞いていたが、なるほど、奏大が自分としたがる理由が少しわかった。
「…大丈夫ですか?」
「あっ…は」
万里を抱き上げ騎乗位にすると、万里の白い喉に吸い付いた。自分の重みで更に雷音の熱を飲み込む孔に、万里がぎゅっと目を瞑って唇を震わせた。
「ひっど…自分」
「どうして?…誘ったのは、あなたでしょ?」
どうしてこんなことに…。そう問われれば、万里が妖艶に誘って来たからだ。
まるでそうなることが当たり前のように、男に身体を拓いたこともないくせに自然に雷音を誘惑して来た。
「ね?そうでしょ?」
「ん…。なぁ、あかん…動いて…」
中の焼ける様な熱が堪らないのか、慣れない違和感からか万里が雷音に抱きつき腰を揺らす。
本当に初めてかと訝しみそうなほどに、順応な身体だ。
「ん…動いてみてください。ね、気持ちいいとこ分かるでしょ」
意地悪い顔をして万里を見上げると、万里は真っ赤になり首を振る。
「あかん…出来ひん」
「出来る…ほら」
グチュッと卑猥な音を立てて、雷音の肉棒がゆっくり万里の中から出るが、万里の細胞はそれを許すまいと絡みつき蠢く。まるで淫乱。いや、淫乱そのもの。
こんな物を飲み込んだ事なんてないくせに、万里の中は雷音の熱棒をぎゅーっと締めたり緩めたりして実に美味しそうに食らいつく。
このままジッとしていても放てそうなほどに、中の動きは壮絶な気持ち良さだ。その刺激で雷音の雄は更に大きさを増して、万里の奥を突いた。
「…あっ」
「すごい…ヤバい。ね、早く動いてみてください。ほら、気持ちよく…なりたいでしょ?」
「意地悪い…自分…ん」
万里は諦めたように雷音の肩に手を置いて、ゆっくり腰を動かしだした。動かしてしまえば最後、快感の虜となり、それは止まることはない。
思った通り、不躾な言葉で言うならば万里は”淫蕩”だった。
「はっ!あ、あ、あ、あ、あー!やっ…きもち、ぃ…」
グチュグチュと卑猥な音色を奏でながら、万里の中を凄いスピードで肉棒が出入りをする。
時折腰を回し、善いとこを抉るようにするのはもはや娼婦のようだ。
締まりのなくなった口からは涎が垂れ、ひっきりなしに甘い声が漏れる。雷音は目の前で揺れる真っ赤な万里の果実に舌を這わし、歯で甘がみした
「いやっ…あ、無理イきたい!あ、っ…あー!」
自分で、中心の熱に手を這わそうとする万里の手を掴み、雷音はそのまま正常位に持って行く。
「ダメですよ…ギリギリまで我慢して」
「いや!いや!い…!雷音…っ!!あぁ!」
万里の言葉も聞かずに、雷音は上から叩きつけるように強く腰を振った。パンパンと肉の当たる音が響き、万里の悲鳴にも似た声がシンクロする。
「いやっ…!雷音!雷音!イキた、イキ…っ!あ、あああ、イク、イクッ!!あぁっ!雷音…っ!」
ホロホロ涙を流して訴える箇所を、雷音は己の切っ先で抉るように腰を打った。それと同時に、限界まで腫れ上がった万里のペニスを一気に扱いて先端を指の腹で撫で回した。
そして万里が声にならない叫びを上げて欲望を撒き散らし、同時に痛いほど締め付けられた雷音は万里の最奥で曝せた。
この夜は狂っていたとしか思えない。
風呂場で動けない万里をベッドに運び、嫌がる万里を何度も抱いた。泣いて善がる万里に酔わされ、身体の隅々まで舐め回し、最終的には万里を気絶させた。
初めての万里に酷いことをしたと思いつつ、淡白な自分がここまで追い詰められたことに苦笑した。
万里の身体を清め、胸に抱きしめて眠ると、どこか安心した気になった。

温もりの無さで目が覚めると、傍らには万里の姿はなかった。
さすがに極道がホストと過ごし、あろうことか組み敷かれることになるとは、万里の酔いも醒め、あってはならない過ちに脱兎の如く逃げ出したか。
当然と言えば当然だが、もう逢うこともないかと思うとズキッと胸が痛んだ。
「やばいやばい…相手は極道だって」
言い聞かせるように声を出し、ベッドから這い出て着替える。昨日はスーツを脱ぐまでは普通で居れたのに…と、自省する。
雷音がスーツを身に纏うと上品な音のベルが鳴った。ハウスキーピングがベッドメイキングに来たかとドアを開けると、そこにはまさかの神原が立っていた。
顔を出した雷音に口元だけで笑ってみせた神原に、雷音は「…え?」っと小さく声をあげた。
「おはようございます」
「あ、…おはようございます」
つられて挨拶をしたものの、まさか若頭を辱めた礼だとかで来たのかと雷音は思わず身構えた。
「申し訳ありません。明神は朝から行くところがありまして。あなたが気持ちよさそうに眠ってらっしゃるので、起こすなと言い付かりまして」
「は!?気持ちよさ…」
「昨日は明神に付き合って、お酒をだいぶと嗜まれていたのでは?」
「あ、そうです。はい、そうなんです…すいません」
何に対してか思わず謝罪する。
神原は何も知りませんと言わんばかりの口調だが、人の奥底まで射抜く様な冷たい目は何もかも知っていると言っているようにも思えて、雷音は目を伏せた。
「では、お送り致しましょうか」
「いや…」
「明神からの申しつけですので」
相好を崩さずに、だが少し威圧感も感じる言い方。要は断るなということかと雷音はただ頷いた。

二人してホテルの地下駐車場に降りると、他の車とは一段とレベルの違うBMW 760Liが目に入る。やはりと言うか何と言うか、神原はその車にキーレスを向けた。
「助手席に乗りますか?」
「え…あ、はい」
バックミラー越しに顔を見られるのがあまり好きではない雷音は、特に迷うことなく頷いた。
皮独特の香りが鼻を掠める。だがさすがBMW 7シリーズ最高峰。長身の雷音が座っても一切狭苦しさも何も感じない広さと、運転席とのゆったりとした感覚。沈み込むようなシートの座り心地から全て違う。
「珍しいですか?」
「え?」
「あなたぐらいの地位ならば、この車くらいすぐに買えるでしょう?」
「そんなことないですよ」
「ふふふ、ご謙遜を。そうだ楢崎さん、まだ出勤しないでしょ?お昼いかがですか?」
神原はニコリと笑うと、そう言った。確かに出勤にはまだまだ時間がある。これといった用事もないし、予定もない。
だが神原と食事など、会話が見つからない。それに、この男は正直苦手だ。
「いや」
「私、記憶力だけはいいんですよね」
「は?」
「関東統一連合会…御存知ですか?」
ドクンッと雷音の鼓動が跳ねた。ドッと身体中から、汗が一気に流れ出てきたような気がする。
それを悟られまいと、雷音は相好を崩さず首を傾げた。
「…関東…なんですか?明神組の関係先ですか?残念ながら、俺はそちらの世界には詳しくなくて…。勉強不足で申し訳ありません」
平静を保ち、神原の問いかけを交わした雷音はニコリと笑った。これで本当に交わせているのかは分からないが、神原は能面の様な感情の読めない顔で、ジッと雷音を見つめた。
「関東全体の極道の寄り合いみたいなものです。いきなり妙なことを聞いて申し訳ない」
「いえ、いいんですよ」
神原の眼鏡の奥の瞳が全て知っていると言っているようで、雷音はさり気なく目を逸らした。
騙し合いなら自信はある。ホストという職業柄、客に良い思いをしてもらうためにそれなりの嘘はつく。
だが、この男には通用しただろうか。あまりに簡単に引き下がる神原に、疑問さえ浮かぶ。
「お食事、美味しいところ知ってるんですけど」
神原がそうまた誘いをかけてくる。断る言葉を探していると、タイミング良く雷音の携帯が鳴った。それにホッとした。
「どうぞ」
神原の言葉に頭を下げ、雷音は通話ボタンを押した。
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