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第2章〜Everything Everyone All At Once〜⑬
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「いくつか確認したいことがあるんだが……」
放課後の時間でも、まだ養護担当の教諭が残っていた保健室で河野雅美を休ませてもらうように頼んだあと、再び新聞・放送部の部室に戻り、オレは、ブルームとゲルブに問いただした。
「キルシュブリーテと屋上にいた時の河野は、明らかにようすがおかしかったが、あれは、なにか原因があるんだな?」
オレの疑問に、ブルームが答える。
「えぇ……さっきも言ったみたいにキルシュブリーテが行った疑似催眠で、河野さんは、一時的に脳の活動を制限されて、意識が朦朧とする状態になっていたみたい。いまは、体調も安定していると思うし、基本的に私たちのセカイの技術で行われる疑似催眠は、人体に副作用の症状や後遺症が残ったりすることはないわ……」
「そうか……それを聞いて少し安心したが……キルシュブリーテをはじめとした『ラディカル』のメンバーやアンタ達のセカイの人間は、誰でも、その『疑似催眠』とか言う怪しげな術を使えるのか?」
「いいえ……疑似催眠を行うには、脳波に干渉する特殊な機器を使用しないといけないから誰でも使える、というわけではないわね……ただ、『ラディカル』のメンバーは、デバイスを携帯していることが多いから、今後も注意が必要なことに変わりはない」
なるほど……。
そのデバイスが、どんな風に人体に作用するのかは詳しくわからないが、副作用が後遺症がないとは言え、そんな恐ろしい機器を平然と使うとは、やはり、『ラディカル』のメンバーは油断ならない連中のようだ。
河野雅美をそんな人間たちに狙われるような事態に巻き込んでしまったことに、今さらながら、罪の意識が大きくなる。
罪悪感に苛まれながらも、オレには、まだ確認しなければならないことがあった。
「次に、キルシュブリーテが、オレに対して語ったことについてなんだが……オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの玄野雄司は、どうなったんだ? いや、そもそも、オレ自身を含めて、アンタらが『トリッパー』と呼んでいる並行世界に『トリップ』する人間が、セカイを去ったあと、そのセカイに残った人間は、どうなるんだ?」
「その質問には、ボクが答えさせてもらうよ」
慎重に問いかけたオレの疑問に対して、ブルームを制し、ゲルブが回答者として名乗りをあげた。
「玄野雄司……キミも、もう気づいているんじゃないかと思うけど、トリッパーが並行世界にトリップできるのは、自分と同じ人間が存在するセカイだけだ。そして、表現は良くないけど、ボクたち捜査官も含めてトリッパーは、トリップしたセカイの人間の意識を乗っ取るカタチで、そのセカイで活動することになる。そして、トリッパーが、セカイを去ったあと、そのセカイに残った人間は意識を取り戻すけれど、当然のようにトリッパーの行動履歴が、そのまま当人に引き継がれる」
「そうか……それじゃ、キルシュブリーテが話していた、オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの玄野雄司は……」
「不幸中の幸いと言っていいのか、一命は取り留めたみたいだけど、そのセカイのキミは、病院で長期療養中だよ」
――――――やはり、そうだったのか。
オレはこれまで、自らの行動が、並行するセカイの自分に危害を及ぼすという可能性をまったく考慮できていなかった。
自分自身の軽率な行動が、異なるセカイの自分に影響を与えであろうことは、当然、考えなければならないことだったのだが……。
すでに身の危険にさらされた河野だけでなく、精神的な負担を強いてしまった三葉や桃に加えて、別世界の自分に対する申し訳なさと己の身勝手さに、いますぐ、自分自身の存在を消してしまいたくなるような感情が、胸の底からこみ上げてきた。
そして、彼らに、再びたずねる。
「オレは……アンタ達のセカイの法律で裁かれる対象になったりするのか?」
別のセカイの……とりわけ、並行世界へのトリップを行うことが政府公認で認知されているセカイでの法体系が、どうなっているかはわからないが―――――ー。
自分は、ブルームやゲルブのセカイの住人ではないとは言え、もしも、そのセカイにおいて何らかの罪に問われるのであれば、周囲の人間や別セカイの自分に対して、身体的・精神的に害を及ぼしてしまったオレ自身にできることは、彼ら捜査官の身を委ね、法律に従って罪をつぐなうしかない。
そんな想いで、捜査官を名乗るふたりに、自分が関わった行為に対する法的な罰則についてたずねたのだが、彼らの答えは、オレの予想とは異なるものだった。
「キミの心配とは関係なく、今のところ、ボクらが把握している事実からは、キミが法的に問われることはない」
ゲルブの返答に、オレは驚き、
「どういうことだ?」
と、質問をくり返す。
「ボクらのセカイでは、並行世界に関する認識が一般人にも浸透しているけど、キミのように、偶発的にトリップする能力を手に入れたという例は皆無なんだ。トリッパーは、免許制を敷かれていて違法者には相応の処罰が課せられるけど、連邦公認のトリッパーではないキミは、この免許制の適用外になっている」
ゲルブに続いて、ブルームが言葉を付け加えた。
「つまりは、あなた自身が、私たちのセカイにとって、イレギュラーな存在だから、法整備も対応が追いついていないのよ」
彼らの答えに、オレは、「そう、なのか……」と気の抜けた返答をするより他はなかった。
放課後の時間でも、まだ養護担当の教諭が残っていた保健室で河野雅美を休ませてもらうように頼んだあと、再び新聞・放送部の部室に戻り、オレは、ブルームとゲルブに問いただした。
「キルシュブリーテと屋上にいた時の河野は、明らかにようすがおかしかったが、あれは、なにか原因があるんだな?」
オレの疑問に、ブルームが答える。
「えぇ……さっきも言ったみたいにキルシュブリーテが行った疑似催眠で、河野さんは、一時的に脳の活動を制限されて、意識が朦朧とする状態になっていたみたい。いまは、体調も安定していると思うし、基本的に私たちのセカイの技術で行われる疑似催眠は、人体に副作用の症状や後遺症が残ったりすることはないわ……」
「そうか……それを聞いて少し安心したが……キルシュブリーテをはじめとした『ラディカル』のメンバーやアンタ達のセカイの人間は、誰でも、その『疑似催眠』とか言う怪しげな術を使えるのか?」
「いいえ……疑似催眠を行うには、脳波に干渉する特殊な機器を使用しないといけないから誰でも使える、というわけではないわね……ただ、『ラディカル』のメンバーは、デバイスを携帯していることが多いから、今後も注意が必要なことに変わりはない」
なるほど……。
そのデバイスが、どんな風に人体に作用するのかは詳しくわからないが、副作用が後遺症がないとは言え、そんな恐ろしい機器を平然と使うとは、やはり、『ラディカル』のメンバーは油断ならない連中のようだ。
河野雅美をそんな人間たちに狙われるような事態に巻き込んでしまったことに、今さらながら、罪の意識が大きくなる。
罪悪感に苛まれながらも、オレには、まだ確認しなければならないことがあった。
「次に、キルシュブリーテが、オレに対して語ったことについてなんだが……オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの玄野雄司は、どうなったんだ? いや、そもそも、オレ自身を含めて、アンタらが『トリッパー』と呼んでいる並行世界に『トリップ』する人間が、セカイを去ったあと、そのセカイに残った人間は、どうなるんだ?」
「その質問には、ボクが答えさせてもらうよ」
慎重に問いかけたオレの疑問に対して、ブルームを制し、ゲルブが回答者として名乗りをあげた。
「玄野雄司……キミも、もう気づいているんじゃないかと思うけど、トリッパーが並行世界にトリップできるのは、自分と同じ人間が存在するセカイだけだ。そして、表現は良くないけど、ボクたち捜査官も含めてトリッパーは、トリップしたセカイの人間の意識を乗っ取るカタチで、そのセカイで活動することになる。そして、トリッパーが、セカイを去ったあと、そのセカイに残った人間は意識を取り戻すけれど、当然のようにトリッパーの行動履歴が、そのまま当人に引き継がれる」
「そうか……それじゃ、キルシュブリーテが話していた、オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの玄野雄司は……」
「不幸中の幸いと言っていいのか、一命は取り留めたみたいだけど、そのセカイのキミは、病院で長期療養中だよ」
――――――やはり、そうだったのか。
オレはこれまで、自らの行動が、並行するセカイの自分に危害を及ぼすという可能性をまったく考慮できていなかった。
自分自身の軽率な行動が、異なるセカイの自分に影響を与えであろうことは、当然、考えなければならないことだったのだが……。
すでに身の危険にさらされた河野だけでなく、精神的な負担を強いてしまった三葉や桃に加えて、別世界の自分に対する申し訳なさと己の身勝手さに、いますぐ、自分自身の存在を消してしまいたくなるような感情が、胸の底からこみ上げてきた。
そして、彼らに、再びたずねる。
「オレは……アンタ達のセカイの法律で裁かれる対象になったりするのか?」
別のセカイの……とりわけ、並行世界へのトリップを行うことが政府公認で認知されているセカイでの法体系が、どうなっているかはわからないが―――――ー。
自分は、ブルームやゲルブのセカイの住人ではないとは言え、もしも、そのセカイにおいて何らかの罪に問われるのであれば、周囲の人間や別セカイの自分に対して、身体的・精神的に害を及ぼしてしまったオレ自身にできることは、彼ら捜査官の身を委ね、法律に従って罪をつぐなうしかない。
そんな想いで、捜査官を名乗るふたりに、自分が関わった行為に対する法的な罰則についてたずねたのだが、彼らの答えは、オレの予想とは異なるものだった。
「キミの心配とは関係なく、今のところ、ボクらが把握している事実からは、キミが法的に問われることはない」
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と、質問をくり返す。
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