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遊馬友仁

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第13章~今夜はトークハード~②

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土曜日としては異例なことに、この日、阪神競馬場には、六万人以上の観衆が集っていた。
その観客の視線のほとんどが、おそらく秀明と同様、二頭に注がれているはずだ。
午前中に競馬場に到着した秀明は、春先の気温の低さも気にせず、自宅から持って来た少し多めの荷物で屋外のベンチ席を確保しながら、メインレースの発走時間を待っていた。

第四十四回阪神大賞典 一九九六年三月九日
阪神競馬場 芝三〇〇〇メートル

一枠一番  スティールキャスト
二枠二番  ナリタブライアン
三枠三番  トウカイパレス
四枠四番  ノーザンポラリス
五枠五番  チアズセンチュリー
六枠六番  アワパラゴン
七枠七番  ルイボスゴールド
七枠八番  ハギノリアルキング
八枠九番  サイレントトーキー
八枠十番  マヤノトップガン

午後三時四十五分───。
スターターが台に上がり、フラッグが振られると同時に、ファンファーレが鳴る。
競馬場内のアナウンスが実況放送に切り替わった。
屋外スタンド席の秀明も、固唾を飲んで、スタートの瞬間を見守る。

ナリタブライアンにとっては、正念場。
マヤノトップガン、ゲートイン終わって、スタート体勢が整いました。
さあ、ゲートが開いた。
おっと、ナリタブライアン好スタートを切って先頭へ行こうというところ。
さあ、ナリタブライアンは、ちょっと下げた感じ。
内からスティールキャスト、それからアワパラゴンであります。
そして、2番がナリタブライアンでありまして、体重はプラス8キロ。七五三の豪脚がよみがえるかどうか?
ナリタブライアン、その外にトウカイパレス。
内から4番のノーザンポラリスであります。
ピンクの帽子マヤノトップガンは、外、外を通っておりますが、2番のナリタブライアンは、ちょっと下がって中団に後退しました。これから外へ出て行こうというところ。
それから、9番がサイレントトーキー。
それから、チアズセンチュリー、ハギノリアルキング、7番のルイボスゴールド。
こんな体勢で第4コーナーに掛かって参ります。
10頭でありますが、ナリタブライアンは、外へ出して、10番のマヤノトップガンを見る様なかたちになっています。
先頭は、1番のスティールキャスト。
それから、アワパラゴン。そして、トウカイパレスが早めに行きました。
マヤノトップガンであります。マヤノトップガン頭巾を外しました。
それから、4番のノーザンポラリス。
そして、その外ナリタブライアン。シャドーロールが揺れています。おそらく、大歓声が挙がることでありましょう。
体重はプラス8キロ。現在、3、4、5、6番手。ナリタブライアン6番手であります。
現在、6番手で第1コーナー右にカーブを取りました。
阪神大賞典、ナリタブライアンにとっては、文字通り正念場のレースになりました。
ナリタブライアン6番手。
さあ、ナリタブライアン外に出して、前にはマヤノトップガンがいます。そして、後ろにはハギノリアルキング。
前にも後ろにも、こわい馬がいますが、ちょうど2番のナリタブライアンは、5番手から6番手といった位置であります。
さあ、10番がマヤノトップガン。3番がトウカイパレスであります。これを見るようにして、ナリタブライアン。
後ろからは、サイレントトーキーとハギノリアルキングが、じわっじわっと差を詰めてまいりました。
完全に平均ペースになりました。
さあ、動いた!マヤノトップガン行った!マヤノトップガン!
これと一緒にナリタブライアンも行った!
さあ、マヤノトップガン!有馬記念を制したマヤノトップガンが先頭に立った!昨年の年度代表馬。
そして、外から黒い帽子が、スーッと上がって来た!スーッとナリタブライアンがマヤノトップガンの外に行った!
マヤノトップガンの外に行ったナリタブライアン!
さあ、問題は直線!ナリタブライアン、問題は直線!
残りあと400メートルであります!
マヤノトップガンと外からナリタブライアン!
昨年の年度代表馬!
一昨年の年度代表馬!
大歓声が挙がる阪神競馬場!
大歓声が挙がる阪神競馬場!
さあ、ブライアン!
甦れ、ブライアン!
ブライアン、外!武の左ムチ!
内からマヤノトップガン!
ブライアン!ブライアン!
ブライアン出た!ブライアン出た!
1年ぶりの勝利か!?
内からマヤノトップガン差し返す!
さあ、どっちだ!?どっちだ!?どっちだ!?
内か外か!?
内か外か!?
わずかに外か!?


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