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第11章~いつかのメリークリスマス~⑥
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「『ジャングルの国のアリス』を読ませてもらって、亜莉寿さんが、この本をとても大切にしていることと、その理由がわかりました。そのことを伝えると、いま、彼女がご両親に語った彼女自身の将来の夢を僕に話してくれたんです」
そこまで話し終えると、秀明は、緊張からか喉の渇きを感じ、目の前の紅茶で、喉を潤す。
そして、自分を見つめる亜莉寿に向かって、首を縦に振って合図をうながすと、
「がんばって」
と小声でささやく。
秀明のアクションを目にした亜莉寿は、小さくうなずき、再び語り出した。
「アメリカの映画の世界で脚本家を目指すなら、進学先や就職先を国内に限定することはないなって考えたの。アメリカの大学なら、日本の大学と違ってシナリオの書き方や映画の企画化とかも本格的に学べる講義があるから───。それに、アメリカの大学を目指すなら、高校三年生になってから入学試験を受けるためにアメリカに渡るより、出来るなら、アメリカの高校に編入して、向こうの大学受験に備える方が、色々な負担も少ないのかなって……」
そこまで一気に語ったあと、彼女は一息ついて、
「あと、ママと一緒に居られる方が心強いから……」
と、つぶやいた。
秀明は、亜莉寿が、母親のことをそう呼ぶのを初めて聞いた。
室内の緊張が、ゆるやかに、ほぐれていく───。
亜莉寿が語り終えたことを確認すると、秀明は、再び三人の様子を観察しながら、タイミングを見計らって口を開く。
「亜莉寿さんから、転校したいと考えている、と聞かされたのは、秋になってからのことなんですけど。いま、彼女が話してくれた様なことを聞いた時に、自分の夢や目標にたどり着くための進学先を考えて、現時点で可能なことや近い将来に向けて何をすれば有利なのか───。そうしたことを合理的に考えることができていて、亜莉寿さんらしいな、と感じました」
ここで、一呼吸ついて、あらためて紅茶を一口すすると、
「そんな風に将来の夢を語れる亜莉寿さんを見て、自分は、羨ましいと思いましたし、何より、純粋に彼女の夢を応援したいな、と感じました。よその家の人間が、ご家族の問題に口を出すのは、とても失礼なことだとは思うんですけど……。彼女の夢の実現性を高めるために、アメリカに行くことを考えてあげてもらえないでしょうか?」
そう言ってから、秀明は頭を下げた。
亜莉寿のクラスメートの行動に驚いたのか、少しの間、彼女の両親は声が出なかったが、真莉が秀明に、
「頭を上げなさい、有間くん。それはアナタがするべきことじゃないわ」
と告げる。
すぐに頭を上げた秀明と亜莉寿に向かって、母親は、さらに続ける。
「確認しておくけれど───。今の学校の方針に嫌気が差したとか、後ろ向きな理由ではないのね?」
秀明は、一瞬ドキリとしたが、亜莉寿は、力強く首を縦に振り、
「うん!」
と答えた。
父親の博明は、優しくたずねる。
「話したいことは、すべて話せたかい?」
「うん」
亜莉寿は、再びうなずく。
彼女の返答を待って、博明は続ける。
「そうか───。亜莉寿にとっても、父さんと母さんにとっても、重要な問題だから、今すぐに結論を出せる問題ではないのは、わかってほしい。もう少し三人で話し合って考えよう」
父の話しを聞き終わると、
「わかった。ありがとうパパ」
そう言って、亜莉寿は微笑んだ。
結論が出た訳ではないが、亜莉寿の想いは伝わった様だ。安心して、身体のチカラが抜けて行くのを感じていた秀明の様子を見て、博明が語り掛ける。
「有間クンも、お付き合いありがとう。こんな時間になって申し訳ない」
「いえいえ。こちらこそ、急にお邪魔して申し訳ありませんでした」
秀明は、そう答えた後、リビングの時計に目をやると、時計の針は、午後六時を回っていた。
「あっ、ウチに電話しとかないと」
と、無意識のうちにつぶやく。
それを聞いた博明は、
「なら、携帯電話で、ご自宅に連絡するかい?あと、有間クンとは少し話しをしたいんだけど、時間は大丈夫かな?」
と秀明に、たずねた。
唐突な申し出に、秀明は驚き、
(何を言われるんやろう?)
と不安な想いが、一瞬、顔に出る。
しかし、博明は、
「ああ、ちょっとお礼を言いたいだけだから、緊張しないで」
と、穏やかな笑みで答えた。
「わかりました。時間も、まだ大丈夫です」
秀明が、安心して返答すると、
「じゃあ、ちょっと書斎の方に移動しようか?亜莉寿は、母さんと夕飯の準備をしてくれないか?」
博明は、サッと立ち上がって移動を促す。
秀明も、連れて立ち上がると、先に書斎へと向かう博明の後について行くことにした。
そこまで話し終えると、秀明は、緊張からか喉の渇きを感じ、目の前の紅茶で、喉を潤す。
そして、自分を見つめる亜莉寿に向かって、首を縦に振って合図をうながすと、
「がんばって」
と小声でささやく。
秀明のアクションを目にした亜莉寿は、小さくうなずき、再び語り出した。
「アメリカの映画の世界で脚本家を目指すなら、進学先や就職先を国内に限定することはないなって考えたの。アメリカの大学なら、日本の大学と違ってシナリオの書き方や映画の企画化とかも本格的に学べる講義があるから───。それに、アメリカの大学を目指すなら、高校三年生になってから入学試験を受けるためにアメリカに渡るより、出来るなら、アメリカの高校に編入して、向こうの大学受験に備える方が、色々な負担も少ないのかなって……」
そこまで一気に語ったあと、彼女は一息ついて、
「あと、ママと一緒に居られる方が心強いから……」
と、つぶやいた。
秀明は、亜莉寿が、母親のことをそう呼ぶのを初めて聞いた。
室内の緊張が、ゆるやかに、ほぐれていく───。
亜莉寿が語り終えたことを確認すると、秀明は、再び三人の様子を観察しながら、タイミングを見計らって口を開く。
「亜莉寿さんから、転校したいと考えている、と聞かされたのは、秋になってからのことなんですけど。いま、彼女が話してくれた様なことを聞いた時に、自分の夢や目標にたどり着くための進学先を考えて、現時点で可能なことや近い将来に向けて何をすれば有利なのか───。そうしたことを合理的に考えることができていて、亜莉寿さんらしいな、と感じました」
ここで、一呼吸ついて、あらためて紅茶を一口すすると、
「そんな風に将来の夢を語れる亜莉寿さんを見て、自分は、羨ましいと思いましたし、何より、純粋に彼女の夢を応援したいな、と感じました。よその家の人間が、ご家族の問題に口を出すのは、とても失礼なことだとは思うんですけど……。彼女の夢の実現性を高めるために、アメリカに行くことを考えてあげてもらえないでしょうか?」
そう言ってから、秀明は頭を下げた。
亜莉寿のクラスメートの行動に驚いたのか、少しの間、彼女の両親は声が出なかったが、真莉が秀明に、
「頭を上げなさい、有間くん。それはアナタがするべきことじゃないわ」
と告げる。
すぐに頭を上げた秀明と亜莉寿に向かって、母親は、さらに続ける。
「確認しておくけれど───。今の学校の方針に嫌気が差したとか、後ろ向きな理由ではないのね?」
秀明は、一瞬ドキリとしたが、亜莉寿は、力強く首を縦に振り、
「うん!」
と答えた。
父親の博明は、優しくたずねる。
「話したいことは、すべて話せたかい?」
「うん」
亜莉寿は、再びうなずく。
彼女の返答を待って、博明は続ける。
「そうか───。亜莉寿にとっても、父さんと母さんにとっても、重要な問題だから、今すぐに結論を出せる問題ではないのは、わかってほしい。もう少し三人で話し合って考えよう」
父の話しを聞き終わると、
「わかった。ありがとうパパ」
そう言って、亜莉寿は微笑んだ。
結論が出た訳ではないが、亜莉寿の想いは伝わった様だ。安心して、身体のチカラが抜けて行くのを感じていた秀明の様子を見て、博明が語り掛ける。
「有間クンも、お付き合いありがとう。こんな時間になって申し訳ない」
「いえいえ。こちらこそ、急にお邪魔して申し訳ありませんでした」
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「あっ、ウチに電話しとかないと」
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しかし、博明は、
「ああ、ちょっとお礼を言いたいだけだから、緊張しないで」
と、穏やかな笑みで答えた。
「わかりました。時間も、まだ大丈夫です」
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「じゃあ、ちょっと書斎の方に移動しようか?亜莉寿は、母さんと夕飯の準備をしてくれないか?」
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