息子が悪役令嬢だった件

小説の世界 再び 匠 その１０

　
　親戚同士とか、お見合いの話とか、色々つっこみたいが、俺との結婚のことは・・・

　結婚の話をさせないなんて、なんでそうなったんだ？

「えっ？なんで」

　と、つい、聞いてしまう。

　ちょっと機嫌悪く聞こえてしまったみたいで、彼女はますます慌てた。

「両親には、彼は凄くしっかりしてて、立派な社会人だけど、ものすごく若いから、結婚なんか一ミリも考えてないと、ちゃんと何回もくぎを刺しといたから絶対大丈夫だから安心して。」

「いや、それは・・・」

　今度は、一ミリも考えてないなんて、なぜそうなる？

　うっ、これって、今すぐプロポーズした方がいいか・・・でもファミリーレストランでいいのか？

　もう、この際・・・どこでもいいか？

　ぐるぐる考えているうちに、彼女が、爆弾発言をする。

「私も、結婚は一ミリも考えてないって、ちゃんと言っといたから」

「えっ、え？」

「実家暮らしで、甘えて、自立もしてないし、情けないことに私、貯金あまりないし、生きていくのが、せいいっぱいで結婚できる費用は実質０だからって。」

　いや、結婚式の費用や生活費は俺が全部出すって・・・まだプロポーズしてないけど。

　でも、何回も、俺、お金はあるって言ったはずだけどな・・・

　でも、とりあえずは挨拶していいんだよな。

　彼女は、おそるおそる、

「挨拶の件だけど・・・本当に大丈夫かな？急で悪いんだけど、できれば今日中に日にちを決めたいんだけど」

　もう一度確認してくる。

　今日中なんだ・・・

「もちろん大丈夫だよ」

　というと、あきらかに、ほっとした顔になって、

「よかった。これでしばらくは静かになるはず」

　と言って、彼女は母親に連絡を取る。

　本当に切羽詰まった感じがひしひしとする。

「ちょっと、ごめんなさい」

　と言って彼女が、席を外す。

　そして、電話が鳴るたび、お店を出たり入ったりしてる。

　なんでも、まだ父親が現役で働いているようで、母親に時間の都合がわからないから、もう少し待ってくれと言われたらしい。

　でも、何がなんでも、今日中に決めたいらしい。

　なので、またドリンクをおかわりする。

　そもそも、おかわり自由のドリンクバーだったから、今度は、冷たいジュースにした。

　俺も、彼女も、お腹が、これでもかってほど水分で満たされたころ、ようやく父親の仕事が終わったのか、やっと連絡が来て、今度の日曜日に決まった。

　そんなこんなで、挨拶の日にちを決めたので、予定より、お店を出るのが遅くなってしまったので、ここで解散になってしまった。

　それに、彼女はこれから両親と待ち合わせをして、晩御飯がてら、家族会議をするらしい。

　家族会議か・・・本当に大丈夫なのか・・・