息子が悪役令嬢だった件

溺愛される理由 １

　
　どうやら、小説を読みながら、いつの間にか寝ていたらしい。

　初日だし、疲れてたのかな。

　侍女が、

「朝御飯いかがですか」

　と言った。

　朝食はこの部屋で食べれるらしい。

　動きやすいワンピース姿でいれるので、とりあえずほっとした。

　さすがに朝からドレスは着たくないもん。

　食事は、朝からとても豪華だったけど、私一人で食べる量かなと思っていたら、侍女が説明してくれた。

　なんでもアルは、朝から工房で、急ぎの仕事をしているので、食事は別にするとのこと。

　騎士団長なのに、工房でお仕事なんだと思って、少し違和感を感じる。

　騎士団長の仕事って、魔物退治とかじゃないの・・・かな。

　そう思っていると侍女が、

「奥さまのお部屋の家具も、全部、旦那様がお作りになったんですよ」

　と言われ、びっくりする。

　選んでくれたんじゃなくて、あれ、アルが作ったんだ。

「えっ、あの可愛いけど、機能的な家具って手作りだったの？」

　職人じゃん。

　それはかなりすごい　尊敬しちゃうな。

　ラベンダー色を基調とした家具って珍しいよねと思った。

　でも、色のコントラストを工夫しているので、可愛い中にも落ち着いた雰囲気になっている。

　しかも、私の理想の家具である可愛いと、機能性を両方兼ね備えていたから、本当に感動した。

　あくまでも、私の理想の家具だから、なかなか人に賛同してもらえなかったんだけど、売っている家具って、可愛さをとるか、機能性をとるかで、毎回折り合いがつかなく、私は最終的にはいつも機能性をとってきた。

　でも本当は、とっても可愛らしいものが好きだったので、部屋にあったのは、夢にまでも見た理想の家具だったのだ。

　例えば食事をするテーブルは楕円形が可愛いと思うんだけど、機能的ではないなって。

　しかも珍しい形のテーブルは高いんだよねって思ってたんだけど、このテーブル、長方形にもなる優れもの。

　気分によって、楕円形と長方形にかえれるなんていい。

　それにカトラリーや、自分の普段使う食器やランチョンマット等、個人の物がはいる引き出しがテーブルの下についている。

　椅子は物凄くゴージャスなんだけど、収納がついていて、超便利。

　テーブルの側には、お洒落なワゴンがあって、テーブルに何かこぼしたときに、すぐに拭けるように、布巾や雑巾などが収納できたり、ごみが出た時にさっと入れられるおしゃれなデザインのゴミ箱がはいっている。

　食器棚も、私好みの食器が厳選されて入ってた。

　本棚は、地震などで倒れてこないように、基本作り付けで、私は、ほこりが入るのが嫌なので、本の大きさによって棚が変えられるジャストサイズがいいのだ。

　それもクリアしている。

　理想は透明な扉がついていて、本の題名がちゃんとわかるようにしたいし、扉はスライドで開けられる。

　これもバッチリ。

　私の理想がここに集合している・・・

　あと、これは絶対にないと思ってたのが、本棚の奥に秘密の部屋に続くボタンがあって、扉の奥にとっても素敵な秘密の部屋があれば、最高なんだけどなと思っていた。

　まあ、秘密基地にあこがれるというか、なんというか、本当は冗談だった。

　だけど・・・

　だから本当にあるとは思わなかった。

　よく見ると本棚にボタン。

　あるわ。

　でも、さすがに押さなかった。

　だってなんか、すごい危険な感じがする

　気のせいだといいんだけど・・・