息子が悪役令嬢だった件

息子が悪役令嬢？ その１０

「それにしても、１４才で婚約なんて早すぎない？」

　いくらなんでも、心配になる。

「お母さんの感覚だと、早いかもしれないけど、この手の恋愛小説は幼い頃に、まず親同士が決めた婚約から始まり、学園生活が始まるとしばらくは悪役令嬢が婚約者として紹介されまくるが、ヒロイン登場で真実の愛に目覚めた王子に婚約破棄を言い渡されてからの、運が悪ければ国外追放で追い出されるってところまでテンプレなんだけど・・・」

　ちょっと待て、突っ込みどころが満載だな、でも・・・

「テンプラ？」

「はあ？何がテンプラだよ、定番ってこと」

「いやいや、知ってたから、ただ最近、耳が遠くて・・・」

　冷静な声でつっこまれる。

「むしろ若返ってるだろ！」

　確かにそうなんだけど、それにしても悪役令嬢っって、そんなハードな人生が定番なんだな。

　聡、ちょっと、やばくない？

「とにかく、最初のフラグ回避は、小説と変えてイザベラが多分トップで学校に入学すればなんとかなるかも・・・」

「トップ入学が、なんで回避なの？」

「本編では王子が、トップ入学するからな」

　へえ・・・そうなんだ。

「おそらく、俺が思うには、イザベラがトップ入学だと、王子は自分より優秀なイザベラにコンプレックスを刺激され、イザベラは自分より頭がいい生意気な女と思われる予定。俺は王子に自分より頭が悪い人はお断りっていえばいいからな。まあ、これもよくあるパターンだし、この小説の設定だと、王子はつねにトップでいないといけないからな。」

「へえ、王子も大変なんだね。でも、もしイザベラが負けたらどうなるの？」

「もともとイザベラは王子より頭ががいい設定だったけど、入学するときのテストはどうやら手を抜いていたらしい。後に続編で明かされるんだけど話すと長くなるから・・・」

「続編？」

「まあそれは置いといて、二位になるとどのみち王子の次に優秀で家柄も申し分ない女性がいるということで、イザベラとの婚約が成立してしまう」

「まずいじゃん」

「多分そうなると、本編のストーリーになるはずだから、イザベラの方が王子を追いかける展開になる。もともとイザベラは努力家の王子のこと尊敬してるし、本編だと王子のこと大好きだしな」

「へえ、イザベラって、王子の事好きなんだ・・・」

　それってロマンチックなんだ・・・よね？

「本編はね・・・文武両道でつねに努力してるやつって、大抵の女の子は好きだろ？今はイザベラは俺だからなんとも思ってないけど」

　うーん、

「私だったら、王子様でも、そこまで完璧だと、かえって引くけどな・・・」

「そうなんだ？女心はマジで、わからないな・・・でも本編ストーリーになると、そもそもコミュ症の俺が取り巻きつくって、ヒロインをいじめる方がハードル高いし、全く自信がないよ。頑張っていじめないと婚約破棄にならないかもしれないし・・・」

　なんだか、変な話だな。

「そもそも論としていじめるのに自信ある人の方が怖いし、いじめるのを頑張るのも訳がわからないよ。じゃあ、むしろ逆に成績が悪かったら？その方がフラグたたないんじゃない？」

　成績を下げる方が簡単にできそうだしね。

　すると、

「確かにその方法もあるけど、それだと魔法使いの弟子になれない」

「魔法使いの弟子？」

「それこそが、俺が最終的に目指すルートだから」