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溶ける悪夢

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 ガクンッと体が揺れて目が覚めた。闇の中で目を見開き、英二は荒い呼吸を繰り返す。眠っていた体にだんだんと血液が巡っていくじんじんとした感覚があった。先程まで見ていた悪夢が未だ体を蝕んでいる。その体制のまま暫く動けず、うるさい心臓が収まるまで横向きでじっとしていた。
 たかが夢だ、と割り切るまで暫く時間がかかった。こんな歳になって悪夢に怯えるなんて。知らず滲んでいた涙を拭って馬鹿らしいと自嘲してみる。それでも夢とはいえ実体験した恐怖はなかなか抜けていかなかった。
 もう一度眠ることもできなくてころりと寝返りを打つと、すやすやと心地よさそうな寝息が聞こえた。闇に慣れた目には秀和の幸せそうな寝顔が映る。開いたままの口は少し微笑んでいるようにも見えた。
 不安を紛らわすように開いた距離を詰め、足元に丸まった掛け布団を持ってくる。二人に布団をかけ、秀和にきゅっとしがみついた。秀和の胸に耳をつけると、ゆったりとした鼓動が伝わってきた。とくん、とくん。一定のリズムに心が次第に凪いでいく。
 悪夢の名残が去っていくのが分かる。今本当に感じているのは秀和の温かな体温と鼓動だ。甘えるように胸に頬を擦り付けると、秀和は少し呻いてころりと寝返りを打った。自然と包み込まれるような体制になって、さらに安心してしまう。抱き枕だとでも思っているのかもしれないが、それでもよかった。
 背中に回った温かい手に、だんだん意識は遠のいていく。秀和の柔らかな呼吸に、英二の呼吸のリズムが合わさっていった。勝手に落ちていく瞼をそのままに、とろりと眠りに落ちていく。体を寄せて、二人は抱き合ったまま静かに眠っている。
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