幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

皆の報酬②

「石川か...。彼は相当よく働いてくれたよ。優樹が覚醒できた理由の一つに彼のおかげもあるからね」

「なに？　石川が優樹の覚醒に関与していた？　どう言う事だ？」

「言ったままの意味だよ。物語終盤の彼の献身的な優樹への奉仕活動はなかなか見ものだったよ。前半に相当酷いことをしたことを悔やみながら残りの生涯を君と優樹に捧げようとしていたからね」

「あの石川が...か？」

「そうそう、あの石川がだよ。まあ君は知らないのかもしれないけど、100年前の彼がもう一度人前に立てるようになったのは君と優樹のおかげだからね」

「100年前の記憶...。そうだ！！！　そういえばなぜ石川と佐藤には前世の記憶が戻ってきていたのに、優樹の記憶は一切戻らなかったんだ！？」

　俺の質問に彼女は楽しそうに答えた。

「それはね。愛川が100年前の優樹の存在を自分の中に封じ込めていたからだよ。実質殺したと言ってもいいね。だって愛川は優樹の記憶を覗きまくって和希、貴方の趣味嗜好を観察しながらどう言う子が好みなのかの仮説をいくつも立てていたわ。まあ、そこまでしても自分が大好きなカズ君にとっての優樹と言う存在を超えられないと言う事を理解していたみたいだけど」

「あいつ...そこまでして俺と結ばれたかったのか？」

「そうみたいだね。今回の報酬も【カズ君と結ばれる】に全振りしたみたいだし、もしかしたら彼女の家庭環境とかも変わるかもね。第一企業の御令嬢と一般市民じゃあ釣り合わないもの。もしかしたら彼女も一般市民かするか、一般市民と金持ちが結婚するのも普通な価値観の世界になるかってところかな」

　俺は愛川の愛を一心に受けていたからわかる。

　あいつはやり方がヤバかっただけで俺を思う気持ちだけは普通の女の子だった。

　その願いが確定しているというのであれば、願わくば普通の感性を育てきっていて欲しいな...。

「...話がそれたね。では石川の願いを答えよう」

「あ...ああ」

　愛川の名前が出てくると話がそっちに向かってしまう。

　どれだけ存在感があるのかと思ってしまう。

(やっぱり愛川って存在の強さがそちらに引っ張っていくんだろうな...)

　そう思った俺は愛川の名前を出さないように話を進めていくのだった。