幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

緑髪の少女②

「あう...」

　そう呟いている小鳥遊優樹と言う少女の頬に手を置く。

「...」

　そうしていると確かに彼女の存在感を俺の中に感じていた。

「...優樹？」

　彼女の廃人当然の姿でも感じる物はあった。

　それは優しくて甘い香り。

　どこかで嗅いだことのある匂いに俺は驚いていた。

(...この香り。結美に似てる)

　俺は彼女の手を取った。

「優樹」

　彼女の名前を呼ぶ。

　ただそれだけなのに何故か満たされていく自分がそこにいた。

「...和希？」

　その言葉を聞いていたラカラが驚きの声を上げた。

「嘘だ！　あれから半年間。一度も声を発してこなかった優樹が喋るようになるなんて！！！　兄ちゃん！　もっと声をかけてあげて！」

　興奮気味なラカラに応えるかのように俺は声をかけ続ける。

「優樹！　俺だ！　和希だ！」

「和希...？　和希...。　和希！！！」

　徐々に虚な瞳に光が溢れ始める。

　白く濁っていた虚な瞳には今や新緑の権化のような光が灯し出されている。

「今までどこに行っていたの？　私...凄く寂しかったんだよ...！」

俺の体を抱き寄せてくる彼女の声は震えていた。

「...悪かったな」

俺はそう呟くと彼女の体を抱きしめ返すのだった。