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水着回⑨

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 俺はケロナの盛り付けていた刺身を箸で摘む。

(本当にマグロみたいな赤身だな...)

 凄く身が締まっていそうで美味そうである。

 赤身の刺身を醤油に漬けて軽く噛んでみる。

 もみゅもみゅ...!

 赤身魚の旨味が凝縮されたかのような凄まじい爆発感のある美味しさに舌を唸らせた。

「美味い!」

 深海魚と言うから少し食べるのに抵抗感があったが、まんまマグロみたいな味だ。

 これなら確かにどんどん食べられるな。

「うまっ! 兄ちゃんこれ美味いな!」

 そう言いながら手づかみでワイルドに食べ続けるラカラ。

「ラカラちゃん、ちゃんとお箸使わないとダメだよ」

 優樹がそう言い聞かせているが、ラカラは面倒臭そうにしている。

「それ使いにくいんだもん」

 ラカラの言う通り俺と優樹は箸を扱い慣れているが、異世界人達はそこまで馴染みがないようだったな。

 アルシェやシュナクラスになると箸も扱えるようだが、逆に言えば庶民クラスに箸を扱う者が少ないと言うことだろう。

 アルシェは作法として習い、シュナは旅先で学んだと聞いてる。

 その点ラカラはそう言う機会に恵まれなかったのだろう。

 彼女は俺達の中で1番作法がなっていないと断言できるしな。

 まあ、親が早くに亡くなりずっと1人で生きてきた少女が作法など知らなくても当然ではあるのだが...。

 しかし、優樹の矯正のお陰で少しずつだが箸も使えるようになっているのは分かる。

 でもやっぱり手づかみの方が圧倒的に食べやすいのだろう。

 ラカラは何を食べるにしても基本は手づかみだったのだかた...。

 食事の度に優樹がそれを矯正しようとしている光景はもはや俺たちの食事シーンの一部となっていた。

 彼女達のやりとりを見ていると肉の焼けるいい匂いがしてくるのだった。
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