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大聖堂での暮らし

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 大聖堂での暮らしは悪くない。

 俺が奴らの弱みを握っていることもあって毎日最高のおもてなしをしてくれるからだ。

 質の良い部屋や聖水風呂なども使い放題なので、俺の体に染み付いている呪いを取り払うのにも適している。

「ふぅ...」

 風呂上がりの俺にケロナが話しかけてきた。

「和希、ちょっといいか?」

「なんだ? もう寝る時間だぞ?」

「いいからちょっとだけ」

 そう言いながら俺の手を引っ張って外に出るケロナ。

 外に出ると大聖堂にあるベンチに座って夜風に当たる。

「夜風が気持ち良いよな、たまにはこうして夜に出歩くのも悪くないだろ?」

「まあ...な」

 最近俺はしょっちゅう夜に出歩いているがな。

 その事をはぐらかしながらケロナと会話して行く。

「ところで...さ」

 急に彼女の声のトーンが暗くなる。

「和希...、あんたの体どれだけの呪いを貯めているの? 理由は知らないけどまたあの杖を使ったでしょ?」

 その言葉を聞いた後に彼女は俺が最近毎日深夜に出歩いている事について問い詰めてきた。

「...ケロナには敵わないな」

 俺は皆が塔でクラスアップしている間に教皇と信徒達に襲われたことを伝える。

「...そんな事が!」

「おっと、優樹達には言わないでくれよ。俺はもう人殺しなんだからな」

「和希...」

 俺の名前を呟いた彼女は俺の体に何かを塗りつけた。

「なんだ?」

「良いから、じっとしてて」

 そう言いながら小瓶の中にある粉を俺に塗してくる。

「...全部使っても完全には呪いが取れないか。和希、その力が必要な場面もこれから出てくると思う、けどできればその力は出来るだけ使わないように心がけて欲しい。その力は私たち魔族寄りの力で、その中でも一際悪意のある力だから...」

 彼女の瞳を見た俺はこう呟いた。

「分かってる。けど生き残るためには必要な力だ。これからも生き延びる為に必要だと判断したら躊躇なく使うからな」

「それで良い、だけどこれだけはさせて」

 そう言いながら彼女は俺の心臓部分に手を当てる。

「【蛙人の加護】」

(...? ほんのちょっとだけど体の気怠さが消えた?)

「今のはあなたの体に私の魔法を付与したの。呪いの侵食を抑えるように配合した魔法だけどそこまで強力じゃないから過度の期待はしないでね」

『EXスキル【蛙人の加護】を取得しました』

「じゃっ! それだけ! 湿っぽい話は無しにしよう!」

 彼女はそう呟くと自分の部屋に向かって行った。

「ケロナ...ありがとうな」

 もう聞こえないであろう距離に到達した時になってようやく俺はそう呟くのでした。
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