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大王イカの刺身

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 ケロナはイカの切り身を俺の皿に盛り付けてくる。

「おいっ、調理しないのか?」

 俺の言葉に彼女ははあっとため息を吐く。

「和希、ここまでしてまだ分からないか? これは刺身だよ」

「刺身!?」

 その言葉に日本人としての血が騒ぐ!

 刺身とはただただ生の魚を醤油に漬けて食べるというシンプルな料理だ。

 故に料理というよりも魚を捌く技術さえあればどうにでもなる料理(?)でもある。

 まあ、正直にいうと刺身を料理と言って良いのか怪しいが、一応料理だろう。

 綺麗に皿に盛られたイカの隊列は透明感が凄く、とても美味しそうに見えた。

「はいっ! 醤油に似た風味の調味料があったからこれを使って!」

「ああ、悪いな」

 醤油っぽい物を小皿に浸してから俺に渡してくる。

 こうしてみると完全にイカの刺身だが、味の方は果たして...。

 パクッモムモム...。

 しばらく口の中で噛んでいるとイカ特有の程よい甘みが口の中に広がる。

「うん! これは美味い!」

「うん! イケるね! これでお米とワサビがあると最高なんだけどな~!」

「ケロナ、お前本当に日本人みたいだな」

「日本人?」

「ああ、俺たちが召喚される前にいた世界の国だ。その国でも刺身は一般的な料理でワサビとお米を使った寿司という食べ物もあった」

「寿司! 私も好きだよ!」

「じゃあ回転寿司は知ってるか?」

「いや、知らないな」

「そうか...、回転寿司っていうのは...」

 俺はケロナと寿司や刺身についての話で盛り上がっていた。

 その話を聞きつけた者たちが徐々に集まって酒盛りを始めたのは言うまでもないが、こんなところで油売ってないでさっさと航海を進めろと言いたくなるのでした。
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