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ブラッドワイバーン③

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 今回はアルシェと言う防御役がいないのでできるだけ被弾を抑えたい。

 なので俺が重点的に行うのは素早さダウンと拘束系の付与魔法だ。

「デバフ!」

【束縛】の魔法が奴に向かって飛び上がり、【幻影剣】も奴に向かって飛んでいく!

「ギャオ!?」

 驚く奴は空中で旋回しそれを躱すが、一応速度が遅くなっているのを確認した俺は次に防御力ダウンをかける。

「今だ! ラカラ!」

「分かった! 【分身】からの...【8ブーメラン】!!」

 ラカラが激しく震えたかと思うと3人に分身し、それぞれが一斉にブーメランを投げた!!

 しかも【8ブーメラン】なので合計24本のブーメランがレッドワイバーンに襲い掛かる!

 いきなり大量のブーメランが出現した事により躱すのが遅れた奴はいくつか被弾した。

「グルッ!?」

 苦し紛れにブレスを吐いてきたが、痛みに耐えながらのブレスなど簡単に躱せる。

「未だ! シュナ!」

 俺の言葉と共に上に飛びワイバーンの頭に力一杯【キャットクロー】を入れた!

「ギャオオオオオ!!!!!!」

 ワイバーンの絶叫が聞こえると、その場に倒れ込んだ。

「よしっ、一丁上がり!」

 再び美味しい経験値が入りレベルが上がる。

「こりゃうまいな。ここらへんのモンスターは経験値が美味そうだ」

 俺がそう呟くと「お疲れさん」と解体を終えたケロナが声をかけてきた。

「時間がかかったがお前抜きでも俺たちはレッドワイバーンに勝てたな」

「そう? 正直そんなにかかってないと思うよ?」

「お前は魔法を1発放っただけで奴を倒しただろうが。俺たちもそのくらい強くならないといけないんだよ」

「向上心があるのは良い事だけど、私と同じくらい強くなりたいんなら並大抵の努力じゃできなよ? それこそ人間の体で追いつこうとするならね」

 彼女の言いたいことは分かるが、それでも俺たちは強くならないといけない。

「ああ、それは分かってるつもりだ。人間と魔物じゃ元々の身体能力に差がある事くらいな」

 しかし、そんな事くらいで諦める訳にはいかない。

 腐っても俺は一応勇者って奴だからな。

「ふ~ん...、何か訳ありみたいだね。もしかしてこの前戦ってたフワンって奴に勝ちたいの?」

「...極論を言えばそうだな。お前抜きでフワンに勝てるくらいにならないと話にならないと思う」

 それを聞いた彼女はこう呟いた。

「だったらさ1回だけで良いからパワーレベリングを行っておこうよ。私だっていつまでもこっちの世界にいる訳じゃないしさ。」

「パワーレベリングか...」

 ネトゲで良くある自分より遥かに強い存在がパーティにいる場合にできる一気にレベルを上げる行為だな。

 これがもたらすメリットとデメリットを見てみた時にメリットの方が圧倒的に多いのだが、デメリットの方も気になってしまう。

 メリットはレベルが上がるのでこの後の戦闘が比較的に楽になると言う事だ。

 デメリットは本来ならばそのレベルで戦うべき相手と戦った時に覚えるであろう戦い方を覚えずに成長してしまう事だろう。

 佐藤や石川の力押しな戦い方を見ていればそれは分かってしまう。

 恐らく奴らも【勇者】や【賢者】の強力なスキルをぶっ放すだけで敵を倒してきたから戦争の時の絡め手を考えられないのだろう。

 つまりパワーレベリングの障害とは自分で考える力と経験を奪ってしまう事にある。

 俺はメリットとデメリットを天秤にかけてから返答を行うのでした。
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