上 下
204 / 574

王の選択

しおりを挟む
「ぐぬぬ...!!!」

「どうしましたか? クリスティアーノ王。早くお返事を返してくれませんか?」

 アルシェの言葉責めにクリスティアーノ王は苦悶の表情を浮かべる。

「どうした? 早く答えろよ!」

 俺の催促にさらに怒りの歯軋りまでしている奴の苦しんでいる顔が最高に見ていて楽しい。

(国か? プライドか? さあ好きな方を選べ)

 俺がニヤニヤしているとついに王は言葉を発した。

「...そこのアルシェ殿が本物である確証はどこにある?」

 そうきたので彼女は剣を掲げる。

「これを見てください! これこそ当家に伝わり王家の剣です! エトランゼ王国の刻印が刻まれた剣はこの一振りしかありません!」

 そう良いながら自身の剣を翳す彼女の姿に流石のクリスティアーノ王も舌を巻いていた。

「さあ、苦し紛れの言い訳タイムは終了だ。俺に頭を下げるか? それともアルシェの王国と敵対関係になるか好きな方を選べ」

 クリスティアーノ王はしばらく黙り込んだまま「...【弱体術師】を侮辱した件については誤ろう」と謝る気のない声質だは一応は謝罪している。

「クリスティアーノ王の非礼を許しましょう」

 取り敢えず謝罪してくれた事によって最悪の展開だけは避けるだけの脳はあるようだ。

 クズだが自分の事だけしか考えない最低の愚王ではないのかもしれない。

 まあ、こんな奴が王をやっている時点で俺からすればこの国自体滅亡したって問題ないどころか最高だがな。

 俺が冷や汗を拭っているクズの顔を見ながら愉悦に浸っていると...。

「だがそちらもこちらを馬鹿だの土下座しろだなどと言い切った事を謝罪してもらおうか!」

 完全に先ほどのテンションでウキウキとしている奴に俺は言ってやる。

「はいはいすんません。偉い王様に生意気な口を聞いてごめんなさ~い!」

 俺は適当に謝っても良いのだ。

 何故なら俺が謝ってもあちらからすれば所詮は犯罪者の謝罪だ。

 どうせ意味のない謝罪として受け取られるに決まっている。

 しかしこちらがクズの謝罪を貰うと言う事はどうだろうか? 王様が一級犯罪者に謝るなんて光景はすごく爽快な気分になるだろう?

 犯罪者の謝罪と一国の王様の謝罪。

 どちらの方が価値があるかなんて明白だろう。

 俺はしてやったりと笑顔になる。

(ザマアミロ! このクズ王が!!!)

 心の中で何度も罵倒を繰り返した上で俺はクズに何の情報も与える事なく城から出ようとすると...。

「2度とわしの前にその醜悪な面を見せるな!!! 【弱体術師】!!」

 などと言ってきたので清々した。

「こっちだってお前の顔なんざ見たくねーよ!」

 俺は捨て台詞を吐いてクリスティアーノ城を後にするのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】邪神が転生 ! 潮来 由利凛と愉快な仲間たち

るしあん@猫部
ファンタジー
妾は、邪神 ユリリン 修行の為に記憶を消して地上に転生したのじゃが………普通に記憶が残っているのじゃ ! ラッキー ! 天界は退屈だったから地上で人間として、名一杯 楽しむのじゃ ! るしあん 八作目の物語です。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが

Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした─── 伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。 しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、 さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。 どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。 そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、 シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。 身勝手に消えた姉の代わりとして、 セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。 そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。 二人の思惑は───……

神々と精霊達に愛された子

彩夏
ファンタジー
善行を重ね続けた老人は、遥か遠い異世界の、とある国へと転生した。 そのグレイリーフル大帝国皇帝の息子『レイス』として転生したは良いものの、 《神の特徴》と言われている白い髪とオッドアイの目を併せ持ち、 《神々と精霊達に愛された子》という謎の称号が付与されていて____。 執筆開始2020.⒋27~ 5月13日〜 少しの間スランプ期に入ってしまった為更新が遅くなります。 描きやすい内容になってきたら、どんどんあげるので宜しくお願い致します!

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

処理中です...