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勇者の問題点

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 ~エトランゼギルド~ 

 しばらくはアルシェのレベル上げの為に俺達が早速この町で依頼を受けようとしていると...。

「見つけたぞ! 和希!!」

 聞き覚えのある声がギルド内に鳴り響いた。

「なんだよ佐藤」

 俺は佐藤を睨みつけながら言葉を交える。

「聞いたぞ! 今回の手柄を独り占めしやがって! 俺だって活躍しただろうが!」

「...ぷっ」

 俺は迫真の声を上げる奴の顔を見て笑ってしまった。

「何がおかしい!!」

「いやさ、お前自分の立場考えてから物を言えよ」

「はぁ!?」

 頭が悪いのか佐藤は吠えるだけだったので俺は思わず舌打ちをして奴に小さい声で話すように伝える。

「まずは落ち着いて話を聞け、今回の事件は元はと言えばお前を騎士団長が唆して外の旅に憧れの強い姫さんを連れ出そうとしたのが発端だ」

「ああ、それがどうした? 結果だけを見れば俺とお前が騎士団長を倒したから手柄は半分ずつだろうが!」

「ここまで言ってもまだ分からないか? 本当におめでたいやつだなお前は」

「なにっ!?」

 声を荒げるアホ【勇者】に言ってやる。

「お前はな騎士団長の陰謀を暴いた点は評価に値するがそれはあくまでも結果論だ。途中経過を見ればお前も姫さんを拉致監禁したという国家反逆罪で罪に問われてもおかしくはないんだぞ?」

「そ...それはだな! アルシェちゃんに外の世界を見せてやりたくてだな!」

「上手いこと言ってもこいつを連れ出した時点でお前はもう犯罪者だったんだよ。良い加減理解しろよ? お前が今外にいられるのはこの姫さんの口添えがあったお陰なんだからな」

 俺が指差す方向にいた人物を見て驚く佐藤。

「アルシェちゃん!? なんでこんな所に!?」

「佐藤様、本日を持ちまして私は【弱体術師】様のお供をさせていただく事になりました」

「なんで突然そんな奴に? 分かった! 和希! アルシェちゃんに【魅了】の魔法でもかけたんだろう! 【弱体術師】だしな! 汚いやつめ!」

 話を捻じ曲げてくる奴を見て大きくため息を吐く俺。

「悪いが俺は【魅了】の魔法は持っていない。そんなに気になるんなら俺のステータスにある魔法欄を見せてやるよ」

「【魅了付与】を見つけたら言い逃れはさせないからな!」

 そう良いながら俺の魔法欄を見た奴は唖然とした。

「【攻撃弱体化・小】【攻撃弱体化・中】【攻撃弱体化・大】【攻撃弱体化・特大】【防御弱体化・小】【防御弱体化・中】【防御弱体化・大】【防御力弱体化・特大】【速度弱体化・小】【速度弱体化・中】【速度弱体化・大】【速度弱体化・特大】【知力弱体化・小】【知力弱体化・中】【知力弱体化・大】【知力弱体化・特大】【幻影剣】→【幻影乱舞】【幻影盾】【幻影翼】→【擬似幻影龍】【ナーフスペル】【毒付与】【猛毒付与】【堕落付与】【鈍化付与】【感電付与】【魔封じ付与】【幻惑付与】【束縛付与】【麻痺付与】【腐敗付与】【狂化付与】...。【魅了付与】はないな...」

「だから言っただろう。俺は【魅了付与】なんて取得していない。これが答えだ」

「ぐぬぬ...」

 悔しそうに地団駄を踏んだ奴はすぐさま逃げる様に背を向けた。

「くそっ! 覚えていろよ和希! 今回の手柄は譲ってやるがアルシェちゃんは諦めないからな!」

 そう良いな我愛羅ダッシュで逃げる奴の情けない事この上ない。

「【勇者】様は何の用があって私達に会いにきたのでしょうか? ギルドで仕事も受けずに」

「さあな、とにかくお前のレベル上げに向かうから準備しろ」

「はいっ!」

 俺は佐藤の情けない姿を思い出しながら、彼女に適した比較的簡単な魔物退治の依頼を選ぶのでした。
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