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暗闇

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「んっ...?」

 目責めた私の前に広がっていたのは暗闇だった。

「んっ!? んんん~!?」

 両手を後ろ手に縛られており、足も紐の様な物で拘束されているようだ。

 おまけに口には猿轡を咥えさせられているのか声が出ない。

 それでも殺されてはいない事に一安心していると...。

「起きたな和希の奴隷が」

「ああ、勇者のくせにこんなガキに追跡されてんじゃねぇよ」

 恐らくローブの男の声と佐藤の声が聞こえて来る。

「意外とこのガキはやり手だぜ。足は速いし破壊力もそこそこある。まあふん縛ってしまえばただの可愛い小娘だがな!」

「むぐっ!?」

 思いっきり佐藤のやつに腹を蹴られた! くっそ痛い!

「ははは!! いい様だな! もう1発蹴っておいてやろうか!?」

「やめておけ【勇者】佐藤。我々の計画を台無しにする気なのか? アルシュ様のことを考えろ」

(アルシュ様!?)

 そう、今回誘拐された姫様の名前はアルシュ= エトランゼ。

 やはり今回の誘拐事件には【勇者】佐藤が関わっている様だった。

「そうだったな! アルシュをこの汚れ切った王政から逃れさせるのがお前の計画だったよな!」

「ああ、【勇者】佐藤。その為の計画はエトランゼ騎士団長たる私が仕切っているのだぞ? その辺を考えて行動しろといつも言っているだろう?」

(...なっ!?)

 まさか【勇者】とエトランゼ王国の騎士団長が組んで姫様をこの国から脱出させようとしている?

「だがなんで和希が来るまで待っていたんだっけ?」

「...前にも説明しただろう? 【弱体術師】が本当にアルシュ様を拐った様に見せないといけないんだよ、その為の生贄だよ目の前の少女はね」

 そう言った騎士団長は私の頭に手を置いた。

(何をする気だ!?)

「【フェイク・アルシュ】!」

 何か魔法を唱えた様だが、私には何が起きたのか分からない。

「おぉ...、こりゃすげぇな」

「ククッ、これを【弱体術師】に送りつけてやるんだ。そうすれば我らは無罪放免。奴らは犯罪者だ」

「そうだな...」

 2人の笑い声が聞こえる。

 そのまま何か袋の様な物に詰められた時だった!

『補助スキル【ロックオン】を取得しました』

(こんな時に使えるスキルが手に入るなんて!)

 私は思いっきり佐藤の体に体を当てて【ロックオン】のタグを佐藤に付ける。

「いてて! 暴れるな!」

「むぐぐ~!!!」

 なんとか佐藤をロックオンできた私は袋の中に入れられてしまったのでした。
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