幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

【勇者】VS【弱体術師】⑤

「【勇者】様！　その剣を手に取ってください！」

「これか？」

　そう言いながら手を伸ばして剣を手にしようとする奴の邪魔をしようと杖を振るった時だった。

「ぐっ！？」

　いきなり俺の体が吹き飛んでしまい奴に剣を触れる時間を稼がれてしまう。

【聖銀の剣】を装備した佐藤はスッと何事もなかったかのように立ち上がる。

「おっ！？　急に体が軽くなったぞ！？」

「それこそが貴方様の為に作らせておいた【聖銀の剣】！　【弱体化邪悪】を取り払い跳ね除ける【勇者】専用の剣です！」

　そんな対【弱体術師】用の武器まであるのか！？

　恐らく佐藤の防具も奴が知らないだけで相当な【弱体化】耐性を持っていると思われるのに、武器まで耐性を持たれてしまったら...！

　そう思っていると佐藤が復帰して俺に切り掛かってきた。

「はっはっ！　これでもう【弱体化】なんて怖くないぞ！」

　そう言いながら突っ走ってくる奴の動きは本物だ！

「ぐっ！？」

　MPを失った俺はサウンドバックと化し一方的に殴られる。

「ガッ！？　ぐっ！！　...」

「おい？　もう終わりか？」

　その場に倒れる俺を見て勝利を収めたと確信する佐藤は高く剣を掲げた。

「この勝負！　【勇者】である俺の勝利だ！！！」

「「「ワァァァァァ！！！！」」」

「「「勇者様ばんざーい！」」」

　その場にいる全員が奴を賞賛し歓声をあげる。

(これだけ人数がいるのに奴の不正に誰もが気がつかないのか！？)

　そう、俺は途中で何者かに吹き飛ばされた。

　いや...、大体の予想はついている。

　俺は石川のいる方を見る。

　奴は薄ら笑いをしながら俺の無様な姿を見て楽しんでいるようだ。

(これだけの人数の視線を欺ける魔法を放てるのは【賢者】である奴しかいない！)

　その事実に気がついた俺は、倒れたままこの悔しさと憎しみに更なる感情の炎を燃やすしかないのでした。