上 下
121 / 361

白装束

しおりを挟む
「あんた誰?」

「名乗って私に徳があるとは思えませんね」

 白装束を着こなした彼女は、瀕死となっているムカデの前に立ち塞がり私を制止している。

「あっそう、なら死ぬしかないよね!」

 今度は生身の人間だろうが関係ない、仕事の邪魔をする奴は全て敵だ。
 さっきの一撃を止められたのはきっと私が疲れから威力を弱めたのが原因だと考えられる。
 そう考えると合点が行くので私は邪魔者を排除する動きを考え行動に移す。
 どこまでも冒険者のプロである自覚は大事にする。
 そうまでしないとこの職で食って行く事は難しいのだから...。
 今更生身の人間一人殺すことになんの躊躇いもない...と言えば嘘にはなるが、先ほどの言葉を聞く限りこいつはヤベー奴という認識が出来ていた。
 あのムカデを尖兵をとして扱うだと聞こえたので、あいつはこの国の転覆を狙う何者かという考えが頭の中にある。
 今の私はクティル王国のギルドメンバーの一員な事もあり見逃す訳には行かないのだが...。

「おや?足がふらついているように見えますね?」

「冗談を...、いつ私の足がふらついたって?」

 カラ元気を相手に見せて悟らせないようにしてはいるが、ムカデとの戦いにより蓄積された疲労は徐々に現れてきた。
 息が荒れ調子が狂う中、どうにかしてこいつを倒さなくてはならない。
 さっさと終わらせてこいつから情報を吐かせる事が出来れば、たんまりと礼金をもらえるかもしれないからである。
 そう思うと嫌でも顔がニヤけてしまう。
 結局の所、冒険者なんて一獲千金を狙った奴らの集団であり、その中の一人に私がいるのだ。

「なんでニヤケテるのか知りませんが、これで終わりにさせて頂きます」

 そう言った彼女から異様な雰囲気を感じとった私は一目散に逃げ出した。

(いや~、こりゃ無理だ...、魔力が足りないから逃げる!、命あっての職業だしね!)

 残った魔力は足に全て託す。
 絶対に逃げ切るという強い意志があればきっと逃れる術はある。

「無駄だというのに貴方は抗うのね...、あの人の祝福を受けた我らから逃れる術などないというのに...」

 何やらブツブツと詠唱を始める彼女を見て逃げ切れる確率が上がった事を確認する。
 今から追いかけてきたとしても私には絶対に追いつけない。
 これならば余裕だと思った時、何か見えない壁にぶつかった様な気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

処理中です...