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血筋

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「珍しいわね、姉さんから私に話なんて...」

 私が異空間に足を踏み入れて見ると、いつもとは明らかに様子の違う彼女の姿がありました。

「いいから聞いてエルカ...、今日輪廻教に襲われた」

「!?」

 私は驚きのあまり口の前に手を置きました。

「輪廻教が!?...、嘘でしょ姉さん!、冗談もほどほどにして!」

 私は必死に抗議しましたが、姉さんの表情から読み取れるのは、襲われたと言う事実のみでした。

「そう...本当なのね...、なぜ今更輪廻教徒が...」

「私も困惑してる...、一度壊滅したあの子達がなぜ再び現れたのか...、それに魔女もいないのに復活する意味がわからないのよ...」

「...、姉さん、これは何かありそうね、ローシュとあの人にも伝えておくわ」

「助かるわ...、場合によっては私1人じゃ収集がつかなくなる可能性すら出てきたからね...、あなたが私を呼んだのは正解だったかもしれないわ...」

 輪廻教は確かに私達が再起不能になるほどの打撃を与え、一度は壊滅したのを覚えている。
 そして二度と戻らない様に本拠地と教祖を徹底的に潰しておいたので復活するはずがないのだ。
 まだこちらの話を聞いた親衛隊の連中はまともだったのだが、輪廻教と永遠教は違う。
 この二つの宗派は互いにコンタクトができており、どちらの宗派も悠久の魔女を崇拝していたのだ。
 その為か教祖共々二度と正気に戻ることはなく、最後は私達との最終戦争を行い、私達が勝利を収めたのだ。
 いや、戦争というよりは一方的な虐殺だったのを覚えている。
 主力を以前の戦いで欠いていた教徒勢に勝ち目はなかったのだ。
 なによりも、信仰の元である悠久の魔女がすでに私の手によって封印されていたのが大きかった。
 統率は乱れバラバラになった教徒を皆殺しにしていくその様は、まさしく「虐殺」と言えるだろう。
 余りにも血生臭い出来事だったので、正直思い出したくない。
 私の表情が歪んだのか、姉さんに心配される。

「エルカ...、大丈夫?、顔色が悪いわよ...」

「えっ...、えっと...、最近ちょっと寝不足で...」

 姉さんはスッと私の顔を見て何やら違和感を覚えたのか険しい顔になった。

「いつもの元気がないわね...、本当に大丈夫?」

「ええ...、一日しっかりと眠れば元どおりよ!」

 無理に笑顔を作って姉さんには大丈夫と伝える努力はしますが。
 以前として表情は険しいままです。

「...、エルカ、私は今日教徒の1人と戦ったのだけれど、その時にそいつは「あの人」の血筋と私を見て言ったの...、何か心当たりはないかしら?」

 私はハッとした様に彼女の顔を見ました。
 しかし、本当に何も知らないので答えることができません。

「ごめんなさい姉さん、私には答えれません」

「...、エルカ...何か私に隠してないかしら?」

 その言葉を聞いた私は、なんとなくその場に居づらくなってしまい、逃げるように異空間に飛び込みました。
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