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『マッドマン』③

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 しばらく劣勢の戦いが続くと、彼は不思議そうな表情で私の事を見てきた。

「...どうしてそこまでして戦うんだ? お前がいくら頑張ったところで所詮は女、俺たちにはかなわないぞ?」

「別にあなた達に勝つ必要なんてないのよ。ノエルを助けられればそれでいい」

「なるほどな。だがそれは不可能だ。お前が何をしようとあいつは助けられない」

「それはどうかな? あなた達は知らないでしょう? 私たちの元いた組織を」

「お前達のいた組織だと?」

「えぇ、僕たちはビッグスター社、そこの組織の元最高幹部の一人よ」

「なんだと!? そんなはずはない! そんな奴らがあんな簡単に捕まるわけがない!!」

 動揺する『マッドマン』を見てニヤリと笑う私。

「まぁ、証拠があるわけじゃないんだけどね。ただ、僕はあなた達みたいな『カオスチャイルド』の最高幹部クラスを倒せるくらいには強いのよ?」

「なるほど、つまり貴様は7人存在していた『コア・チルドレン』の1人だと言いたいわけか」

「そういうこと」

「ならば強さを証明してみろ」

『マッドマン』はそう言うと両手を地面につける。

 すると地面から無数の槍が伸びてきて、私の体を貫く!

「きゃあああ」

 私は悲鳴を上げ、その場に倒れる。

「これで分かっただろう? 貴様に勝ち目などないということが」

「まだ...、終わっていない」

 私は立ち上がる。

「ほう、なかなかしぶといじゃないか」

「当然でしょ? 私はノエルを助けるまでは死ねないんだから」

「その執念だけは認めよう。だが、その願いは叶わない」

「それはどうかしら?」

 私が不敵に微笑むと、背後から爆発音が聞こえてくる。

「何事だ!?」

「どうやら、間に合ったみたいね」

「何!?」

 奴が爆発した方を見ると、雑魚どもを殲滅し、ノエルを肩に担ぐレイカの姿があった。

「お待たせ、レイカ」

「遅いよ。待ちくたびれた」

「これでも急いだんだけど」

「でもありがとう。助かったよ」

「どういたしまして」

「ちっ、仲間がいたのか。面倒なことになってきたぜ」

『マッドマン』は私達を警戒したのか距離を取る。

「お前は一体なんなんだ?」

「私はただの喫茶店のマスターだよ。それ以上でも以下でもない」

「ふざけているのか? お前からはただの人間とは思えない力を感じるぞ?」

「そう? 気のせいだと思うけど」

「...そうか、ならもう用はない。貴様らはここで消えろ」

『マッドマン』はそう言って両手を広げる。

 すると私とレイカの周りに黒い壁のようなものが出現する。

「これは...?」

「この空間内でお前たち二人を殺す。そしてその後にゆっくりあのガキも始末すればいい」

「なるほど、そうはさせない」

「どうするつもりだ?」

「こうするのよ!」

 私は水で自分の体を覆い、水圧を上げる。

そしてそのまま『マッドマン』に向かって突っ込むのだった。
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