上 下
560 / 968

女子力⑫

しおりを挟む
 出来立てのオムレツを一口食べてみると...。

「んっ!美味っ!!」

 先程まであった悩みなんて全て吹き飛んでしまいました。

 人は本当に美味しいものを食べると、目先の悩みなんてどうでも良くなってしまう生き物なのです。

 程よいケチャップの酸味に卵の甘みが混ざり合い、絶妙なハーモニーを奏でている...。

 これを自分が作ったのだと思うと無性に嬉しくなってきます。

「凄く美味しいよ!、お姉ちゃん!」

 目を輝かせながら叫ぶ私の姿に、システィは笑っていました。

「なっはっはっ!、そうじゃろそうじゃろ!、わしと一緒に作ったんじゃからな、不味いわけがないわい!」

 妙に自信たっぷりに答えるお姉ちゃんを見ていると、私も自信がついてくるように思えて凄く嬉しい。

「うん!お姉ちゃんに教えてもらったらもっと【女子力】あげられるよね?」

「当然じゃ!、どうせ目指すなら世界1の【女子力】をもつ女子じゃぞ!」

「世界1の【女子力】...!、なんか凄そう!」

 お姉ちゃんの後押しもあり、【女子力】に磨きがかかってくるのを感じます。

 今ならツグミ君に会っても大丈夫だと踏んだ私はお姉ちゃんに耳打ちをするのでした。

 ~後日~

 私はツグミ君をアリカ城にあるバルコニーへと呼び出しました。

「システィから聞いたけど、僕に用があるんだって?」

 彼の声が聞こえた数秒後に私は振り向き、静かにスカートを摘み上にあげ会釈します。

「こんにちわ」

 と女の子らしい声量で上品に答える私を見て、変な顔をするツグミ君は正直面白いけど笑うわけにはいかない。

 プクク...、と笑うのを堪えながらお嬢様ボイスでプレゼントの入った包み紙を渡す。

「これを受け取ってほしいのですが、受け取って貰えますか?」

 ここの演技もバッチリだ。

 ミユキに礼儀について教えて貰った甲斐がある。

「あ...ああ、プレゼントを渡すだけならどこでもいいだろ?、わざわざこんな所に呼び出すなんて何か変だぞお前...」

 疑ぐり深い彼に対し、私は礼儀正しい所作を繰り返す。

 流石の彼も私の【女子力】の上達振りに驚いているようだった。

 まだ3日かそこらしか経っていないと言うのに、私の【女子力】は凄まじいまでの成長を見せていたのでしょう。

 彼は気持ち悪がりながらも、取り敢えずプレゼントを受け取ってくれる。

「開けてもいいか?」

「どうぞ」

 私の完璧な切り返しに、彼は驚いているようでした。

 そのまま包み紙を外し、中身を確認すると、中にはチョコが入っています。

「これは?」

「チョコっていう食べ物です、甘くて美味しい素晴らしい物なんですよ」

 この喋り方...、正直辛い!!。

 練習したとは言え、やっぱりいつもの喋り方の方が100倍くらい喋りやすいと感じる。

 これも【女子力】の為だと割り切り、なんとか耐えていると...。

「美味しいなぁ、これってどこで売ってるんだ?」

 そう聞かれたので。

「私が作ったんですよ、お口に合えば幸いです」

 再び軽く会釈し、優雅な表情を浮かべる私を見て「ええっ!!」とちょいオーバー気味に驚いていた。

「だってこれ、普通に美味しいんだけど...、トラスって料理上手だっけ?」

 私は胸を張り、彼にこう答えます。

「沢山練習いたしましたので...」

 このチョコはちゃんと私がお姉ちゃんと一緒に作った物なので嘘はついていません。

 私の瞳を見て、それが本当なのだと気がついた時、彼は物凄く気持ち悪がっているのでした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...