TS系最弱な美幼女魔王ちゃんとなった俺は、何故か自分が生み出した使い魔達と無敵のダンジョンを作ることになったんだが！！

【迅極】

「【迅極】」

　確かに彼はそう呟いたような気がしました。

　少し遠くボソッとした声でしか話していないので根拠はありませんが、自分の耳の良さは割といい方だと思っているので多分間違いはないと思います。

　ヒュン！っという風を切る音共に彼が姿を消しましたが、私にはなんとなく気配で何処にいるのかがわかりました。

　タイミングよく彼の攻撃を躱すと、彼は姿を現してにやりと笑っていました。

「この攻撃も躱すか...、やるね！」

「ツグミもやるなぁ...、【野生解放ビーストモード】状態の私が一瞬だけとは言え視界から君を外しちゃうなんてね、でももう見慣れたから見逃さない！」

「それは僕のセリフさ、今度はもっと早く動いて君の目を欺いてみせよう！」

　一旦距離をとったかと思っていると、不可避の速攻をかましてくる！。

　何度も全身を削られていく感覚が凄い！。

(軽く皮膚を撫でられてるだけだけど、長いこと攻撃され続けるとまずい...)

　どんなに弱い攻撃だとしても、全ての攻撃を受け続けているとこちらの身がもちません。

　少しずつ彼の攻撃速度に目を慣らし、渾身の一撃を叩き込む事にしました。

　呼吸を整え、繰り出すは必殺の一撃！。

　タンっ...。

(後3歩...)

　彼の足音が鮮明に聞こえる...。

　タンっ...。

(後2歩...)

　拳をしっかりと握り目を瞑る...。

(後一歩！、ここだぁ！！)

　彼の移動に合わせて最強の一撃を入れた！！。

　曰く鬼の力は天翔る生命の頂点種族である龍をも一撃で絶命させ、曰くそれは巨大なる山をも粉砕すると言う...。

　曰くその技は技というには余りにも稚拙なた・だ・の・拳・に・よ・る・殴・り・込・み・だったと言う...。

　その技の名は...。

「【龍殺し！！】」

　獣鬼の力を拳一点に集中させ、思いっきりツグミ君殴りつける！。

　だが、その余りにも大振りな一撃を彼はなんとか躱した。

　いや、躱さずにはいられなかったのだ。

　獣鬼の娘が放った拳の風圧のみで丈夫な訓練場の壁は破壊され、彼女が拳を払った前方10メートル程には深さ3メートル程の穴が開いていた。

　冷や汗を流す彼に私はこう呟く。

「よく躱したね、次は両手で行くよ...」

　両手に鬼の力を合わせた。

　ぼんやりと黒と赤の禍々しい魔力が集まり光始める...。

「【龍殺し・双打】の演舞...、舞って見せよう...！」

　そう私が凄みのある言葉を吐くと、彼はそっと手を上げた。

「何？」

　私はその行動に何の意味があるのか分からずに思わずしかめっ面で見つめていると...。

「まいった、降参だ」

　気の抜けてしまうような答えが返ってきたのでした。